ステロイド軟膏の使用は、信頼できる医師の指示に従って行うこと
ステロイド軟膏は、炎症を抑える効果の高い薬ですが、使用方法や中止方法が難しい薬です。信頼できる医師のもとでの治療が必要です。ステロイド入りの市販薬を自己判断で安易に使用しないようにしましょう。
ステロイド軟膏にも様々な種類があり、強度もストロンゲスト・ベリーストロング・ストロング・ミディアム・マイルドの5段階に分かれています。また抗生剤入りのものもあり、症状や部位によって使い分けが必要です。
アトピー性皮膚炎の病院での治療方法には、標準治療といわれるステロイド軟膏・プロトピック軟膏で炎症を抑えながら保湿剤を用いてスキンケアする治療方法と脱ステロイド・脱保湿治療といわれるステロイド軟膏・プロトピック軟膏・保湿剤を使用せず、肌本来の回復力を高めるスキンケアと生活習慣の改善での治療方法があります。
- 標準治療:
- ステロイド軟膏・プロトピック軟膏で炎症を抑えながら保湿剤を用いてスキンケアする治療方針。日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」の「薬物療法」と「スキンケア」を中心とした治療で、多くの皮膚科で取り入れられています。
- 脱ステロイド・脱保湿治療:
- ステロイド軟膏・プロトピック軟膏・保湿剤を使用せず、肌本来の回復力を高めるスキンケアで自然治癒させる方針。この治療をしている病院は少ないので、『アトピーにステロイドを使わない治療が可能な病院』をインターネットなどでさがし、「ステロイド軟膏を使わない治療を希望します」ということを最初の受診時からはっきりとお医者さんに伝える必要があります。
ステロイドの副作用
※ステロイド軟膏の副作用については、ステロイド軟膏を使わない治療を推奨しているお医者さんとステロイド軟膏を使用する治療をしているお医者さんで少し意見が違うようです。
ステロイド軟膏を使う治療をしているお医者さんによると、ステロイド内服薬では起こるがステロイド軟膏では起こらない副作用を明確に区別し、ステロイドを怖い薬だと考えないで欲しいとのことです。またステロイド軟膏で起こる副作用にも、かなり長期に使用した場合しか起こらない副作用や起こる頻度が低い副作用が多いとのことです。
治療にステロイド軟膏を使用するお医者さんも使用しないお医者さんも共通してあげているステロイド軟膏の副作用は
- ステロイド潮紅:長期にステロイド軟膏を使用することで血管が拡張し、皮膚が赤くなります。さらに進むと毛細血管が細い赤い糸のように見えてくることがあります。
- 皮膚萎縮:皮膚が薄くなります。そのため血管が網の目のように透けて見えてきます。
- ステロイド紫斑:真皮の大部分を占めているコラーゲンの増殖が抑制されること、表皮も委縮して皮膚全体が薄くなり、軽くぶつけただけで内出血したり、皮膚が破れて出血するようになります。
- 多毛:塗っていた部分の体毛が濃くなります。
- 酒渣様皮膚炎:顔が赤くぶつぶつします。
- 細菌・真菌・ウイルスなどに感染しやすくなります。
- 乾皮症:かさかさ肌になります。
です。
ステロイド外用薬を使わない治療を推奨しているお医者さんは下記の副作用もあげておられます。
- ステロイド効果減弱反応:炎症などに対するステロイドの効果が使っているうちに弱くなる現象。
- ステロイド依存性皮膚症:ステロイドを使用することによって正常の皮膚機能が、外用ステロイド無しには働かなくなった状態。
- 保湿依存症:長期に外用することで、ステロイド外用剤を塗らないとひどく乾燥するようになります。
- 成人型アトピー性皮膚炎:ステロイド依存が原因でアトピー性皮膚炎が長く続き、成人になっても治らない状態です。
アトピー性皮膚炎の治療にステロイド軟膏を塗った方がいいのか、塗らない方がいいのか、ひとりひとり状態が違うので、ここで安易にお答えすることはできません。標準治療を行っているお医者さんと脱ステロイド・脱保湿治療を行っているお医者さんの著書の一部分をまとめてみたので、参考にしてください。そして興味を持たれた方は、それぞれの本の全文を読んで、自分に合った治療を見極めてください。
「アトピー性皮膚炎はなぜ治らなかったのか」木村和弘著 には、『〈ステロイドは怖い薬〉というイメージが定着しすぎて、ステロイド軟膏を治療に使用したものの、適切な種類の薬を適切な量と適切な期間に使用できず、効果が得られず副作用が目立つケースも少なくないようです。アトピー性皮膚炎の憎悪時は、火事に例えると体中がひどい火事になっています。また、いったん火が消えてもアトピー性皮膚炎の人の皮膚は、刺激を受けやすいので、小さい火事が起きてきます。どうやって早く消すか、火事そのものを起こさせないようにどういうスキンケアをするかという2段階の治療が必要です。炎症の程度に見合った強さの薬を期間を決め使用量を守って使い、炎症が鎮静化してもスキンケアを続けます。ステロイド軟膏とプロトピック軟膏で炎症を抑え、保湿剤とスキンケアで症状を上手にコントロールすることで、日常生活に過度な制限を加えずに、普通と変わらない生活をおくることができます。治療の目標は、「ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏(プロトピック軟膏を滅多に使わなくても、周囲の人からアトピー性皮膚炎であることがわからない」「治ったも同然の状態となって気がついたら薬も使わなくなっていた」という状態。』
「ママも安心 アトピッ子の素肌をつくる」隅田さちえ著 「赤ちゃん・子どものアトピー治療」佐藤健二・佐藤美津子著 によると『アトピーは自然治癒します。乳児期は成長のスピードが速く、皮膚を速いスピードでつくることが苦手な子は、体の成長に合わせて全体をしっかり包み込む皮膚をつくれずに、皮膚が壊れて湿疹ができる子がいます。1歳を過ぎると、体の成長速度がゆるやかになるので、強い皮膚をつくれるようになり、症状もよくなります。皮膚は4週間から6週間の周期で新しくつくられるので、赤ちゃんの顔の湿疹がどんなにひどくても跡が残ることはありません。何もぬらなくても赤ちゃんは、自分の力で強い皮膚を作り、治っていきます。食事や生活スタイル、入浴、遊び、睡眠など強い皮膚を作る生活習慣作りが大切です。子どものアトピーの半数は小学生の間に治っていきますが、ステロイド治療を続けていると、ステロイド依存が原因でアトピー性皮膚炎が長く続き、成人になっても治らないケースがあります。ステロイド治療を受けていた方は、一度もステロイド治療を受けていない人に比べて、脱ステロイド・脱保湿治療の効果が出るまでに少し時間がかかります。』
ここで言えることは、ステロイド軟膏を使う治療を受ける場合は、標準治療が適切にできるお医者さんをさがし、ステロイド軟膏を使わない治療を受けたい場合は、脱ステロイド・脱保湿治療が適切にできるお医者さんをさがした方がよさそうだということ。
そして、どちらの治療方法を選んでも、信頼できるお医者さんをさがし、お医者さんに相談しながら、あせらず根気よく治療を続けていくことが大切だということです。
※そして民間業者が高額で効果のない商品を販売するアトピービジネスと言われる商法に注意しましょう。