食品アレルギー症状を引き起こす原因となる可能性のある食品があるということは、世間でも広く知られるところです。ですが、食品中にどの成分が入っているかを把握することは難しいですよね。アレルギーを引き起こす成分が含まれていることを知らずに食べてしまい、重篤な症状が出てしまっては困ります。
現在、日本では、アレルギーを発症することを防ぐために、製造された加工食品にアレルギー物質を含む食品を記載しなければならないという「食品表示法」が定められています。食品アレルギーを持つ人にとっては命を救う法律ともなるこの「食品表示法」について紹介してまいります。
食品に関する法律「食品表示法」
「食品表示法」とは、食品の原材料や原産地、あるいは栄養成分、添加物などの情報をパッケージに表示することを義務付ける法律です。もちろん、ただアレルギーを引き起こす可能性がある物質が含まれていると記すだけでなく、どのアレルギーの原因となる食品が含まれているかについても表示しなければなりません。
食品表示法では、衛生面で危害を発生する恐れを防ぐための「食品衛生法」と品質に関する適正な表示を定める「JAS法」、そして国民の健康増進のための「健康増進法」の3つの法律の理念を網羅して表示することが求められています。それぞれの法律によって表示が定められている内容について見ていきましょう。
食品衛生法によって定められている表示内容
食品の名称と賞味期限・消費期限、推奨される保存方法、遺伝子組み換えに関する情報、製造者名、添加物に関する情報、アレルギーを引き起こす食品が使用されているかどうかを記します。アレルギーを引き起こす食品が使用されているかどうかだけでなく、アレルギーを引き起こす食品と同じ工場や同じレーンで製造しているかどうかも記されていることがあります。
JAS法によって定められている表示内容
大まかに分けると品質に関する情報表示を定めている法律がJAS法です。食品の名称と消費期限・賞味期限、推奨される保存方法、遺伝子組み換えに関する情夫、製造者名等、食品衛生法によって定められている表示内容と重なる点が多いです。それ以外にも、JAS法独自が定めている表示内容としては、原材料名や内容量、原産地に関する表示があります。
健康増進法によって定められている表示内容
食品当たりもしくは重量当たり、1食分当たりのカロリーや栄養成分の内訳(タンパク質や資質、炭水化物、ナトリウム等)について表示します。生活習慣病予防やその他の疾病によって食塩量を制限している人が少なくないため、含有ナトリウムの食塩相当量に関する表示を実施していることもあります。
アレルギーの原因となる物質を表示
2002年4月1日以降に製造された加工食品には、アレルギー症状を誘発してしまう可能性のある原因物質(特定原材料)も、この食品表示法によって記載することに定められています。
加工食品のパッケージの裏や下部に、「原材料の一部に○○を含む」や「○○由来」などの表記を見かけることがあると思いますが、アレルギーの原因となる物質を食べると食物アレルギーを発症してしまう人には、それらの記載は重要な意味を持ちます。
食物アレルギーは、アレルギーの原因となる食物、つまりアレルゲンを摂取すると、皮膚にじんましんが出る、かゆみが出る、咳が出るなどの症状が表れます。ときには、アナフィラキシーショックを引き起こし、呼吸困難や気道狭窄など、命を脅かす症状を引き起こしてしまうこともあります。日本では、実に全人口の1~2%の人が何らかの食物アレルギーを持つと言われていますので、食品製造業者側にとっては正確な表示を行うこと、食品利用者にとっては表示をしっかりと確認することが大きな意味を持ちます。
食品アレルギーを持つ人がすべきこと
かゆみや咳などの比較的軽い症状はもちろん、呼吸困難やアナフィラキシーショックなどの重篤な症状を引き起こさないために、食品アレルギーを持つ人は、アレルゲンとなる食物を丁寧に避けて生活する必要があります。
現在、食品アレルギーを引き起こす可能性がある食品の中でも特に重い症状を引き起こす可能性の高い7品目(特定原材料)については、どのような加工食品であってもアレルギー表示をしなくてはいけないと義務付けられています。また、重い症状になることが稀でも、アレルギー反応が出る可能性のある20品目(特定原材料に準ずるもの)については、各メーカーに表示に関する対応を任せてはいますが、できれば表示することが推奨されています。
※厚生労働省 政策レポート「食品のアレルギー表示について」参照
http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/01/05.html
省令により表示が義務化された7品目(特定原材料)
えび・かに・小麦・卵・乳
・表示が必要とする理由:発症件数が多いため
そば・落花生(ピーナッツ)
・表示が必要とする理由:重い症状になり、命に関わる症状になる可能性が高いため
表示を推奨されている20品目(特定原材料に準ずるもの)
あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン
・表示を必要とする理由:一定の頻度で発症が報告されたもの
アレルゲンは「個別表示」すること
表示については、アレルギーの原因となる原材料の一つ一つについて表示する「個別表示」が定められています。複数の食品が詰め合わされている商品でも、商品の情報を表示します。例えば、3種類の味のあられが入っているパックがあったとしましょう。のり味とえび味、そしてプレーン味があったとする場合、全体にピーナッツオイルが含まれていたとしても、「すべてのあられにはピーナッツが含まれています」と表示するのではなく、「のり味:ピーナッツ、えび味:ピーナッツ、えび、プレーン味:ピーナッツ」と個別にアレルギーを引き起こす可能性がある食品について表示します。
また、食品に含まれるアレルゲンの含有量が微量でも表示する必要があります。食物アレルギーは、例えアレルゲンが微量でも発症する人がいますので、含有する量に関わらず表示しなければなりません。
それに加えて、アレルギーを引き起こす可能性がある食品の含有に関しては、曖昧な表現は認められていません。「○○が入っているかもしれません。」や「○○が入っている恐れがあります。」などの表示は禁止されています。「○○が入っています。」や「○○が含まれている食品と同じ工場で製造されています。」と、製品と食品の関係を明確にした言い切り型の言葉で表示することが求められています。
「一括表示」される場合
「個別表示」が原則ですが、一つの食品として加工され、部分的に切り分けて表示するのが難しい場合は、「一括表示」が認められています。例えば、「一部に小麦・卵・乳成分を含む」などの記載になります。
「食品表示」をしっかり見よう
加工食品には、アレルギーの原因となる食品を明示することが省令によって定められています。食品アレルギーは、微量をなめたり粉末が含まれていたりするだけでも重篤な症状を引き起こすこともあります。そのようなアレルギー症状を防ぐため、法的に「食品表示法」としてアレルゲンとなる食品の表示を定めているわけです。
食品アレルギーがあることが検査によって明らかになっている人はもちろん、食品アレルギーの可能性が疑われる人もしっかりと「食品表示」を確認して、アレルゲンとなる原材料を口にすることを避け、重篤な症状が表出することを未然に防ぐようにしてください。食品製造者側がきちんとアレルギー表示していても、消費者がその表示を見落としてしまうなら、せっかくの制度を活かすことができません。