さまざまな食物アレルギーがありますが、鶏肉を食べるとアレルギー反応が出る人もいます。から揚げや焼きとりなど、鶏肉は食卓に上ることが多い食材ですので、鶏肉がアレルゲンとなると食生活に大きな影響を及ぼします。鶏肉アレルギーの特徴や症状、検査方法などをまとめました。
鶏肉アレルギーとは…
鶏肉アレルギーは、他の食物アレルギーと同様、アレルゲンとなる鶏肉を焼いたり揚げたりして食べる、あるいは鶏肉の入った加工品などを摂取することで発症するアレルギーです。鶏肉に含まれる特定の成分が体内に入るとき、体をその特定の成分から守ろうとする免疫システムが過敏に働き、じんましんやかゆみ、ほてりなどのアレルギー症状となって表れるのです。
鶏肉を加熱処理した後に摂取すれば、アレルゲン性が低下すると考える人もいます。ですが、鶏肉アレルギーの原因となる成分は複数あり、いくつかの成分は加熱加工でアレルギーを起こさない構造に変化しますが、加熱してもアレルゲン性が低下しない成分もあります。ですから、鶏肉アレルギーと判断されたときは、鶏肉を刺身などの生で食べないことはもちろん、加熱調理した鶏肉や鶏肉加工品、部分的に鶏肉を使用している食品、鶏肉でとったスープを摂取するときにも注意が必要になるのです。
鶏肉アレルギーの症状
鶏肉アレルギーにみられる症状は人によりさまざまですが、皮膚的症状や消化器系の症状がみられることが多いです。
皮膚に表れる症状としては、全身、あるいは体の一部にかゆみや赤み、じんましん、湿疹などを挙げることができます。そのまま安静にしていることで症状が治まっていくことが多いです。また、消化器系の症状としては、吐き気や嘔吐、下痢、腹痛などを挙げることができます。それ以外にも、口や喉に違和感を覚えることや赤みを伴う腫れなどの症状が表れることもあります。
ほとんどの鶏肉アレルギーの症状は、これらの皮膚もしくは消化器官に見られるもので、特に長引いたり重症化したりすることはありません。ですが、稀に、呼吸困難や意識状態の低下、血圧の急激な低下などのアナフィラキシーショックを引き起こす場合もありますので注意が必要です。
食後2時間以内に表れる症状
鶏肉アレルギーのアレルゲンとなる食物、つまり鶏肉を摂取してから2時間以内にアレルギー反応が表れることを「即時型アレルギー反応」といいます。この即時型の中でも特に多くみられるのはじんましんで、鶏肉や鶏肉が含まれる食品を摂取してすぐに顔や全身に広がります。じんましん以外にも、下痢や腹痛、咳、喘鳴、鼻水などの消化器系や呼吸器系に症状が併発、あるいは単体で表れることがあります。
命を左右することもあるアナフィラキシーショックは、摂取後30分以内に症状が出始めることが多いです。皮膚だけ、消化器だけというのではなく、複数の場所に複数の症状が見られ、じんましんや呼吸困難、結膜の充血、喉の詰まりなど、多種の症状を引き起こし重症化していきます。急激な症状の悪化や複数の症状が同時に見られるときは、早急に医療機関を受診するようにしてください。
数時間経ってからの症状
即時型アレルギー反応に対して、「非即時型アレルギー反応」があります。非即時型アレルギー反応は、数時間経過してから症状が表れ始めます。場合によっては24時間以上経過してから表れることもありますので、どの食物がアレルゲンとなっているのかが分かりにくいだけでなく、特定の食べ物との関連性を証明することが困難になることもあります。そのため、風邪などのウイルス感染を疑って、効果のない医薬品を服用することや症状を悪化させてしまうこともあります。
鶏肉アレルギーの検査法
アレルギーを発症する原因となる食物を特定するためには、医療機関でアレルギー検査を行う必要があります。鶏肉アレルギーを疑う場合は、鶏肉に反応する抗体(特異的IgE抗体)を調べます。
即時型アレルギーの場合は、特異的IgE抗体が検出されることが多いので判断しやすいのですが、非即時型アレルギーの場合、ある程度体内で消化・吸収が進んでしまうために抗体が検出されにくくなりますので、一度の検査では確定することができない可能性もあります。
皮膚テスト「プリックテスト」
皮膚に微小な傷をつけて、そこに検査用の薬液をたらし浸透させ、アレルギーの有無の反応をみます。体への負担も比較的少なく、費用の負担も少ない検査です。また、皮膚を傷つけずにアレルゲンが染み込んだパッチを一定期間皮膚に触れさせ、赤みやかゆみなどの反応が出ないか見る方法もあります。プリックテストやスクラッチテスト(ひっかく方法)、パッチテスト(パッチを貼る方法)と呼ぶこともあります。
アレルギーが疑われる食材を食べる検査方法「負荷試験」
アレルゲンではないかと疑われる食材を実際に食べてみてアレルギー反応があるかどうか、どのくらい食べることができるかを調べる方法もあります。この方法は負荷試験と呼ばれます。
実際にアレルゲンを体内に摂取しますので、アレルギーの有無を診断する確実な方法といえますが、重篤なアレルギー反応を発症するかもしれないという危険も伴います。負荷試験を行うときは自己判断で実施するのではなく、必ず、医師の指導のもとで行うようにしましょう。
アレルギーが疑われる食材を除去する検査方法「除去試験」
負荷試験とは逆に、アレルギーの原因と疑われる食材の摂取を2週間ほど完全に中止する検査方法もあります。これを除去試験と呼びますが、その食材を除去することで湿疹などのアレルギー症状が改善されれば、その食材がアレルゲンである可能性が高いと判断します。
ただし、鶏肉以外のアレルギー源となる成分(例えば大豆や牛乳、ピーナッツ、キウイフルーツ等)も無意識に除去している場合や鶏肉が入っている食品を気付かずに食べ続けている場合もあるでしょう。そのような場合には、鶏肉がアレルギー源であることを特定することが難しくなります。
鶏肉アレルギーとその他のアレルギー
鶏肉アレルギーがある人は、同じニワトリから生み出される鶏卵に対してもアレルギー反応を示すのでしょうか。また、牛皮や豚皮由来のゼラチンに対してもアレルギー反応を示すことがあるのでしょうか。
鶏卵アレルギーとは特に関連なし!ただし個人差はある
鶏肉アレルギーを持つ人は、卵アレルギーを持つ人に比べて非常に少ないため、「鶏肉アレルギーがあるけれど、卵を食べても大丈夫なのかな?」と悩む人よりは、「卵アレルギーがあるけれど、鶏肉は食べられるの?」と悩む人の方が多くいます。
では、卵アレルギーがあると診断された人は、鶏肉の摂取についてはどのように指導されるのでしょうか。医療機関にもよりますが、最近では卵アレルギーのアレルゲンと鶏肉アレルギーのアレルゲンは同じではないという認識が広まっていますので、卵アレルギーだからと言って鶏肉も避けるようにと指導されることはほとんどありません。
実際に卵アレルギーと判断された人の中には、卵を食べないことで不足する恐れがあるタンパク質を補うために、白身魚や大豆食品だけでなく、鶏肉のささみなどを積極的に食べるように勧められることもあります。もちろんアレルギーが起こる原因は人によって異なりますので一概には言えませんが、鶏肉アレルギーと鶏卵アレルギーは同じものではないということは覚えておきましょう。
また、食品アレルギーがある人がどのような食材を食べられるかについては、アレルギーテストをしてからでないと正確なことを言えません。自己判断してしまうのではなく、かならず医療機関で調べてから食生活を見直すようにしてください。
ゼラチンとも関連なし!個人差はあるので注意は必要
牛の皮や豚の皮から作られるゼラチン。アレルギーを引き起こす原因となる物質として、厚生労働省から表示するように奨励されている18品目のうちの1つです。鶏肉と同じ動物由来ですが、特に関連はなく、鶏肉アレルギーだからといってゼラチンにも過敏に反応するわけではありません。
もちろん、人によっては鶏肉アレルギーとゼラチンアレルギーを併発していることもあります。アレルギー物質を病院で特定してから摂取するようにしてくださいね。
食物日誌を付けておこう
鶏肉アレルギーをはじめとして、食物アレルギーを疑う場合は、日頃から食物日誌を付けておくことをおすすめします。特に乳幼児の場合は、初めて口にした食材が原因と考えられることもあるので、それらを書き留めておくことで、医師がアレルゲンを推定しやすくなります。
食べたものの記録だけでなく、湿疹などの気になる症状も書き留めておきましょう。医師や栄養士などへの相談もしやすくなり、的確な治療や栄養相談を受けることができます。