カビが生えた食べ物は、どのように処理していますか?全体的にカビが生えているなら、大抵の人はすぐに捨てるでしょう。しかし、一部分だけに緑色や白のカビが生えているなら、カビが生えた部分を千切って、残りの部分を食べてしまう人もいるのではないでしょうか。実際のところ、カビが生えた食べ物はどのように処理するのが良いのでしょうか。カビが生えた食べ物の取扱い方と危険性について解説します。
カビは糖分を栄養として増殖する
カビは菌類ですので、胞子によって増えます。空気中に漂っているカビの胞子がパンに付着し、パンの糖分を栄養分として増殖していくのです。もちろん、カビはいつでも増殖するわけではありません。糖分などの栄養分があり、なおかつカビが増えやすい温度(0~40℃)で、湿気が高い状態なら、カビは急速に増殖するのです。
常温に置いたパンはカビの大好物
常温の場所にパンを置いておくと、カビの好きな糖分と水分、そして最適な温度の3つの条件を満たすことになります。カビにとっては増殖しやすい最高の環境ですよね。パンが密封されていれば良いのですが、空気に触れられるようになっていると、空中の胞子がパンに付着して、数日のうちにカビが発生してしまいます。
糖分が含まれている食べ物なら何でも栄養になる
カビが好むのはパンだけではありません。糖分が含まれているご飯やお餅、ケーキ、ドーナツなども、胞子が付着して増殖すると、緑色や白色のカビとなって目に見えるようになります。
冷蔵庫に保管してもカビが生えることがある
また、冷蔵庫に入れたとしても、絶対にカビが生えないとは言えません。冷蔵庫によっては庫内温度が10℃前後の比較的高温に設定されている部屋がありますが、10℃前後はカビが増殖する温度ですので、扉を開け閉めするすきにカビの胞子が入りこむと、冷蔵庫内の食べ物にもカビが生えてしまうことがあるのです。
カビは目に見える部分だけにあるのではない
食べ物にカビが生えるときは、斑点状の塊となって生えますよね。しかし、斑点状の塊だけがカビではありません。カビは、表面に出ている部分だけでなく、深く根を張っているのです。
つまり、食べ物の表面に付着しているカビを取り除いても、カビ全体を取り除いたことにはなりません。その食べ物全体にカビが根を張っている可能性がありますので、食べ物すべてがもう食べられない状態になっているのです。
加熱すればカビは死滅する?
カビが生えた食べ物でも、加熱すればカビが死滅するので食べられると思っている人もいますよね。確かにカビが生育しやすい温度は、0~40℃程度とされています。しかし、食べ物に付着したカビ胞子をすべて死滅させようとすると、120℃ほどの高温で90~120分もの長時間加熱しなくてはならないとも報告されているのです。
カビの胞子は簡単には死滅しませんので、カビが生えた食べ物はすぐに捨てる方が良いですね。また、カビの胞子は空気中にただよっていますので、カビが生えた食べ物の横に置いている食べ物にも、カビの胞子が付着している可能性があります。カビが生えている食べ物にくっつけて置いている食べ物にも充分に注意するようにしてくださいね。
参考:厚生労働省「カビとは」
カビが付着した食べ物を食べるとどうなる?
カビが生えている食べ物は、たとえカビ部分をとっても食べてはいけません。しかし、誤って食べてしまったり、カビに気付かないまま口に入れてしまったりすることもありますよね。カビが付着した食べ物を食べるとどうなってしまうのでしょうか。
食中毒症状が起こる
カビが生えている食べ物を食べると、腹痛や下痢、嘔吐、胃痙攣などの食中毒症状が起こることがあります。カビの塊が表面に付着している食べ物はもちろん、カビ胞子によって内部に粘り気がある食べ物も、絶対に食べないようにしましょう。
毒を発するカビもある
カビの中には、人間や動物に対して毒となる化学物質を作り出すものもあります。カビが作り出す毒を「カビ毒」と言いますが、現在、300種類以上のカビ毒が確認されており、中には肝臓障害を引き起こす猛毒もあります。
カビが発する毒は、カビと同様、熱に強いという特性があります。例えば、フライパンやオーブンで焼いたり、油で揚げて、食べ物の温度を一時的に100~210℃の高温にしても、60分以内の加熱ではカビ毒は消滅しないことが分かっています。また、熱湯で茹でる場合には、長時間茹でても食べ物内にカビ毒は残りますし、茹で水の中にもカビ毒が大量に検出されることも報告されています。
発がん性のあるカビ
毒性のあるカビの中には、発がん性のある種類もあります。例えば、コウジカビの一種である「アフラトキシン」は、天然由来の物質の中でもっとも強力な発がん性物質として知られています。発がん性を示すだけでなく急性中毒を引き起こすこともあり、過去には、アフラトキシンで10万羽以上の七面鳥が死んだり、100人以上の人が亡くなったりと、大規模な被害を引き起こしてきました。
また、麦やトウモロコシに付着することが多い「フザリウム系カビ毒」は、悪心や嘔吐などの食中毒症状を引き起こすことで知られています。畑の土壌の中で生息し、家畜の体内に入り込んで不妊や外陰部肥大などの生殖器官に異常を生じさせることもあります。
カビの種類
日常生活で見かけることがあるカビには、アフラトキシンやフザリウム系カビ毒のような猛毒のものは滅多にありません。日本で見られることが多いカビの種類を紹介します。
ムコール
薄グレー~白色の綿毛のようなカビは「ムコール」です。短時間で増殖しますので、あっという間に食べ物が綿毛に覆われてしまいます。低温に強く、冷蔵庫に保管している食べ物にも発生することが特徴です。長期冷蔵保管している果物、野菜、海産物などに見られることが多いです。
クラドスポリウム
浴室などに見られる黒い斑点状のカビを「クラドスポリウム」と言います。建物にも付着しますが、ケーキや野菜などの食品にも発生します。浴室のゴム部分に発生すると、根深く、落としにくいという特徴があります。また、クラドスポリウムは喘息などのアレルギー症状を引き起こしますので、アレルギー反応を起こしやすい人は特に注意しなくてはいけません。
ペニシリウム
食品に青緑色の群落を作るのが「「ペニシリウム」です。みかんやレモンなどの柑橘系の果物、餅、チーズなどに発生することが多いです。
ワレミア
茶褐色の斑点状のカビは「ワレミア」です。干し柿やチョコレートなどの糖分が多く含まれている食品に発生することが多いです。
カビを生えさせないためにできること
カビの胞子は空気中をただよっていますので、カビが生えないように管理するのは容易なことではありません。なるべく空気に触れないように真空パックにするか、早めに消費するかどちらかです。万が一、カビが生えてしまったときは、加熱してもカビの群落を取り除いてもカビ全部を取り除くことはできません。食べ物を廃棄し、カビ部分が接触していた周囲の食べ物もなるべく早く廃棄するようにしてください。