一口に「喘息」といっても、症状の重さによって治療方法が異なります。症状によってどのように治療方法が変わるのか、また、重症度はどのように判定するのかについて見ていきましょう。
喘息の治療方法
初めて喘息の症状が出たときは、症状の重さに関わらず呼吸器科を受診して診断・治療を受けましょう。2回目以降に喘息の症状が出たときは、症状の重さによって以下の治療を行います。
症状が軽度~中程度のとき
症状が軽度~中程度と判断されるときは、まずは安静にします。数分~30分ほど安静にしても症状が良くならない場合、反対に悪化する場合は、医療機関から処方された発作治療薬(β2刺激薬)を服用します。
内服薬を服用してから30分、吸入薬を服用してから15分経って、症状が治まったときはそのまま安静にし、様子を見ながら日常生活に戻ります。15~30分経過しても症状が治まらないときは、再度、発作治療薬を服用します。2回目の服用で良くならないときは、医療機関を受診するようにしてください。
ただし、1回目もしくは2回目の服用で喘息症状が治まった場合でも、数日間は通常の長期管理薬に加えて発作治療薬を服用することが勧められます。どの程度服用し続けるのが良いのか判断に迷うときは、かかりつけの医療機関を受診し、医師に相談するようにしましょう。
症状が重度のとき
症状が重度と判断される場合は、すぐに発作治療薬を服用してから、医療機関に向かいます。意識が混迷しているときや呼吸困難が見られるときは、救急車を呼ぶなどの対策を取り、至急治療を受けられるようにしましょう。尚、症状が起こってから医療機関で治療を受ける前に時間がかかるときは、発作治療薬を20~30分間隔で服用することも可能です。
喘息の重症度を判定する基準
喘息症状の重症度は次の基準で見極めます。
軽度の喘息症状・発作
軽度の喘息症状もしくは発作のときは次のような状態が観測されます。ただし、特定の項目に中程度・重度の要素が観察されるときは、重症度が重い方で判断して下さい。
- 呼吸をするときにゼイゼイという音が聞こえない、もしくは小さい音で聞こえる。
- 呼吸をするときに胸部がへこまない、もしくはわずかにへこむ。
- 横になっても呼吸が苦しくならない。
- 普段よりも呼吸数がわずかに増えている。
- 急ぎ足になると呼吸が苦しくなる。
- 2文以上を続けて話すことが難しい。
- 食事や睡眠といった日常生活には特に影響がない。
- 興奮状態や意識の低下は見られない。
尚、呼吸数の基準は以下の表のようになります。呼吸が浅いこともありますので、腹~胸に手を当て、1分間の回数を測定して下さい。
小児における正常時の呼吸数の目安
出典:日本小児アレルギー学会喘息治療・管理ガイドライン委員会「小児気管支喘息治療・管理ガイドラインハンドブック2013ダイジェスト版」
http://www.jspaci.jp/Jpgl_hb2013/chap02.html
中程度の喘息症状・発作
中程度の喘息症状あるいは発作のときは、以下のような状態が観察されます。尚、1つの項目でも重度の症状に分類される状態が見られたときは、重度の喘息として治療を行いましょう。
- 呼吸をするとゼイゼイという音が聞こえる。
- 呼吸をするときに胸部が明らかにへこむ。
- 横になると苦しいので、座ることを好む。
- チアノーゼは見られない。
- 呼吸数が正常よりも増加している。
- 安静にしていても呼吸に困難を覚える。
- 歩くときに呼吸が苦しくなる。
- 文章をまとめて話すことができず、1句ずつ区切って話す。
- 食事することが辛くなる。
- 睡眠がやや妨害される。ときどき目を覚ましてしまう。
- 少々興奮状態になってはいるものの、意識は明瞭である。
重度の喘息症状・発作
喘息症状や発作が重度になると、以下のような状態が観察されます。すぐに発作治療薬を服用し、なるべく早く医療機関を受診するようにしてください。
- 明らかに呼吸の度に「ゼイゼイ」という音が聞こえる。
- 明らかに呼吸の度に胸がへこむ。
- 横になる姿勢だけでなく座る姿勢も苦しくなり、上半身が前傾する。
- チアノーゼが見られることもある。
- 呼吸数が増加する。もしくは呼吸が不規則になり計測が困難になる。
- 安静にしているときでも呼吸が困難になる。
- 呼吸が苦しく、歩行ができない。
- 言葉が繋がらず、1音ずつ区切って話すようになる。もしくは、話すことができなくなる。
- 食事することが困難になる。
- 眠ることができなくなる。
- 興奮状態が強くなり、意識が錯乱することもある。
正確に重症度を見極め、適切な治療を受けよう!
重症度を見極めて適切な処置を行えば、喘息症状から早く抜け出すことも可能です。咳が止まらなくなるとつい慌ててしまいますが、落ち着いて重症度を判断するようにしてくださいね。