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アトピー患者の洗濯事情!やはり手洗いは必須?

 こんにちは。物心つく前からアトピーをわずらい、以後、40数年アトピーと戦っている出雲ゆき子です。アトピーっ子として生きていくということは、面倒なことが多いということでもあります。たとえ1泊旅行に出かけるときでも塗り薬は必須ですし、通常の状態でも、身体のどこかに絆創膏やガーゼを貼っています。その中でも特に面倒なのが、「洗濯」ではないでしょうか。アトピー患者は洗濯に手間がかかるのです。

洗剤でかぶれる患者も多い

 香りのよい洗剤が増えましたね。洋服からふんわりと良い香りがすると気分も上がります。しかし、アトピー患者にとっては、洗剤の香りすら「かゆい」と感じるときがあるのです。なんなんでしょうね。洗剤でかぶれたことはないのですが、香りによっては「この香りは危険。絶対触ったらかゆくなる」と感じることがあるのです。

 洗剤や化学物質に対してアレルギーがあるアトピー患者も多いですよね。知り合いのお子さんも化学物質アレルギーで、洗剤が少しでも衣類に残っているとかゆくなるそうなので、「とにかくすすぎをしっかりとしないといけない」とお母さんがこぼしていました。ふんわりと仕上げる洗剤を使っても、しっかりとすすいでしまうわけですから、ふんわり感はまったく残らなさそうですね。

柔軟剤が苦手な患者も多い

 洗剤だけでなく柔軟剤が苦手なアトピー患者も多いです。実はわたしも洗濯洗剤でかぶれたことはないのですが、柔軟剤で仕上げた衣類を着ると、なんとなくむずむずしてかゆくなってしまいます。柔軟剤は洗剤と違ってすすがずに衣類に残りますから、肌に与える刺激も多いようですね。というわけで、我が家では洗剤だけで洗濯をしています。タオルもふんわりとはしていませんが、アトピー肌にはガサガサしたタオルの方が心地よいんです。

本当の問題は洗剤ではない

 洗剤と柔軟剤について長々としゃべってきましたが、アトピー患者における洗濯問題の本題は洗剤と柔軟剤にあるのではないのです。もっともやっかいな問題は「血痕」なのです。

 アトピー患者は体が熱くなるとかゆみが増しますから、身体が温まるとき=布団の中で寝ているときは、かゆくなって、知らず知らずに体をかいてしまいます。また、日中は「体をかいちゃだめ」と意志の力でかかないように努力している人も、夜中はかいてしまいますよね。そんなこんなで夜中に身体をかきむしり、朝起きたときにはシーツや掛布団カバーに血痕がついていることも多いのです。特に羽毛布団をかぶる冬は、身体が温まってかゆくなる絶好のシーズンです。空気が乾燥していることも、かゆみに拍車をかけます。

布団の洗濯は面倒だ

 週に1、2回はシーツや掛布団カバーを洗います。おそらくアトピー患者ではない方も、週に1、2回は寝具を洗っていらっしゃいますよね?夏は洗ってもすぐに乾きますし、布団をかぶらずタオルケットだけですから気軽に洗濯できます。しかし、問題は冬です。冬の夜中ほどかゆい時期はありませんから、ほぼ毎日シーツを洗うことにもなるのです。

 朝早く洗濯しても、天気が悪い冬の日なら、夕方になってもまだ湿っていたりしますよね。浴室乾燥機やエアコンのランドリーモードを使って乾ききらない寝具を乾かしますが、何度もベランダや浴室を行ったり来たりしますので、それだけで疲れてしまいます。しかも、冬は羽毛布団を使っていますから、カバーを乾かしてもすぐに眠れるわけではありません。羽毛布団にカバーを取り付ける作業がまだ残っています。「一日の大半を洗濯に追われていたな・・・」と遠い目になりながら、眠りに就くことになるのです。

血痕は手洗いでないと落ちない

 部分用洗剤には「落とせるもの:血痕」と書かれていますよね?あれって、何なんですか?私はいろいろな部分用洗剤を試してきましたが、いまだかつて部分用洗剤を揉みこむだけで血痕がすっきりと落ちたためしがありませんよ。かならず血痕の縁が茶色の輪になって衣類や寝具に残っています。

 漂白剤もそうです。使用説明の部分には「落とせるもの:血痕」と書かれてありますが、部分用洗剤と同じく、ただ単に揉みこむだけでは血痕の縁が茶色の輪になって残ります。

血痕には固形洗剤がベスト

 やはり血痕は手洗いでないと落ちないもののようです。それも、液体の部分用洗剤や漂白剤ではなく、固形洗剤でないと落ちません。固形洗剤もいろいろありますが、白い固形洗剤よりは緑色の固形洗剤がよく落ちます。もし、血痕が落とせなくて悩んでいる方は、スーパーマーケットやドラッグストアで固形洗剤をお買い求めくださいね。100円ほどと安価ですが、効果は抜群ですよ。

固形洗剤のアトピー的問題点

 固形洗剤を強くプッシュしている私ですが、固形洗剤に問題点がないわけではありません。固形洗剤には、大きく分けて「色抜け」と「手荒れ」の2つの問題があるのです。

色が抜ける!確実に抜ける!

 血痕を素早く落としてくれる固形洗剤。安価で非常に優秀ですので、流血の多い我が家には欠かせないアイテムです。しかし、落とすのは血痕だけではありません。染料にも働きかけますので、血痕周りの布の色も着実に抜けてしまいます。特にタイツやシーツなどの柔らかく薄い素材の色は抜けやすいです。同じところにばかり血痕がつくと、何度も固形洗剤でこするため、その部分だけうっすらと白くなってしまいます。

ちょっと洗うだけでもガサガサ

 アトピーですから、手荒れは日常茶飯事です。「お茶碗を洗った」「空気が乾燥している」「洗剤の原液を触った」「レモンを触った」などのちょっとした刺激で、手がガサガサになってしまいます。

 しかし、私にとって、固形洗剤ほど強力に手荒れを促進するアイテムはありません。固形洗剤で血痕部分をちょっとこするだけで、一瞬にして手の表面がひびわれ、強烈なかゆみが指先を襲ってきます。

 「じゃあゴム手袋をすればいいじゃん」と思う人もいるでしょう。残念ながら私はゴム手袋にも荒れてしまいますので、安易にゴム手袋をはめることもできないのです。毎朝、「血痕を落としてきれいに洗いたい」という気持ちと「手荒れがひどくなるなあ・・・。やっぱり固形洗剤は触りたくないな」という気持ちの葛藤を抱えなくてはならないのです。

ハンドクリームをこまめに塗って手荒れを抑える

 葛藤しつつも、やはり「血痕を落としてきれいに洗いたい」という気持ちが勝ち、毎朝、固形洗剤を使って手洗いすることになります。手洗いした後は石鹸のぬめりを水で洗い流し、ハンドクリームを塗りこんで手荒れを最小限に抑えます。

 しかし、ここでも注意が必要です。ハンドクリームを塗りこもうと手をこすりすぎると、手指が熱くなってかゆみが強まります。ふんわりとハンドクリームを押し込むように塗らなくては、アトピーっ子には手荒れ予防効果が半減してしまうのです。

清潔にしないと生きていけないアトピー患者

 病院では、アトピーを改善するためには寝具や衣類をこまめに洗ってきれいにすることが大切と説明されることがあります。確かにそうなのですが、アトピー患者は清潔にしたくなくても血痕が寝具や衣類に付着してしまいますので、通常以上に洗濯し、通常以上に清潔になってしまうことが多いです。清潔にしないと生きていけないのがアトピー患者だともいえるでしょう。

著者情報

出雲 ゆき子

東京大学医学部で精神衛生学(専門は発達障害児の療育、親とのかかわり方)を専攻。博士課程では精神医学・看護学を専攻。博士号取得。卒業後、アメリカや韓国等で看護学や救急医学についてのリサーチに従事。現在は主に看護額、精神衛生学、金融関係の執筆業を営む。AFP、ファイナンシャル・プランニング技能士2級、JAPAN MENSA会員

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