「イライラの原因はカルシウム不足だ」というのが、都市伝説のようにささやかれていますが、イライラするのは本当にカルシウムが不足しているからなのでしょうか?イライラとカルシウムの関係、カルシウムの働きと理想的な摂取方法についてまとめました。
カルシウム不足とイライラの関係
体内のカルシウムのほとんどは骨や歯に含まれています。ごくわずかなカルシウムは血液や細胞中に含まれていますが、この血液や細胞中に含まれているカルシウムは、筋肉や脳に信号を送る情報伝達を補助する役割を果たしています。カルシウムが不足すると、筋肉や脳に十分に情報伝達が行われず、神経のバランスが崩れてしまうとの考え方から、「カルシウムが不足するとイライラする」と言われることがあります。
しかし、実際にはカルシウムが不足したからと言って、神経の情報伝達が突然滞ることはありません。カルシウムが不足すると血液や細胞にある微量カルシウムで不足分が補われるのではなく、骨中のカルシウムが溶け出して不足分が補われるからです。
カルシウム摂取不足ではなく病気で血中カルシウムが不足することがある
カルシウムの摂取量が減ってしまうと、骨の中からカルシウムが溶け出し、血中のカルシウム量を補うようになります。そのため、カルシウム摂取が不足しているからと言って、血中のカルシウムが急激に減ることはありません。
しかし、副甲状腺機能低下症やビタミンD欠乏症などの病気になると、血液中に一定のカルシウムを保つことができなくなります。脳や筋肉への情報伝達がスムーズに行われないようになり、イライラしたり、気分が安定しなくなったり、集中することが難しくなったりするのです。つまり、血中カルシウムが不足するとイライラするのは事実ですが、それはカルシウムの摂取量が不足したためではなく、血中カルシウムが不足する病気にかかっているからなのです。
カルシウムはなぜ大切?
血中のカルシウムが不足すると、骨に含まれているカルシウムが溶け出して不足するカルシウムを補います。つまり、骨がもろくなってしまうわけですから、カルシウム不足にならないように適度にカルシウムを摂取する必要があります。その他にも、次の理由からカルシウムはしっかりと摂取しなくてはなりません。
骨粗鬆症になる
カルシウムが不足すると、骨からカルシウムが溶け出します。骨の密度が低くなりますので、骨折しやすい危険な状態が続きます。高齢になると、カルシウムから骨を形成する速度がゆるやかになります。そのため、骨折してもすぐに骨が元通りにならず、治癒までに若いときよりも長い時間がかかってしまいます。骨粗鬆症になると骨が折れやすい状態になりますので、年をとればとるほど折れやすく治りにくいという危険な状況になってしまうのです。
筋肉の収縮にカルシウムは欠かせない
筋肉が収縮する際にカルシウムは欠かせない伝達物質です。自由に動くためにも、細胞内に十分な量のカルシウムが存在していなくてはなりません。
血液凝固作用
血中に含まれているカルシウムは、血液凝固作用を活性化させる働きも示します。出血が適度に止まるためにも、カルシウムの存在は不可欠です。
カルシウムの摂取量目安
カルシウムは体内に存在するミネラルの中でも、もっとも多いミネラルです。体重の1~2%はカルシウムですので、体重が50㎏の人なら500g~1㎏のカルシウムが体内に存在していることになります。しかし、少しでも血中カルシウムが不足すると、骨から不足分のカルシウムが溶け出してしまいますので、常に不足しないように適量摂取する必要があるのです。
カルシウムは1~2歳は1日当たり400~450㎎、3~11歳は1日当たり男子は600~700㎎、女子は550~750㎎摂取すべきとされています。12歳以降は男子は700~1,000㎎、女子は650~800㎎が必要です。妊娠中や授乳中に特にカルシウム摂取量を増やす必要はありませんが、不足しないように栄養バランスに注意する必要はあります。
カルシウムは過剰摂取になる?
不足しないように適度に摂取する必要があるカルシウムですが、大量に摂取することは体に悪い影響はないのでしょうか。
実際のところ、18歳以上の人が1日にカルシウムを2,500㎎以上摂取することは推奨されていません。カルシウムを過剰摂取してしまうと、腎機能不全や血管の石灰化、腎臓結石などの疾病に罹患してしまうことがあります。また、血中のカルシウム濃度が増えすぎると、副甲状腺機能亢進症に罹患することもあります。
もちろん、カルシウムが含まれている食べ物をたくさん食べたからといって、すぐに病気になるわけではありません。しかしながら、極端にカルシウムばかりを摂取するのではなく、不足しないように適度に食べることが大切だと言えるでしょう。
カルシウムが多く含まれている食品
カルシウムは日本人に不足しがちなミネラルです。そのため、過剰な量のサプリメントを摂取しない限り、普通に生活をしていれば、カルシウムが不足することはあっても過剰量になってしまうことはありません。「意識的にカルシウムが含まれた食品を摂取する」程度のスタンスで過ごすことが、適切なカルシウムとの接し方と言えるのです。カルシウムが多く含まれている食品を紹介しますので、1日に1回は意識的に食べるようにしてください。
牛乳
牛乳はカルシウムを豊富に含む食品です。1本(200ml)当たり220㎎ほどのカルシウムが含まれていますので、成人が必要なカルシウム量の3分の1を摂取できます。
チーズ
乳製品にも、カルシウムが多く含まれています。例えばチーズ一切れ(20g)には100~130㎎ものカルシウムが含まれています。手軽におやつとしても食べられますので、カルシウムが不足しがちなメニューのときは、間食にチーズを食べることもおすすめです。
ただし、チーズは塩分が強く、食べ過ぎると生活習慣病の罹患リスクを高めてしまいます。あくまでも1切れ程度を目安に、カルシウムの補助食品的にチーズを食べるようにしてください。
豆腐などの大豆食品
豆類や大豆食品も、カルシウムが豊富に含まれている食材です。例えば豆腐1人分(100g)には、80~90㎎ものカルシウムが含まれています。お醤油をかけすぎないようにすれば、塩分も控えられ、健康的な一品となります。
小松菜
グリーンスムージーの人気で、一気に需要が高まっている小松菜。わずか4分の1束に140~150㎎ものカルシウムが含まれていますので、効率よくカルシウムを摂取できます。おひたしなどにすると塩分過多が気になりますので、バナナやレモンなどの他の野菜や果物と合わせて、スムージーとして摂取することがおすすめです。
ビタミンDと一緒に摂取しよう
カルシウムはビタミンDと一緒に摂取すると、吸収率を高められます。特に骨粗鬆症の疑いがあると注意されている人や、普段の食事からカルシウム不足が気になっている人は、ビタミンDが豊富に含まれている食事と一緒に食べるようにしてください。ビタミンDはキノコ類や乳製品、卵黄などに豊富に含まれています。一緒に料理をして、効率よくカルシウムを摂取していきましょう。