子どもによく見られ、ノドの痛みや高熱を主症状とする溶連菌感染症には、その他にも全身に発疹が出る、という特徴があります。ノドの痛みや熱などが主症状であるために風邪と間違われやすい病気ですが、風邪では発疹が出ませんので、発疹は溶連菌感染症の診断の決め手の一つとなる症状でもあります。溶連菌感染症の発疹はどのような特徴があるのか、具体的に探っていきましょう。
溶連菌感染症では必ず発疹が出る?
溶連菌感染症では、全身に赤くて小さいブツブツした発疹が出るという特徴があります。そのため、熱やノドの傷み以外に発疹が出ると、溶連菌感染症を疑うことができます。ですが、溶連菌感染症を特徴づけるはずの発疹は、かならず出るというわけではなく、まったく出ないこともあるのです。
溶連菌に感染しても発疹が出るか出ないかは、溶連菌の型と感染者の体質によって決まります。ですから、発疹が出ないからといって、即、「溶連菌感染症ではない」と診断することはできません。
溶連菌感染症の発疹の特徴
発疹は発病した1〜2日日に出現することが多いです。ほとんどのケースにおいて溶連菌による発疹はノドの痛みや高熱等の症状と同時に現れることが多いのですが、場合によってはタイミングがずれて後から出ることもあります。
一般的には、下腹部や太ももの内側あたりから発疹ができ始め、やがて24時間以内に全身に急速に広がっていきます。発疹は1つ1つを見ると直径1〜2ミリくらいの赤い粒ですが、多数集合しますので、全体が赤くなったように見えます。このような発疹を「猩紅熱(しょうこうねつ)様発疹
と呼びます。
溶連菌感染症による発疹はかゆみを伴います。また、発疹が出始めて1週間くらい経ってから、手のひらや手足の指の皮膚が日焼けした後のようにポロポロとむけてきます。この状態を「落屑(らくせつ)」と呼びます。落屑は手のひらや手足の指だけに起こり、身体の大部分では起こりません。
溶連菌感染症は薬疹と間違われることも
溶連菌感染症だと医療機関で診断されると、一般的には抗生剤による治療が行われます。ノドの痛みや発熱があって発疹が出ていない状態のときに、溶連菌感染症であると診断されて抗生剤を処方されると、その後、発疹が出た場合に、溶連菌感染症による発疹なのか、抗生剤に対するアレルギー反応による発疹(薬疹)なのかがわからなくなることがあります。このような場合は再度医師に診てもらうことをお勧めします。もしも溶連菌による発疹ではなく薬疹の疑いが強い場合は、抗生剤の種類を変更することで症状を抑えることもできます。
溶連菌感染症の発疹と他の病気の発疹との見分け方
発疹を起こす子どもの病気はいくつかありますが、発疹の出方はそれぞれの病気によってある程度特徴があります。それぞれの病気で出てくる発疹の違いについてまとめると次のようになります。
■溶連菌感染症
<かかりやすい年齢・時期>
2歳〜小学生に多くみられます。11月〜4月頃の乾燥した時期に流行することがありますが、1年を通してみられます。
<発疹の特徴と他の症状>
腹部や太ももを中心に全身に真っ赤なかゆみを伴う発疹が、高熱(38〜39度)とともに現れます。高熱と発疹いがいの特徴としては、強いノドの痛み、首のリンパ節の腫れ、イチゴ舌(舌が赤くなりブツブツが出る)、腹痛などがあります。
溶連菌感染症に罹患した場合の登園・通学時期は、幼稚園や学校によって異なります。子どもの体調と医師の指示、そして学校側の規定に従い、一定期間学校を休ませるようにしましょう。
■手足口病
<かかりやすい年齢・時期>
5歳以下の乳幼児が感染者の約9割を占めます。夏風邪の一種で、5月〜7月に集団感染することも少なくありません。
<発疹の特徴と他の症状>
手のひらや足の裏を中心として、ひざ、ひじ、お尻に米粒大の小さな水疱が多数現れます。痛みやかゆみはありません。また、口の中にも水疱、口内炎ができ、痛みや不快感のために食欲が落ちることがあります。熱はあっても微熱程度(37度〜38度)のことが多く、1~2日程度で平熱に戻ります。熱が全く出ないこともあります。
手足口病のウイルスは、長い場合には1ヶ月程度体内に残ります。そのため、完全にウイルスがいなくなってから登園させるというのは現実的ではありませんので、他人に感染しやすい感染初期だけ幼稚園や学校を休ませることが多いです。子どもの体調や医師の指示、学校の規定に沿って通園・通学時期を決定しましょう。
■突発性発疹
<かかりやすい年齢・時期>
おもに生後6ヶ月〜2歳の赤ちゃんに発症します。突発性発疹の原因となるウイルスは2種類ありますので、1度突発性発疹にかかったとしても異なるウイルスに罹患する可能性があり、最大2回かかる可能性があると言えます。気候や季節に関わらず、1年中いつでもかかる可能性があります。
<発疹の特徴と他の特徴>
微熱やだるさなどの前触れもなく突然38度以上の高熱が出て、3日程度続きます。熱がある程度下がった後に、赤く少し盛り上がった形状の細かい発疹がお腹や背中を中心に現れます。発疹ができてもかゆみはありません。
突発性発疹を発症したときは、平熱に戻ってから1日ほど経ってから通園・通学させることができます。幼稚園や学校によって規定が異なりますので、子どもの体調と学校側の判断によって通園・通学時期を決定しましょう。
■りんご病(伝染性紅斑)
<かかりやすい年齢・時期>
5歳〜9歳頃に多く見られる病気です。冬から初夏にかけての乾燥した時期にかかることが多いですが、季節特有の疾患ではありませんので1年中罹患する恐れはあります。
<発疹の特徴と他の特徴>
熱は出ないことが多いですが、流行した年によっては38度以上の高熱が見られるケースが多くなる場合もあります。両方の頬を中心に赤くて平らな発疹が、蝶の形のように左右対称に現れることが特徴です。伝染性紅斑による発疹は、かゆみを伴うことが多いです。発疹や高熱以外にもノドの痛みや腹痛、頭痛、筋肉痛、関節痛などが症状として現れることがあります。
2週間ほどで自然治癒することが多いですので、発疹以外の症状がなく、子どもの体調に問題がないなら幼稚園や学校を休ませる必要はありません。ただし、日光に当たったり入浴などによって体温が高くなったりすると、かゆみが強くなることがあります。屋外に出る機会を減らしてもらえるように、担任の先生等に相談する方が良いかもしれません。
■水疱瘡
<かかりやすい年齢・時期>
乳幼児がかかりやすく、冬から初夏にかけて流行します。
<発疹の特徴と他の特徴>
初めは赤いぶつぶつが現れ、次第に盛り上がり、水疱になって潰れてかさぶたになります。これが2、3日をかけて全身に広がり、強いかゆみを伴います。38度程度の熱が2、3日出ることもよくあります。水疱の中には水疱瘡の原因菌が入っています。かゆみがありますのでつい掻いてしまいますが、掻いた手に触れたり掻いてウイルスが出た部分に触れたりすることで、感染してしまいますので注意が必要です。
水疱瘡と診断されると、一定期間は通学や通園することができません。水疱がすべて治癒し、かさぶたになった部分がしっかりと乾燥していることを医師に確認してもらってから、幼稚園や学校に行かせるようにしましょう。
まとめ
発疹を伴う子どもの病気は、種類がたくさんあります。上記に紹介した病気以外にも、原因不明の発疹が出る場合も珍しくありません。ある程度発疹の特徴を知っておくとよいですが、素人では区別することが難しく、正しい処置が行えるかどうかも分かりません。明らかに病気だと思われる発疹が見られたときは、早めに医師の診察を受け、適切な処置を受けることをおすすめします。