かゆみや湿疹といったアレルギー症状が重症化すると、呼吸困難や意識の低下などの全身症状が出ることがあります。このような重篤なアレルギー反応のことを「アナフィラキシーショック」と呼びます。
アナフィラキシーショックは、生命が脅かされる可能性もある症状です。アナフィラキシーショックとは何か、どのように対処することができるか、また、アナフィラキシーショック状態にならないために普段からどのようなことに気をつけることができるのかについて説明してまいります。
アナフィラキシーショックとは
アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応の1つです。通常のアレルギー反応は、赤みやかゆみといった皮膚症状や腹痛や下痢といった消化器症状などのいずれかが見られますが、アナフィラキシーになると複数の臓器や器官で症状が見られるようになります。
当然ですが、複数の臓器や器官で症状が見られるようになると、人体にも大きな影響(ショック)を与えます。立っていることも困難になったり、意識を失ったりすることもあるのです。
発症してから重篤な状態になるまでの時間が短い
また、アナフィラキシーショックを起こすと、すぐに重篤な状態になってしまいます。喘息症状が出ていると思ったら、数分後には気道が腫れて呼吸ができなくなっているということもあります。一度アナフィラキシーショック状態に陥ると、あっという間に命に関わる深刻な状況になってしまいますので、アナフィラキシーショックにならないように予防することが大切なのです。
食べ物以外が原因となると、さらに時間が短くなる
食べ物によってアレルギーの原因となる物質が身体に入りこむ場合、食道を通って胃で柔らかくしてから腸で吸収するという過程を経ますので、アナフィラキシーショック状態が表れてから生命の危機状態になるまでの時間は比較的長くなります。
一方、薬物としてアレルギーの原因となる物質が体内に入り込む場合はどうでしょうか。胃や腸で消化する必要がなく、体内で溶けてそのまま成分が拡散されますので、アナフィラキシーショック状態から生命が脅かされるまでの時間はごく短時間になってしまいます。
アナフィラキシーショックから心肺停止に至った例を見てみると、薬物の場合は食物の場合と比べるとわずか数分の1の短時間となっています。このことからも、薬物を摂取するときは慎重に慎重を重ねる必要があるということが言えるでしょう。
アナフィラキシーショックを誘発するもの
アナフィラキシーショックは、アレルギー症状の1つです。アレルゲンとなるものを吸い込んだり食べたりしたとき、アレルゲンとなるものに触れたとき、また、蜂やクラゲに刺されたりしたとき、薬物を注射あるいは服用したときに起こることがあります。
アナフィラキシーショック症状とは
アナフィラキシーショックでは、アレルギーによる反応が複数同時に見られることが多いです。次のアレルギー症状のうち2つ以上が同時に見られるとき、もしくは「その他の症状」が1つでも見られるときは、アナフィラキシーショックを疑い、すぐに救急車を呼びましょう。
皮膚に見られるアレルギー症状
- 全身の皮膚に赤みが見られる。
- 全身もしくは広範囲にじんましんが見られる。
- 全身もしくは広範囲の皮膚に腫れやむくみが見ら荒れる。
粘膜に見られるアレルギー症状
- 目の周りが腫れている。
- 口内にぶつぶつとした発疹ができている。
- 目の周りや口内に強いかゆみが出ている。
消化器に見られるアレルギー症状
- 腹痛や吐き気を訴えている。
- 嘔吐や下痢が見られる。また、嘔吐や下痢の症状が続いている。
呼吸器に見られるアレルギー症状
- くしゃみやせきが連続して出ている。
- 呼吸する度にゼイゼイという喘息のような音が聞こえる。
- 息切れしている。
- 呼吸がスムーズにできていない。
- 気道が腫れて、呼吸ができない。
その他の症状
- 立ったり座ったりすることが難しく、倒れ込んでいる。
- 意識が薄れている。
- 急激に血圧が低下している。
- 顔色が蒼白になってきている。
- 冷や汗が出ている。
- 高熱を出している。
- 心臓が止まっている。
- 痙攣している。
アナフィラキシーショック状態になったら
アナフィラキシーショック状態になると、症状がすぐに悪化してしまいますので、なるべく早く処置を行う必要があります。目の前の人がアナフィラキシーショック状態になったとき、もしくはあなたが今アナフィラキシーショック状態のときは、速やかに番号順に対応して下さい。
1.救急車を呼ぶ
早ければ早いほど生命の危機を脱出できる可能性が高まります。すぐに救急車を呼びましょう。
2.アレルギーの原因となるものを取り除く
食品アレルギーの場合は、口内に残っているものを出し、すでに飲み込んでしまったものも吐ける場合は吐き出します。また、手に触れることでアレルギー症状が出ている場合は、清潔な流水で手を洗い、原因となる成分を身体から落とします。
蜂などに刺されたときは自分で処置をしない
ただし、蜂などに刺されたことが原因でアナフィラキシーショック状態になっている場合は、慎重に対処する必要があります。針に触れることで症状が悪化することや、引っ張り出そうと焦るあまり、反対に針を押しこんでしまうこともあるからです。
針が充分に体外に出ている場合はティッシュやゴム手袋などで直接針に触れないように引っ張り、引き抜けるかどうか分からない場合は専門家が取ってくれるまで触れない方が良いでしょう。
3.医薬品の処方を受けている場合は服用する
今までにアナフィラキシーショックを引き起こしたことがある人は、もしもの場合に備えて内服薬や自己注射薬を処方されていることもあるでしょう。異常が見られたら、処方された内服薬を迅速に服用するようにしてください。
意識が低迷してきたり声や息が出なかったりするときは、アナフィラキシーの補助治療薬であるアドレナリン自己注射を実施します。一般的には太ももの外側の筋肉に打ちますが、ショック状態で本人が打てないときは、救急隊員や周囲の人が注射を実施します。
医薬品は一時的な症状緩和が目的
この際に服用する内服薬や注射薬は、いずれも症状が重篤になるのを一時的に抑えるためのものです。注射をしたから病院に行かなくても良いということではありませんので、なるべく早く診察を受けるようにしてください。
4.安静な体位を維持する
救急車が到着するまで、できるだけ安静な体位で待つようにします。一時的に症状が良くなったように思えることもあるかもしれませんが、いつ、急激に悪化するか分からないのがアナフィラキシーショックです。
呼吸が苦しいときは上体を少し高くする
呼吸が苦しいときは、気道を確保するためにも状態を少し高くしてください。頭部だけを高くすると、気道が圧迫されますので、かならず上体全体を高くするようにしてください。
吐き気があるときや嘔吐が見られたときは横向きに
吐き気があるときや嘔吐をしているときは、吐しゃ物で喉を詰まらせないためにも、身体を横向きにして寝かせます。
それ以外の場合は足を30センチほど高くする
呼吸に問題がなく、吐き気や嘔吐が見られないときは、仰向けに寝かせ、足の下にタオルなどを指し込み30センチほど高くするようにしてください。
アナフィラキシーショックを引き起こさないために
蜂やくらげに刺されることを、前もって予防することは難しいかもしれません。ですが、食品アレルギーの場合は、ある程度予防することができます。アレルギー反応を起こしたことがある食品は極力避けるようにし、加工食品等を購入するときは成分表示をしっかりとチェックするようにしましょう。
また、食品アレルギーも薬品アレルギーも、いずれもアナフィラキシーショックを起こす人は繰り返して起こす可能性があります。一度でもアナフィラキシーショックを起こしたことがある人は、病院でショック状態のときのための医薬品を処方してもらい、常に携帯するようにしてください。