文:SafBabyのエキスパート: Dr. モーリー・クラーク
お子さんの鼻水や鼻づまりが続いている、鼻をよくこする、ほじる、鼻血をよく出す、口臭がひどい、というような場合、それはアレルギー性鼻炎が原因かもしれません。最近ではアレルギー性鼻炎を発症する年齢が低くなってきている傾向があり、お子さんのアレルギー性鼻炎も決して珍しいものではなくなってきています。症状が風邪と似ていて、しかも小さいお子さんの場合には症状を上手く伝えられずに悪化してしまうこともよくあるこのアレルギー性鼻炎、一体どういうものなのか、原因、症状、治療法など詳しく解説していきます。
アレルギー性鼻炎は何歳くらいから現れる?
アレルギーの症状というものは、成長とともにだんだんと変化していきます。まず、赤ちゃんの頃にはアレルギーの症状は胃腸に出てきます。その後、アトピー性皮膚炎、気管支ぜんそくと症状を変え、アレルギー性鼻炎が現れてきます。最近ではアレルギー症状の発症が低年齢化しており、アレルギー性鼻炎については1歳くらいから出ることもあります。
アレルギー性鼻炎の原因
アレルギー性鼻炎は原因により2種類に分けることができます。
■通年性アレルギー性鼻炎
主にハウスダスト(室内のホコリやダニの死骸、糞、ペットの毛など)によって引き起こされるもので、ほぼ1年中症状が現れます。特に窓を締め切ってエアコンをつける夏や冬に悪化する傾向があります。
■季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)
花粉によって引き起こされるもので、アレルゲン(アレルギーの原因物質)となる植物の開花時期に症状が現れます。多数の花粉に反応を起こす場合は1年中症状が出ることもあります。
こどものアレルギー性鼻炎の症状の特徴
アレルギー性鼻炎の3大症状は「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」です。しかし、こどもに起こる場合、大人の場合とは症状が少し異なってきます。
1.くしゃみが少なく鼻づまりが多い
こどもの場合、鼻づまりが多い傾向があります。また、大人の場合と違い、鼻水がサラサラしたものでなく膿性のドロっとしたものの場合も多く見られます。鼻で呼吸ができず口呼吸となるため、口臭が強くなる傾向があります。
2.眼の症状が現れることが多い
眼が赤く充血したり、眼をかゆがる、下まぶたが腫れてクマができるというような眼の症状も現れやすい特徴があります。
3.合併症が多い
副鼻腔炎や滲出性中耳炎、気管支喘息やアトピー性皮膚炎、扁桃腺肥大などを併発することがよくあります。
4.症状がはっきりしないことが多い
鼻炎を起こしているとはっきりわからない場合も多く、ただ鼻をこする、鼻をよくすする、鼻血が出やすいというような症状だけの場合もあります。
こどものアレルギー性鼻炎の治療法
こどものアレルギー性鼻炎には主に次に挙げる治療法が行われます。
1.抗原除去療法
原因となるアレルゲンを避ける方法で、最も基本となるものです。家の掃除をこまめに行う、花粉症の場合は外出時にマスクをしたり、帰宅時に服をよくはたいて花粉を落とす、洗濯物を外に干さない、などに気をつけます。
2.薬物療法
アレルギー症状を薬で抑える治療法で、根本的に治すものではありません。抗ヒスタミン剤をはじめ、症状に合わせて点鼻薬やステロイド剤などが処方されます。市販の点鼻薬はほとんどが大人用ですので、安易にこどもに使用しないようにしましょう。
3.特異的減感作療法
アレルゲンとなる物質をごく微量ずつ体内に作用させ、アレルギーを起こしにくい体質に変えていく治療法で、2〜3年ほど治療期間が必要です。一般的に6歳以上で行われ、根本的に治ってしまう場合もありますが、ごく稀に重度の副作用が出ることもあります。
4.レーザー療法(アルゴンプラズマ療法)
主に6歳以上で行われる治療で、アルゴンプラズマレーザーを鼻の粘膜に当てて、アレルギーの起こりにくい粘膜に変性させます。特に鼻づまりには90%以上の効果があるとされていますが、数ヶ月〜2年ほどで粘膜が新たに再生するため、根本的に治せるわけではありません。
まとめ
現在、日本では人口のおよそ半数近い人が何らかのアレルギーをもっていると言われています。花粉症の人は年々増加傾向にありますが、それも含めると40%以上の人がアレルギー性鼻炎だということです。アレルギーに対する予防や治療法に関してはまだまだ課題が残っており、現在のところでは症状を抑える方法がほとんどであると言っていいでしょう。小さなお子さんの場合、アレルギー性鼻炎が副鼻腔炎や滲出性中耳炎などを引き起こすことも多いため、鼻水がネバネバした状態が続いていたり、耳が聞こえづらいなどの症状があれば早めに耳鼻科を受診し、悪化を防ぐようにしましょう。