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清潔すぎるのもアトピーの原因?アトピーっ子の清潔基準

 こんにちは。物心つく前からアトピーをわずらい、以後、40数年アトピーと戦っている出雲ゆき子です。最近、アトピーの子どもたちって増えていますよね。わたしが子供だった頃は、アトピーと言う言葉すら知らない人も多く、わたしがアトピーだと言っても、「アトピー、何それ」という反応が多かったです。それが、今ではアトピーを知らない人はほぼいません。

 ところで、「清潔にしすぎるからアトピーなどのアレルギー症状が出る」といった話を、聞いたことがありますか?昔よりも衛生観念が向上したことで、不潔なものに対しての抵抗力がなくなり、ちょっとした雑菌や物質に対してもアレルギー反応が出てしまう、アトピーなどの症状が出てしまう・・・という理論です。実際、清潔すぎることがアトピーの原因になるのでしょうか。

清潔に関してはいい加減だったのにアトピーになった私

 ところで、わたしは特別に衛生観念が発達した親に育てられたわけではありません。家に帰ってきたときに手は洗うように指導されましたが、「石鹸、使いなさいよ」「指の間、爪先、チェックした?」とまでは、指導されたことはないように思います。

 しかし、小さなころから間違いなくアトピー症状を発症していましたし、今も適当な衛生観念のまま暮らしていますが、アトピー症状から脱出する気配もありません。「清潔すぎるからアトピーになる」というのは、わたしに限っては当てはまらないようです。

アトピーではあるけれど他のアレルギーはない

 アトピーとして40数年を生きてきましたが、アトピー以外のアレルギー症状が出たことはありません。どんな食べ物に対しても湿疹や発熱といった症状は出ませんし、なんなら、少々腐っているようなものでもOKです。食中毒になったことも一度もありません。大勢で同じお弁当を食べ、集団食中毒を起こしたとしても、おそらくわたしだけは大丈夫そうで、なんか悲しいです。

花粉症になったこともない

 また、アレルギー性の病気の中でももっともメジャーといっても過言ではない「花粉症」。アトピーなどのアレルギーが出やすい人は、ほとんど花粉症を併発しているとも言われています。しかし、まだ一度も花粉症になったことがないわたし。本当に免疫力が強すぎるというか、花粉が飛散している中でも何も感じません。

 そういえば、2、3年前に一度、街中で涙が止まらないことがあり、「もしかして花粉症?でも認めたら負けだ」と自分に言い聞かせ、難局を乗り切ったことがあります。結果論ではありますが、乗り切れたのですから、やはり花粉症にはなってなかったのではないか?と今でも信じています。

衛生に関して神経質すぎないことを意識しての子育て

 衛生に対してアバウトな環境で育ったのに、アトピーになったわたし。しかし、子どもに関しては、少しでもアトピーになるリスクを低くするために、意図的に衛生に関してアバウトに育てました。家に帰ってきたときは、水だけで手洗い。風邪をひいたときは周囲に迷惑をかけないためにマスクはかけさせますが、予防目的では臨機応変に対応し、雑菌に関してもウイルスに関しても「気にしすぎないこと」に気をつかいました。

衛生的かどうかよりも元々の体質の方が重要?

 その結果(かどうかは不明ですが)、一度もアレルギーらしい症状も出たことがなく、アトピーっぽい様子も見られませんでした。わたしと子どもの例だけでは何とも言えませんが、衛生に気をつけるかどうかというよりも、アトピーになるかどうかは、元々持って生まれた体質にかかっている部分が多いのではないでしょうか。

やっぱりどうなの?衛生仮説

 「衛生的な環境がアレルギーの発症原因となる」と最初に唱えたのは、イギリスのStrachan博士です。この仮説は「衛生仮説」と呼ばれています。ただし、すべての場合について衛生的な環境がアレルギーの発症原因となるとは述べているのではなく、乳幼児期までに非衛生的な環境で暮らすことで、その後のアレルギー発症の可能性が低くなるとしています。

 Strachan博士の研究の素晴らしいところは、なんと17,414名もの人ものデータで調査をしたということです。わたしが若干2人の例から「衛生は・・・」と語るのとは、説得力が違いますよね。しかも、年齢や地域に影響されないように、1953年3月にイギリスで生まれた人に限って研究対象者としました。これなら「若いから抵抗力がなかったんでしょ」とか「地域が違うと衛生観念が違うよね」と反論できなくなりますよね。

Strachanの研究で分かったこととは

 この大規模な研究から、さまざまなことが分かりました。例えば、花粉症にかかることや湿疹があることは、兄弟数の数に反比例するということが報告されています。つまり、きょうだいが多いほどアレルギー症状が出にくいということです。年下のきょうだいよりも年上のきょうだいが多いとアレルギー症状が出にくいとも報告されていますので、年上のきょうだいと一緒に暮らすことで、抵抗力が増すと考えられますね。

 また、家畜を飼育している家庭で生まれた子どもは、家畜と一緒に暮らしていない子どもよりも、アトピーやアレルギーの症状が出にくいということも報告されています。家畜を飼育していると、どうしても衛生的な管理は難しくなってしまいますから、やはり幼いときに命に別状を与えない程度の不潔な環境に慣れておくことは、良いことなのかもしれませんね。

幼いときは子どもや動物に接するべき?

 衛生仮説が正しいとするならば、幼いときは、なるべく子どもたち同士が触れ合う環境に置き、できれば年上の子どもとも接したいですよね。現在は昔と比べるときょうだいの数が減っていますから、乳幼児期に保育園に預ける方がアレルギーやアトピーが出にくい体質になると言えるのでしょうか。しかし、現在のところ、「赤ちゃんのときから保育園に通っていた子どもは、そうでない子どもよりも、アレルギー体質である可能性が低い」というデータはありませんから、一概に、保育園に預けるべきとまでは言えません。

 また、幼少期から動物と触れ合う環境にいるのも、何らかの良い影響がありそうですね。もちろん、子どもが危険を感じるような状況で触れさせるのはNGですが、情操教育にも一役買いそうです。

不潔はNG!しかし衛生管理はほどほどに

 子どもが病気にかかる程度にまで不潔な生活をさせることは絶対にNGです。清潔で暖かな住居と衣服、食事は、最低限の親の務めです。しかし、あまりにも衛生にうるさすぎるのもNGです。明らかなアレルギー症状が見られる場合や医師から特定のものを避けるように指導されている場合を除き、ほどほどの衛生状態で暮らすのが良いのかもしれませんね。

参考:
斎藤博久:衛生仮説
日本クラブ診療所2014年12月:「衛生仮説」アレルギー疾患の増加は環境が衛生的になったせいなのか?

著者情報

出雲 ゆき子

東京大学医学部で精神衛生学(専門は発達障害児の療育、親とのかかわり方)を専攻。博士課程では精神医学・看護学を専攻。博士号取得。卒業後、アメリカや韓国等で看護学や救急医学についてのリサーチに従事。現在は主に看護額、精神衛生学、金融関係の執筆業を営む。AFP、ファイナンシャル・プランニング技能士2級、JAPAN MENSA会員

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