ママモル

子供の健康を守る米国のサイト『Safbaby』が運営するウェブマガジン

牛乳は体にとって本当に安全?アレルギーは?

文:SafBabyのゲストエキスパート、ジェイ・ゴードン博士

この記事では、授乳中のお母さんが牛乳や乳製品を取り続けることで赤ちゃんにアレルギー反応がでる危険性を中心に、乳児期や幼児期における牛乳の摂取について、ゴードン医学博士にご説明いただきます。

誰もが一度は考える「牛乳が本当に赤ちゃんにとって本当に良いのか?」という疑問について、ジェイ・ゴードン医学博士にお話を伺うことができました。

2000年8月の米国小児科学会よる発表によれば、「母親が食事で摂取したアレルギー誘発性タンパク質が母乳から出ることで、赤ちゃんに悪影響が出ている」ことが分かりました。その結果、学会では、牛乳が赤ちゃんにとって想像以上の影響を与えることを認識し、それまで行っていた「妊娠中や授乳中の母親が牛乳を飲む利点についての研究」の周知を取りやめたのです。

授乳中の母親は「赤ちゃんに良い影響を与える食事」について、多くのアドバイスをもらうことでしょう。私は、出産を控えこれからママやパパになる方たちに会うときには、このことについて話すよう努めています。また、まだ妊娠する前の女性に、アレルギーを避ける方法などを話せる機会があればいいなと思うこともよくあります。

ヒトの子供にとってはヒトの母乳が一番だ、ということに疑問の余地はありません。粉ミルクで育った子供は、母乳で育った子供よりはるかに腸のトラブルが多いのです。

ある母親にこう言った医者がいました。「この赤ちゃんは母乳アレルギーですね」。誤診にもほどがあります。

赤ちゃんは母親の食事に含まれ、結果母乳となるタンパク小片に対してアレルギー反応を起こすことがあるのです。しかし、そういう赤ちゃんは、ヒト以外のタンパク質で作られた粉ミルクに対してはもっと強くアレルギー反応を起こす危険があります。「低刺激性」をうたっている粉ミルクでも大差はないのです。アレルギー反応を減らすため細かく分解されたタンパク質で作られていますが、アレルゲンであることは変わらず、問題の解決にはなりません。
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乳製品に対してよくみられる症状

  • 緑がかった、水っぽい便
  • 血の混じった便
  • 発疹
  • 慢性的な鼻づまり
  • 下痢
  • 異常な腹部不快感
  • けいれん
  • 胃食道逆流症
  • 胸やけ
  • ミルクや母乳を吐く
  • ガスが溜まる
  • 便秘

ガスが溜まる

赤ちゃんはガスが溜まりやすいものです。たった1年で体重を2倍や3倍にしなければいけない宿命なのですから。赤ちゃんの中には他の子よりもひどく泣く子がいて、その子の両親は「もだえ苦しむほど辛い」と言っていました。母乳の出方が良くないことがその原因だとすれば、授乳間隔を変えるのも良いですが、お母さんが食生活を見直すことがベターです。

私がアレルギーを疑う食材は、牛乳をはじめ卵、ピーナッツ、小麦、かんきつ類などです。お母さんができる何より重要な食生活の改善は、牛乳を飲むのをやめ、乳製品を食べないことです。それでガスの溜まりやすい赤ちゃんの状態が改善がみられた事例があります。

血便

血便にはウイルス感染が原因のものもありますが、症例として一般的なのは乳製品によるアレルギーなので、お母さんが牛乳や乳製品をやめると治ることがよくあります。

牛乳に含まれるタンパク質で腸内の炎症が起きると、微量出血をするのです。血便は怖いと思われるかもしれませんが、危険な状態に陥ることは滅多にありません。

皮膚炎

発疹は赤ちゃんによくあることですが、なかでも皮膚炎と呼ばれるアレルギー性発疹は一番多い症状で、治るのに時間がかかり厄介です。

頻繁に泣き、赤ちゃんが顔をよくこするようになります。初期症状はこのような感じですが、だんだんと赤い発疹がみられることもあり、それが次第に盛り上がってひどくなり、うろこ状にかさかさした皮膚がはがれ落ちたり、または血がにじむこともあります。

皮膚表面の感染が起こるようになると治療が難しくなるので気を付けましょう。

これを防ぐには母親が乳製品をやめ、ピーナッツと卵も食べないようにすれば、症状の緩和や、完治も期待できます。塗り薬をやめるかどうか悩む前に、食生活を変えましょう。

便秘

赤ちゃんの便秘も、その原因と思われるのは、牛乳に含まれるタンパク質に対する腸や尿管のアレルギー反応です。検査や投薬より先に、授乳中の母親が乳製品をやめ、お子さんが食べる離乳食を変えましょう。

幼児も同じで、乳製品を食べさせなければ便秘が収まります。「子供が乳製品をやめたらおねしょをしなくなった」という研究も複数あります。

風邪の症状

長い間鼻水に悩まされている赤ちゃんも、お母さんが乳製品を完全にやめると症状が良くなることがあります。

牛乳に対するアレルギーは年齢に関係なく花粉症に似た症状がみられます。鼻づまりや、咳、鼻水といった症状が何週間にも及びます。この場合にも私は診察時に、乳製品を食べているかどうかを必ず尋ねることにしています。もし乳製品を取っていれば、それをやめるよう指示します。

中耳炎にかかった子供も、乳製品食べなければ症状が改善することがあります。これまで10種類、いや20種類もの抗生物質やステロイド処方を受けてきたという子供たちを、何百人と治療してきました。牛乳やチーズをやめるだけで、耳の手術を受けなくて済んだ例もたくさんあります。子供たちの中耳炎がこんなに簡単なことで治ったのです。

学校を欠席したりいろいろな活動を制限させるよりも、症状を長引かせている根本的な原因を取り除いて、病気自体が小さくなるよう処置するのです。

胃食道逆流

赤ちゃんが胃食道逆流と診断されたら、母乳を与えているお母さんは今すぐ自分の食事から乳製品を除くべきです。

「この子は母乳しか飲んでいないのにひどい」と思う方もいるでしょうが、赤ちゃんに胃食道逆流の検査や治療を施すことに比べればはるかに簡単ですし、体の負担も少なくて済みます。胃食道逆流の症状の経過観察をする時に大切なのは忍耐です。

母親が乳製品をやめても、その中に含まれるタンパク質が母乳から完全に検出されなくなるまで、数週間かかるからです。それでも乳製品由来のタンパク質量が減り始めるため、多くの場合は数日以内に改善がみられます。ただし、個人差がありますので2、3週間以内に変化がみられなくても異常ではありません。

milkproducts私がお話ししているのは、私の医師としての22年間に及ぶ経験で遭遇した、何百人もの赤ちゃんの奇跡的な症状の改善です。これだけの症例が揃えば、一見ありふれたように見えて、実は紛れもなく強力な処置だといえます。

「乳製品をやめれば100%改善するのか?」と聞かれれば、答えは「いいえ」です。しかし、この乳製品除去法は、私が毎週何十人もの子供たちに出す、重要な所見の1つなのです。

カゼインとベータラクトグロブリン

アレルギー反応を引き起こす2大タンパク質といえば、カゼインとベータラクトグロブリンです。乳製品をやめただけでは目立った改善が赤ちゃんにみられないときは、食べ物の成分表をよく見てみましょう。タンパク質がないと思いこんでいる豆乳のチーズにも、実は含まれているのです。

食べ物以外でも、赤ちゃんのおむつかぶれ用軟膏でさえ、カゼインが使われています。

アレルギーのある子供が常にアレルゲンに触れていると、危篤状態になることさえあります。多くの場合、そのような大きなアレルギー反応が起きる前に細かな症状が長期間続くので注意が必要です。

乳糖不耐症

牛乳に含まれている主な糖分は乳糖ですが、乳糖不耐症と牛乳のタンパク質アレルギーを混同している人がいます。

乳糖不耐症はおよそ7,8歳以降に徐々に発症し始める、アジア系やアラスカ系、アフリカ系の人に特に多くみられる症状です。

牛乳を飲んだ後や乳製品を食べた後に、ガスが溜まったりおなかが張ったりするのを感じる人が多くいます。そうした症状を放っておく人もいれば乳製品を控える人もいて、症状を軽くするために乳糖(酵素)サプリメントを取る人もいます。

ウイルス性胃腸炎にかかると、一時的に乳糖不耐症の状態を引き起こすことがあります。

2000年8月に発行された情報記事「Discover Magazine」に、元酪農家で現在はコーネル大学栄養生化学者のT. コリン・キャンベル氏との対談が掲載されています。対談内容は以下の通りです。

「キャンベル氏の要点はシンプルです。

『牛乳を飲むことは不自然なことである』。

アジアやアフリカ、南ヨーロッパ、ラテンアメリカの成人の多くは、ヒトや牛の乳に含まれる主な糖である乳糖により消化トラブルを起こします。例えば、おなかの張りや胃けいれん、下痢などの症状です。

カリフォルニア大学デービス校の地理学者、フレデリック・J.・シモンズ氏によってまとめられた1978年の人口調査では、『北欧や北米で牛乳が普及したのはただの遺伝子異常によるものだ』としています。

通常、自然界のプログラムとして子供は幼児期に乳糖を分解する酵素の生産を減らし、大人になるまでに離乳するようになっています。しかし、北欧人の子孫によって受け継がれた遺伝子突然異変が、この酵素の生産の減少を防ぎました。

結果として、ほとんどのアメリカ人が牛乳を飲めるようになったというわけです。」

乳製品に関する医療専門家の意見

icecream何百もの医学記事や本の中では、乳製品が人間に与える問題について書かれています。この著者は医学界で権威を持つ内科医たちです。

故フランク・オスキー医学博士は、ジョンズ・ホプキンス大学の小児科部長を務め、小児科医年報の著者でもありました。また、故ベンジャミン・スポック博士は過去100年で最も影響力のある内科医として知られた名医です。このような医学会の権威が、患者はもちろん医師たちにも、乳製品のデメリットに関心を持ってもらえるよう働きかけてきました。

ジョン・マクドゥーガル博士はアルファベット順に牛乳の悪影響を挙げています。Aから始まるこれらの項目を少し見てみましょう。

アレルギー。乳製品は大人、子供に関係なくアレルギーにつながる食材です。

貧血(Anemia実は、乳製品が貧血の一番の原因となっているのです。乳製品によって血液不足になり、鉄の吸収を妨げられるからです。そればかりか、牛乳を多く飲む子供はおなかがいっぱいになってしまい、鉄分を含んだ健康的な食事をしたがりません。上でご紹介したオスキー医学博士も、これまでにアメリカの子供たちの貧血と牛乳の関係についての記事を、数多く執筆してきました。

関節炎(Arthritisが3つめです。牛乳の成分は関節炎症の原因となる抗体・抗原粒子に関係しています。

4つめはアテローム性動脈硬化症(Atherosclerosisなどの心臓や血管症に関わる病気です。牛乳は飽和脂肪の多い食材なのです。さらに体によくないのは、牛乳に対して作られる抗体が繊細な動脈壁を刺激することです。

さらにアルファベットリストは続いていきますが、このリストでは、幼少期に牛乳を摂取することで小児糖尿病が増加するリスクも挙げています。

また、「牛乳を飲む(赤ちゃんが母乳に含まれる乳タンパクを摂取する場合を含む)」ことで腸管の血液が不足するということはすでに認められた医学的事実なのです。

このように、牛乳が引き起こす問題が数年前よりずっと周知されてきているので、私は乳製品の悪影響について患者さんに話すのが以前よりずっと楽になりました。それでも、毎年4億ドルの広告費を費やすような乳製品メーカーに対抗するのは今でも難しいのです。

私は大きなお子さんたちに牛乳の悪影響の話をするとき、古いお笑い番組のジョークを引用します。

「おい、あの大きい動物を見てみろよ!とりあえず体の下に潜って絞ってみようぜ、なんか出てきたら飲むんだぞ。残ったやつは持って帰って、1年ぐらい取っておこう。あとで食べるんだ!」

それを聞いた子供たちはみんな、「うわあ!」と嫌がります。大人だってそうですよね。

著者情報

ジェイ・ゴードン博士

ジェイ・ゴードン博士(Jay Gordon M.D., FAAP, IBCLC, FABM)は25年間サンタモニカでクリニックを持つ小児科医です。乳児栄養と母乳に対する深い興味を持ち、母乳の認定試験の国際理事会を通過した初の男性医師であるとともに、20年以上にわたりラ·レーチェ·リーグ(母乳育児支援団)の顧問役員を務めています。また、UCLA医学部小児科の准臨床教授であり、シーダーズシナイ医療センターの客員教授でもあります。

EARTH CHILD アースチャイルド

牛乳は体にとって本当に安全?アレルギーは?

文:SafBabyのゲストエキスパート、ジェイ・ゴードン博士

この記事では、授乳中のお母さんが牛乳や乳製品を取り続けることで赤ちゃんにアレルギー反応がでる危険性を中心に、乳児期や幼児期における牛乳の摂取について、ゴードン医学博士にご説明いただきます。

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