アレルギーの原因となる食物にはさまざまなものがありますが、くるみも原因となることがあります。くるみアレルギーはどんな症状で、どのように予防することができるのか、あるいは、発症してしまったときはどのように対処することができるのかについてご紹介します。
「くるみアレルギー」とは…
近年、くるみやアーモンド、ココナッツなど、ナッツ類を原因とするナッツアレルギーに苦しむ人が増えています。
なかでも、くるみを原因とするアレルギー症状を「くるみアレルギー」と呼びます。重篤化することが多く、注意を必要とするアレルギーになります。
くるみアレルギーとナッツアレルギー
くるみはナッツに分類されますが、「くるみアレルギー」=「ナッツアレルギー」ではありません。ナッツと総称されるものは、さらにいくつかの「科」に分類することができ、科によってはアレルギー症状が出たり出なかったりすることがあるからです。
ですが、人によっては、くるみだけでなく他のナッツすべてに対してもアレルギー反応が出ることがあります。くるみアレルギーや他のナッツアレルギーと診断されると、予防のためにナッツ全体を避ける人も多いですので正確な人数は把握することができませんが、くるみアレルギーを持つ人で他のナッツにもアレルギー反応を示す人は2割以上いるのではと推測されています。
くるみはクルミ科に分類されます。そのため、くるみアレルギーの人は、同じクルミ科であるピーカンナッツを食べてもアレルギー反応が出てしまいます。一方、アーモンドはバラ科に、ヘーゼルナッツはカバノキ科に、カカオはヤオギリ科に、ココナッツはヤシ科に、カシューナッツとピスタチオはウルシ科に属します。科が異なりますので、くるみアレルギーがあるからといって、これらのナッツ類すべてにアレルギー反応が出るというわけではないのです。
くるみアレルギーとピーナッツアレルギー
くるみやカカオ、カシューナッツ等は、科は異なりますがいずれも木の実(ナッツ)に分類できます。ですが、ピーナッツはマメ科ですので、木の実ではなく豆類に分類されます。そのため、くるみやカシューナッツなどの木の実にアレルギーが出る人であっても、ピーナッツにはアレルギー反応が出ないということは少なくありません。
とはいうものの、一部の人は、ナッツアレルギーだけでなくピーナッツアレルギーも持っていることがあります。「異なる種類だから」と安心して食べてしまうのではなく、血液検査などでしっかりと調べてから食べるようにしてくださいね。
くるみアレルギーの原因は?
近年はくるみアレルギーを発症する大人が増えていますが、子どもであっても発症することは珍しくありません。
消化器官の発達と食物アレルギー
一般的な食物アレルギーの場合、子どもは消化器官が未発達であるため、アレルゲンとなるたんぱく質の消化が上手にできず、アレルギー反応を示してしまうと考えられています。とはいえ通常の場合は成長するにしたがって消化器官も発達していきますので、多くのアレルギー症状は自然と改善されていくのです。
例えば、食物アレルギーのある人は、乳児全体においては5~10%もいると言われています。ですが、幼児になるとおおよそ5%に低下し、学童期になるとさらに低下して1.5~3%となっていきます。このことからも、消化器官の発達と食物アレルギー発症率が反比例の関係にあることが分かるでしょう。
消化器官の発達とあまり相関が見られないナッツアレルギー
しかし、くるみアレルギーを含むナッツアレルギーは、成人してもその症状が改善されにくいアレルギーです。これは、くるみなどのナッツによって引き起こされるアレルギーは、消化できないために引き起こされるのではなく、アレルギー源となる物質そのものに誘発性があるからではと考えられます。
同様に、カニやエビなどの甲殻類アレルギーやソバアレルギー、魚類アレルギー、果物によるアレルギーも、成長と共に症状が改善されにくいアレルギーです。これらのアレルギーは子どものときには見られなくても、大人になって突然発症することもありますので、注意が必要です。
くるみアレルギーの症状
くるみアレルギーを発症する人は、少量摂取した場合でも重篤な症状が現れることがあります。
運動によってアレルギー症状が誘発されることもある
食物アレルギーの症状には、食べたり飲んだりすると症状がすぐにあらわれる「即時型アレルギー反応」のタイプと、摂取した後に運動することがきっかけで症状が誘発される「食物依存性運動誘発アレルギー反応」のタイプとがあります。
くるみアレルギーは、どちらのタイプもみられるアレルギーです。一般的には、食物依存性運動誘発アレルギー反応のタイプの人は即時型アレルギー反応タイプの人よりも、アナフィラキシーショックを起こすなどの重篤化することがありますので注意が必要です。また、食物依存性運動誘発アレルギー反応は、子どものときに見られることが少なく、青年期になってから発症することが多いといわれています。
くるみアレルギーの主な症状
くるみアレルギーの主な症状は以下のようになります。
- 口腔アレルギー症候群
くるみを食して触れた口内や唇、のどに腫れやかゆみの症状があらわれます。 - 皮膚の乾燥やかゆみ
- 発疹
- 蕁麻疹
かゆみが伴うことが多く、1~2mm程度の円形に盛り上がります。皮膚の真皮細胞が炎症を起こすことで症状があらわれます。 - 腹痛や下痢
体内に侵入した異物を排出しようとして腹痛や下痢を引き起こします。 - 吐き気や嘔吐
下痢などと同様に、体内に侵入した異物を排出しようとして発症します。 - 喘鳴
特徴のある呼吸音になります。ゼイゼイ、ヒューヒューという呼吸音とともに息苦しくなります。 - アナフィラキシー反応
アナフィラキシーショックといわれる症状で、蕁麻疹やかゆみなどの皮膚の症状だけでなく、血圧の低下や喘息、息切れ、呼吸困難などの症状がみられます。アレルゲンであるくるみを摂取してから15分以内に起こり、重篤となることが多くなります。命にかかわることもあるので、症状が出たときは、救急車を呼ぶなど早急に医師の診断を受けるようにしてください。
くるみアレルギーの検査方法
くるみアレルギーがあるかどうかは、食物アレルギーの場合と同様に、食物負荷試験や血液検査、皮膚テストなどを用いて検査します。ただし、アレルギー検査によってアナフィラキシーショックが引き起こされてしまうこともありますので、医師の観察のもと、慎重に実施する必要があります。
くるみアレルギーとわかったら…
食物アレルギーとわかったら、その該当食物を食べたり飲んだりしないように、注意することが大切です。くるみアレルギーも同様で、くるみを口にしないようにしなければなりません。
くるみはさまざまな食品の中に加工されて入っていることがあります。調味料やお菓子などに含まれていることを知らずに口にしないようにしたいものです。そのためには、加工品の原材料をよく確認するようにしてください。
くるみはクッキーやケーキなどに含まれていることが多く、ほかにも、胡麻ドレッシングや胡麻だれなどに含まれていることが多いようです。意外な加工品にも含まれていることがあるので、原材料を細かくチェックしてください。
くるみアレルギーの子どもがくるみを摂取しないように、保護者の方は注意が必要です。注意をしていてもアレルギー症状が出てしまった場合は、重篤な症状にならないよう早急に医師の診断を受けましょう。もしも、アナフィラキシー反応が出るような場合は、至急救急車を呼ぶ必要があります。加工品を摂取するときは、原材料だけでなく、同じ工場でくるみ等を用いていないかも確認するようにしてくださいね。