ピーナッツは「落花生」とも呼ばれ、日本各地の郷土料理に用いられたり、お菓子や加工食品にもよく使用されたりすることがあります。このように食材として親しまれているピーナッツですが、そばアレルギーと同様に、ごく少量でもアナフィラキシー(重篤なアレルギー反応)を起こしやすいことでも知られています。
また、アレルギー症状を示す人が多く、食物アレルギーの原因食物としては全体の第4位を占めるという結果が出ています。ピーナッツアレルギーにはどのような特徴があるのか、また対処法などについても見ていきましょう。
重篤なアレルギーを起こしやすいピーナッツ
ピーナッツアレルギーは近年、発症率が急速に増加していると言われています。そのほとんどは幼児期に発症します。また、牛乳や卵のアレルギーとは違い、耐性を獲得しづらい(成長しても食べられるようになりにくい)という特徴もあります。そばアレルギーと並んで、アレルギー反応が強く出やすく、アナフィラキシーを起こす頻度が高いことでも知られています。ピーナッツバターやピーナッツそのものを頻繁に食べるアメリカでは、年間100人前後の人がピーナッツアレルギーで死亡しているという報告もあります。
ピーナッツアレルギーではどんな症状が出やすい?
ピーナッツアレルギーは他のアレルギーに比べて、皮膚症状だけでなく、喘息発作や喉の腫れによる呼吸困難といった呼吸器の症状が顕著に現れやいことが特徴です。喘息だと思っていたら実はピーナッツが原因だったということもあるくらい、喘息との関連が深いことでも知られています。また、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状も起こしやすいです。
ピーナッツは食べた15分以内に口周辺にだけアレルギー症状(唇の腫れ、口の周りの湿疹など、喉のかゆみ)が現れる「口腔アレルギー症候群」の原因となりやすいことでも知られています。この場合は自然と症状が和らぐことがほとんどですが、時に重症化することもありますので、口の周りに症状が現れたら注意深く他の症状が出ないか観察しておきましょう。
重篤な症状が出ることもある
ピーナッツは、複数の臓器で同時に症状が起こるアナフィラキシーショックを起こしやすい食品でもあります。アナフィラキシー状態になると、急激に血圧が低下したり、気道がふさがって呼吸困難になったりすることがあります。処置が遅れると生命の危機にも繋がりますので、早急な判断が必要です。
ピーナッツは加熱するとアレルゲンが強まる!
果物や卵などは加熱調理するとアレルギーを起こしにくくなりますが、ピーナッツの場合は加熱すると逆にアレルゲンが強まるので要注意です。特に高い温度で加熱する「ロースト」や高温の油で揚げる「フライ」にすると、生でピーナッツを食べたりお湯でゆでたりするよりもアレルギー反応が出やすくなると言われています。
交差反応に注意
ピーナッツはマメ科ですので、ナッツ類(木の実)に分類されるカシューナッツやくるみとは異なる食材です。ですから、ピーナッツにアレルギーがあるからといって、すべてのナッツ類にアレルギー反応が見られるわけではありません。
とはいうものの、ピーナッツにアレルギーがあると他のナッツ類にもアレルギーを起こすことがあります。このように厳密には異なる食材であっても、アレルギーを引き起こすタンパク質の構造が似ているものによってアレルギー反応を示すことを「交差反応」といいます。
ピーナッツアレルギーとナッツアレルギー
ピーナッツアレルギーの25%の人が、アーモンドやピスタチオなどの他のナッツ類にもアレルギー反応(交差反応)を示すと言われています。ナッツ類は種類が多く、くるみ、アーモンド、マカデミアナッツ、カシューナッツ、ピスタチオなどがあり、それぞれ体調や摂取量によっては重症化することもありますので、ピーナッツでアレルギー反応を起こしたことがある人は注意するようにしてください。
ピーナッツアレルギーと大豆アレルギー
ピーナッツと同じくマメ科の大豆ですが、ピーナッツアレルギーがある人が大豆に対して交差反応を示すことは少ないです。そのため、ピーナッツアレルギーがある人も、特に不安なく大豆を食べることができますし、反対に大豆アレルギーがある人も、ピーナッツの摂取に神経質になる必要はありません。
ピーナッツと大豆において交差反応が起こりにくいのは、ピーナッツアレルギーの原因となるタンパク質と大豆アレルギーの原因となるタンパク質が異なるからではないかと推測されています。ですが、なぜこのように類似する食品なのに反応が異なるかについては、今のところは解明されていません。
ピーナッツアレルギーの対処法
ピーナッツアレルギーはほとんど治る可能性がありませんので、ピーナッツを避ける、またピーナッツを含む食品を避けるということが対処の基本となります。ピーナッツを含む食品は多く、チョコレートなどのお菓子に入っていたり、隠し味として加工食品に含まれていたりすることもあります。そのため、パッケージのアレルギー表示をしっかりと確認することが大事です。ピーナッツを含む食品は表示が義務付けられていますので、「落花生」と表記されていないかを確認しましょう。
ピーナッツを食べている人に近付かない
また、ピーナッツの殻を割ったときに舞い上がる粉を吸い込んだだけでアレルギー反応を起こすことや、ピーナッツクリームが顔についていた人とキスをしただけでアナフィラキシーショックを起こして死亡した人の例もあります。ピーナッツアレルギーのある人は、ピーナッツ、またはピーナッツを含む加工食品を食べている人の近くに行くことも注意した方が良いでしょう。
意外と多い!ピーナッツオイル
ピーナッツそのものが食品に使用されていなくても、ピーナッツから抽出したオイルを使った食品に対しても注意する必要があります。日本で加工されている食品には「ピーナッツオイル」や「落花生油」と表記されていますので、かならずチェックして下さい。海外の商品についてもピーナッツオイルが含まれている場合は、避けることが勧められます。チョコレートバーやクッキー、スナック菓子などのお菓子類に含まれていることが多いです。
また、ピーナッツオイルが含まれている化粧品も少なくありません。化粧品は食品ではありませんので口から体内に入ることはありませんが、皮膚を通して吸収されますので、ピーナッツアレルギーのある人にとってはピーナッツオイル含有の化粧品も避けるべき商品と言えます。化粧品の成分表示もしっかりとチェックするようにしてくださいね。
症状が重篤化しやすい食品アレルギーの1つ
ピーナッツアレルギーは症状が重篤化しやすい食品アレルギーです。医師と相談し、もしも強いアレルギー反応が出たときのために、抗アレルギー剤やアドレナリンの注射薬を常に携帯しておくのが良いでしょう。
アドレナリン注射薬は、アナフィラキシーショックが見られたときに、症状の進行を一時的に遅らせることができる自己注射薬です。正しく使用するのはもちろん、使用する前後にかならず救急車を呼び、治療を迅速に受けられる状態にしておきましょう。
まとめ
ピーナッツを原材料にした食品というのは意外に多くあります。ピーナッツアレルギーのある人はどのような食品や化粧品を避ければアレルギー反応が出にくいのか、しっかりと把握しておくことが大切です。
また、現在のところ、子供にピーナッツを与えるタイミングは遅い方が良い、とされています。これはピーナッツによるアレルギーを引き起こしにくくするだけでなく、喉に詰まらせてしまうことを防ぐ目的もあります。ピーナッツを食べないからといって栄養不足になることはありません。他の食品で栄養を補い、健康的に暮らしていくようにしましょう。