魚、特に青魚には多くの脂肪酸が含まれており、体に良いことが知られています。また、この脂肪酸は、アトピー、喘息、蕁麻疹などのアレルギー反応を抑えることもわかっています。しかし、一方では魚でアレルギーを起こしてしまうこともあります。また、魚を食べた後にじんましんが発生し、魚アレルギーかなと思っていたら、実はアレルギーではなく違うことが原因だったというようなこともあります。ここでは魚アレルギーについて、またそれに類似した病気について詳しく解説していきます。
魚アレルギーではいろんな魚に反応が出やすくなる
魚アレルギーを起こす原因物質は「パルブアルブミン」と呼ばれるタンパク質や魚のコラーゲンです。パルブアルブミンや魚コラーゲンは、ほとんどの種類の魚に共通して含まれていますので、魚アレルギーを持つ人はあらゆる種類の魚でアレルギーを起こす傾向があります。
■魚アレルギーを起こしやすい魚(多い順に)
- サケ
- マグロ
- イワシ
- カレイ
- アジ
- タイ
- タラ
- ブリ
- サバ
魚を加熱加工してもアレルギー反応は出るのか?
牛乳アレルギーの場合は、乳製品として加工しても、発酵や加熱などの工程を含めても、牛乳アレルギーを引き起こす成分である「カゼイン」というタンパク質の構造が変化しませんので、アレルギー反応が出てしまいます。そのため、牛乳アレルギーがある人は、例えどのような形に加工されていたとしても乳が含まれている食品や飲料を避けることが勧められます。
一方、魚アレルギーを引き起こす成分であるパルブアルブミンや魚コラーゲンは、加熱などの加工によって成分の構造の一部が変わることもあります。そのため、魚アレルギーがある人でも、鰹節で出汁をとったお味噌汁を飲んでもアレルギー反応が出なかったり、ツナ缶を用いたサラダを食べたりすることができることもあるのです。もちろん、すべての魚アレルギーを引き起こす原因成分が加工によってなくなるわけではありません。加工してあっても大量に摂取するとアレルギー反応が出ることもありますので、食べる量を考えるようにしてくださいね。
こんな症状があったら魚アレルギーの可能性が
魚を食べた後に次のような症状が見られると、魚アレルギーの可能性が疑われます。
皮膚に見られる症状
全身のかゆみやじんましん、また、唇や口の中に限定される腫れやかゆみが発現した場合、魚アレルギーの可能性があります。
消化器官に見られる症状
腹部や喉の違和感、腹痛や下痢、吐き気が見られることもあります。腹痛と吐き気、腹痛と下痢など、複数の症状が同時に発現することもあります。
目もしくは目の周りに見られる症状
目の充血やかゆみ、まぶたの腫れとしてアレルギー症状が表れることもあります。
その他に見られる症状と症状の悪化
咳やくしゃみが出ることもあります。症状が悪化すると、呼吸困難や血圧低下、意識を失うなどのアナフィラキシーショック状態になることもあります。わずかな症状が見られる場合でも、違和感があるときは魚の摂取を止め、症状が落ち着くまで安静にしましょう。安静にしていても症状が治まらないときは、症状が重症化する前に内科や皮膚科、アレルギー科等の医療機関を訪れ、専門的な処置を受けるようにしてください。
魚で蕁麻疹が出てもアレルギーではない場合もある
魚を食べた直後にじんましん等のアレルギー反応が出た場合も、原因が魚アレルギーではないこともあります。そのような場合は次のような原因が考えられます。
■ヒスタミン中毒(仮性アレルギー)
ヒスタミン中毒は、特定の物質に反応しやすいいわゆるアレルギー体質でない人でも起こります。これは、鮮度の落ちた魚(特に赤身魚)を食べた際に起こりやすい中毒症状で、ある程度の時間が過ぎることで魚肉の中にヒスタミンという物質が増え、ヒスタミンを大量に体内に取り込むことで身体に反応が出てしまうのです。
ヒスタミン中毒として頻繁に見られる症状としては、じんましんや頭痛、腹痛、下痢、吐き気などがあります。食べた直後に起こることもありますが、食べてから1時間ほど経ってから起こることもあります。ヒスタミン中毒などのアレルギーに似た反応を示すことを、仮性アレルギー症状と呼ぶこともあります。真性アレルギー症状である魚アレルギーとは異なり、症状が重篤化しても血圧低下や呼吸困難等の生命に関わるアナフィラキシーショックは起こりにくいです。
■アニサキスアレルギー
魚に寄生している寄生虫「アニサキス」が体内に入ることでアレルギー反応が起こることもあります。全身のじんましんなどの症状が出ることが多いですが、アニサキスが胃や腸に食いつくと激しい腹痛を起こすことでも知られています。アニサキスは魚の内臓部分に潜んでいますので、内臓を取り除けばある程度は回避することができます。ですが、アニサキスが幼虫になると内臓から筋肉に移動することもありますので、内臓を取り除いたとしても完全にアニサキスアレルギーの可能性を絶ったことにはなりません。
アニサキスアレルギーの特徴として、症状が長期化することも挙げられます。激しい腹痛や嘔吐、下痢などの症状が1週間以上続くこともありますので注意が必要です。一般的な食中毒は、消化機能があまり発達していない子どもの方が大人よりも症状が出やすいのですが、アニサキスアレルギーは子どもよりも大人の方が発症しやすいという特徴もあります。
魚アレルギーとヒスタミン中毒との違い
ヒスタミン中毒と魚アレルギーの症状は類似点が多いために判断を誤ってしまうことがあります。じんましんや全身のかゆみなどの症状だけではヒスタミン中毒か魚アレルギーかを判別することは難しいですが、まぶたの腫れや喘息、呼吸困難といった目の周りや呼吸器に症状が出てきたときは、魚アレルギーであることが多いと判断することができます。魚アレルギーはヒスタミン中毒とは異なり命を左右する重篤な症状に移行することがありますので、魚アレルギーと考えられる場合は医療機関を早めに受診するようにしましょう。
また、ヒスタミン中毒は、個人差の多いアレルギー反応ではなく、魚の中に含まれる大量のヒスタミンによって引き起こされます。つまり、同じ魚を食べた複数の人が、じんましんやかゆみ、腹痛、下痢などを訴えるなら、魚アレルギーではなくヒスタミン中毒だと判断することができるのです。原因と考えられる魚をまだ口にしていない人に注意を呼び掛けるだけでなく、同じ状態の魚が調理場に残っていないかもチェックする必要があるでしょう。
魚アレルギー、ヒスタミン中毒を起さないようにするには
魚アレルギーを予防するには、アレルギーを起こす魚を食べないことに尽きます。魚アレルギーは複数の魚に対して起こることが通常ですので、一回でも魚アレルギーを起こしたことがある人は、今までにアレルギーを起こしていない魚に関しても、注意をして避ける必要があるでしょう。
一方、ヒスタミン中毒の原因は、特定の体質や体調ではなく、魚が古くなって鮮度が落ちていることからきています。なるべく魚は低温で保存し、新鮮なうちに食べるようにすることで、ヒスタミン中毒をある程度防ぐことができるでしょう。古くなった魚でも加熱すればヒスタミン中毒を避けることができると誤解している人もいますが、ヒスタミンは加熱しても構造が変わりませんので、加熱調理によってヒスタミン中毒を防ぐことはできません。古くなった魚は焼いたり揚げたりして食べるのではなく、なるべくそのまま破棄するようにしてください。
その他にも、意外と多いのが魚の干物によるヒスタミン中毒です。ヒスタミンは低温では増えにくいのですが、干物を作るときは常温で作ることが多いですので、乾かしている間にヒスタミンが大量発生してしまうこともあるのです。
また、乾かす作業に時間がかかることも、魚の干物にヒスタミンが増えてしまう原因です。消化器官がまだ充分に発達していない乳幼児に魚を与えるときは、干物ではなく新鮮な魚に充分に火を入れたものを与えるようにしてください。
まとめ
魚アレルギーになってしまうと、完治することは難しいと言われています。なるべく魚アレルギーにならないようにするためには、消化吸収の機能が未発達な乳幼児には魚アレルギーを起こしやすい生の状態の魚を与えないようにすることが重要となってきます。そのため、できれば少なくとも2歳くらいまでは刺身や寿司などの生魚ではなく、加熱調理した魚を食べさせるようにしましょう。
また、魚アレルギーと症状の似たヒスタミン中毒は、常に新鮮な魚を食べることで回避することが可能です。魚は低温で保存すること、購入したらなるべく早めに食べ切ることを心がけましょう。