ハチに刺されて、アレルギー症状が出ることがあります。深刻な症状が出る場合は、全身にアレルギー症状が起こって死に至ることもあります。ハチによるアレルギー症状について解説してまいります。
ハチに刺されてから見られる症状
ハチに刺されると、程度の差はあれ、何らかのアレルギー症状が見られることが多いです。刺された部分が赤く腫れあがるだけで済むこともありますが、発熱したり、呼吸困難などのショック状態になってしまったりすることもあります。ハチに刺されてから見られる症状を、症状の重篤度別に見ていきましょう。
レベル1:皮膚症状、全身のだるさ
局部的あるいは全身に赤い発疹が出ます。かゆみを覚えたり、蕁麻疹状に細かな隆起が見られたりすることもあります。また、発疹や紅斑が見られなくても、全身が熱を帯びてだるく感じることもあります。
レベル2:消化器症状、浮腫
症状がさらに深刻度を増すと、嘔吐や悪心などの消化器症状が出ます。血管に浮腫が見られることもあります。
レベル3:呼吸器症状
症状がさらに深刻化すると、呼吸するのが苦しくなり、食べ物や唾液を呑み込むことも困難になります。また、咳き込むときに肺から「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」といった音が聞こえるようになることもあります。
レベル4:心血管系症状
血圧が低下し、チアノーゼや虚脱感、不整脈などが見られます。ショック状態になり、意識がもうろうとしてくることもあります。ハチに刺されてからすぐにレベル4の症状が見られることもありますが、徐々に症状が重篤化して30分以上を過ぎてからレベル4になることも少なくありません。
注意すべきハチの種類
刺されると深刻なアレルギー症状が出現するハチとして、アシナガバチとスズメバチ、ミツバチの3種類を挙げることができます。それぞれのハチに刺されたときに見られる主な症状は以下の通りです。
アシナガバチ
アシナガバチの毒の中には、フォスフォリパーゼA1やアンチゲン5などのアレルギー反応を引き起こす成分が入っています。そのため、アシナガバチに刺されると、血圧低下や呼吸困難などのショック状態に陥ることがあり、場合によっては複数の症状が同時に出現してアナフィラキシーショックになることもあります。
スズメバチ
スズメバチの毒には、アシナガバチの毒の成分と同じフォスフォリパーゼA1やアンチゲン5などのアレルギー反応を引き起こす成分が入っています。そのため、アシナガバチに刺されて体内にハチ毒による抗体を保有している人は、同じハチ毒を有するスズメバチに刺されることで、以前の全身症状よりも深刻な症状が出現することがあります。
ミツバチ
ミツバチの毒の中にはメリチンやアパミンなどのアレルギー反応を引き起こす成分が入っています。ミツバチの毒に含まれるアレルゲン(アレルギーを引き起こす成分)は、他のハチや虫の毒に入っていない独特のものが多いという特徴があります。そのため、ミツバチに刺されてから他のハチに刺されても、症状が重症化することは少ないです。
ハチに刺されやすい人
体質的にハチに刺されやすい人というのはいませんが、高所に登ることが多い人やハチの生活圏に侵入する可能性がある人はハチに刺されやすくなります。例えば、養蜂農家の人や林業従事者、木材製造業者、電気工事従事者。ゴルフ業従事者、造園業者などはハチに刺される機会が多く、従って、ハチによって重篤なアレルギー反応を出す可能性も高いと言えます。
ハチに刺される回数と症状との関係
ハチに複数回刺されることで、体内に抗体が出来て症状が重篤化し、アナフィラキシーショック状態に陥ることもあります。実際にハチに刺されて呼吸困難などの全身症状が見られた人は、二回目に同じ種類のハチ、もしくはスズメバチとアシナガバチのように同じアレルゲンを持つハチに刺されることで、前回よりも深刻な症状が出ることがあります。
ただし、ハチ刺されによる死亡率はハチに刺された回数とは関係がなく、1回だけのハチ刺されによって死亡するケースが複数回刺されて死亡するケースよりも多く見られます。このことから、特定のハチに刺されないように注意することよりも、ハチ全体に刺されないように注意することが重要だと言えるでしょう。
ハチに刺されたときの応急処置
ハチに刺されたら、まずはゴム手袋や吸引機などを使用してハチの毒針を抜きとります。そして、ハチに刺された部分を冷やします。手足をハチに刺されたときは、ハチに刺された部分よりも心臓に近い場所をゴムやひもで縛ります。応急処置をしたらすぐに病院に向かい、適切な処置を受けるようにしてください。ショック状態になったときのアドレナリン自己注射を携帯している場合は、早急に注射をしてから病院に向かうようにしましょう。
ハチに刺されないようにしよう
ハチがいる場所には近づかないこと、そしてどうしても近づかないといけないときは、全身を覆う服装をするようにしてください。また、万が一のために、アドレナリン自己注射のキットを持ち歩くことも検討してみて下さい。
参考サイト:
林業従事者における蜂さされ症例の研究
蜂毒アレルギーの臨床