ママモル

子供の健康を守る米国のサイト『Safbaby』が運営するウェブマガジン

アレルギーって昔はなかった?増加している原因とは。

 厚生労働省が実施した保健福祉動向調査によりますと、国民の3人に1人は皮膚や呼吸器、目鼻のいずれかにアレルギー症状を経験しています。また、実際にアレルギー症状のために通院もしくは入院している人は5人に1人を超えています。近年、アレルギー症状に悩まされている人が多いのはなぜなのか探っていきましょう。

原因1:アレルギー反応を示す人の増加

 「アレルギー症状を起こす人が増えている」ことは、かならずしもアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が増えているということを意味しません。例えば、スギ花粉やブタクサ花粉などによって鼻水や咳、涙などのアレルギー症状が出る人は多いですが、スギ花粉やブタクサ花粉が急に増えているわけではありません。昔はスギ花粉やブタクサ花粉にアレルギー反応を示す人が少なかっただけで、最近になってアレルギー反応を示す人が増えてきただけなのです。

アレルギーがあることとアレルギー症状が出ることは別物

 また、血液検査をして「特定の物質に対してアレルギーがある」ということが分かったとしても、それは「その特定の物質に対してアレルギー反応を示す」ということを意味しているわけではありません。ただ「血液上は特定の物質に対してアレルギー反応を示す可能性がある」というだけで、実際にはその特定の物質を触れたり食べたりしても、湿疹やくしゃみなどのアレルギー反応が出ないこともあるのです。

 つまり、アレルギー症状を起こす人が増えているのは、アレルゲンとなる物質が増えているわけでもアレルギーを起こす可能性がある人が増えているわけでもありません。ただ単に「アレルギーを持っている人がアレルギー反応を示す確率が増えた」だけだと言えるでしょう。

原因2:大気汚染による環境の変化

 花粉やダニなどのアレルギーを引き起こす原因物質は昔からありましたが、近年、大気汚染などによってアレルギーを引き起こす可能性がある物質も増えてきています。今までほとんどの物質に対してアレルギー症状を発症して来なかった人も、pm2.5などの微小物質が体内に入り込み、呼吸困難や喘息症状などのアレルギー症状が出てしまうことがあるのです。

原因3:衛生状態が良すぎること

 先進国ではアレルギーによる患者が増えているにも関わらず、発展途上国ではアレルギー性の疾患を持つ患者がそれほど増えていないことから、衛生状態が良すぎることがアレルギー症状を引き起こしているのではとも考えられています。このように衛生状態とアレルギー性疾患の関係が反比例していると考えることを「衛生仮説」と呼ぶこともあります。

 衛生状態が良い環境で生活していると、かつては日常生活で触れる機会がたくさんあった虫や細菌と一度も接触しないまま成長してしまいます。そのため、アレルギーを引き起こす可能性がある虫や細菌に対する免疫が体内に作られず、少しの接触で過敏な反応(アレルギー症状)が出てしまうことがあるのです。

抗生物質の使用機会の増加と衛生仮説

 また、抗生物質の使用機会が増えたことも、衛生仮説の根拠として指摘されることがあります。抗生物質は熱などの症状を抑えるために投与される医薬品ですが、不快症状の元となる細菌を殺すだけでなく身体にとって必要な細菌も殺す可能性があり、不快症状は緩和されるものの他の疾病に対する抵抗力を弱らせる可能性があるからです。そのため、少しの風邪や発熱などの症状に抗生物質を使用することは、身体の自然治癒力を弱めてしまう恐れがあるので避けるべきだと考える医師も少なくありません。

ただし、衛生状態の改善で防げる病気も多い

 衛生仮説では、ある程度は菌や寄生虫などに触れる方がアレルギー症状の発症を防げるということになりますが、一概に「衛生状態が良すぎることは悪」とも言えません。なぜなら、衛生状態が向上することでチフスやコレラなどの致死率の高い病気が減少してきたことも事実だからです。また、不潔な状態では、ゴキブリやダニなどのアレルギー症状を引き起こす可能性がある虫の発生を招いてしまうこともあります。

 アレルギー症状や疾病の元になる細菌やウイルスは目に見えませんので、「この細菌は免疫力強化のために少しずつ触れるべき」「このウイルスは致死率が高いので避けるべき」などと触れる細菌・ウイルスを選択することは実質的に不可能です。不潔な環境で不確実に免疫機能を高めるよりは、なるべく衛生状態を良好に保つことでアレルギーや疾病の原因菌を避ける方が良いと言えるのではないでしょうか。

原因4:アレルギーという言葉が広まったこと

 アレルギーという言葉が医学界で使われるようになったのは1970年前後ですが、一般によく使われるようになったのはさらにもっと後の事です。今までは「食当たり」や「かぶれ」などと表現されていたものが「食物アレルギー」「アレルギーによる皮膚症状」などと表現されるようになったために、アレルギー自体が増えてきているような印象を与えているとも言えるのです。

現代生活はアレルギーとの共生

 さまざまな物質によってアレルギー反応が引き起こされますので、完全にアレルギーから防御することは困難と言えます。なるべくアレルギー反応が起こらないように、衛生的に生活することや虫などから身体を守ることなどの防御策を取っていきましょう。

参考サイト:

著者情報

ママモル編集部

子供の健康を守る米国のサイト『Safbaby』が運営するウェブマガジン『ママモル』の編集部です。

EARTH CHILD アースチャイルド


Back to Top