金属を身につけることで起こる「金属アレルギー」。病院では「接触皮膚炎」と呼ばれることが多いです。金属アレルギーとは何なのか、そして、金属アレルギーを起こしやすい金属の種類や具体的な症状について解説します。
金属アレルギーを引き起こしているのは金属ではない!
金属アレルギーというと、「特定の金属が身体に作用してアレルギー反応が出ること」だと理解している人が多くいます。ですが、実際には違います。金属自体が身体にかゆみやかぶれなどを引き起こすことはありませんし、金属にかゆみを引き起こす成分が含まれているわけでもないのです。
溶けだした成分が体内に抗体を作る
金属アレルギーが生じる過程は次のようになります。
1.金属が汗などで溶けて体内に入る
金属が汗などによって溶けて、身に付けている人の体内に入り込みます。汗は弱酸性~弱アルカリ性を示しますので、金属をイオンに分解して溶かす作用を示します。
2.体内でアレルゲンを作る
体内に入り込んだ金属は、そのまま体外に放出されることもありますが、タンパク質と結合して「アレルゲン物質」を作ることもあります。アレルゲン物質を作ると、アレルゲン物質に対抗する「抗体」も作られるようになります。
3.再度体内に入った金属が抗体と反応する
体内でアレルゲン物質を作る元となった金属が再び体内に入り込むと、再度、アレルゲン物質が作られます。そのアレルゲン物質が体内に存在する抗体と接触すると、かゆみやかぶれなどのアレルギー反応が起こることがあるのです。
金属を身に付けてすぐのときはアレルギー反応が起きない
体内に作られた抗体(特定の金属アレルゲンに反応する抗体)に金属アレルゲンが反応してかゆみやかぶれなどのアレルギー反応が起こるわけですから、特定の金属を身に付けてすぐのタイミングでアレルギー反応が起こることはありません。
もし、特定の金属を身に付けてすぐにアレルギー反応が起こったのなら、過去にも同じ金属を身に付けたことがあると推測することができます。また、本当に初めて身に付けた金属であっても、一回の着用が長時間にわたる場合(普段から肌身離さず身に付けているアクセサリーや金属を使った義歯・被せ物など)は、金属が体内に二回以上に分けて取り込まれる可能性がありますので、金属アレルギーが起こることがあると考えられます。
金属アレルギーが起こりやすい金属の種類
すべての金属に対して金属アレルギーが起こるわけではありません。アレルギー反応を引き起こしやすい金属もありますし、アレルギー反応が起こりにくい金属もあります。もちろん、個人によっても差はありますが、一般的には次の傾向が見られます。
もっとも金属アレルギーが起こりやすいニッケル
ニッケルは、数ある金属の中でももっとも金属アレルギーが起こりやすい金属です。ステンレスにも使われていますが、主にステンレスは食器や家具などに用いられていますので、身につける機会が少なく、金属アレルギーを引き起こす原因とはなりにくいです。
ですが、ニッケルは、金メッキのジュエリーの土台に使われているに使われていることが多いですので注意が必要です。かゆみなどの症状が出るときは、金メッキの服飾具を身に着けていないか確認してみて下さい。
コバルト・クロム・マンガン・亜鉛・銅
ニッケルの次にアレルギーが起こりやすいのが、コバルトとクロム、マンガン、亜鉛、銅です。特に銅は身近なものに使われていることが多い金属ですので、一度でもアレルギー症状を感じたことがある人は注意するようにしてください。特に18Kなどのジュエリーは金と銅を混ぜて作られていますので、金にアレルギーを感じない人でも銅にアレルギー反応を示してしまうことがあります。
銀・金・プラチナ
銀や金、プラチナは、いずれもジュエリーとして頻繁に用いられる金属ですが、人によってはアレルギー反応を生じてしまうことがあります。
チタン
金属の中でもっともアレルギー反応が生じない金属が、チタンです。眼鏡のフレームなど長時間身につける装具にも使われることが多いです。とはいえ、チタンなら絶対にアレルギー反応が起きないというわけではありません。違和感が生じたときは、すぐに病院で診察してもらうようにしましょう。
金属アレルギーの症状
金属アレルギーによって、足の裏や手のひらに「汗疱(かんぽう)」と呼ばれる水疱状の症状が表れることがあります。かゆみが強いこともあり、日常生活に支障をきたすこともあります。その他にも、入浴時や就寝時など身体が暖かくなると蕁麻疹状の発疹が表れることや腰回りや肩周りなどに湿疹が出ることもあります。いずれにしても痒みが強く、症状が長期化することが多いです。
早めにアレルギー検査を受けてみよう!
金属アレルギーかどうかの検査は、皮膚科やアレルギー科などで、保険適用内で受けることができます。理由不明の痒みや湿疹に悩まされている人は、早めにアレルギー検査の受診をお勧めします。