保存料として「ソルビン酸」が添加されている食品はたくさんあります。加工食品の成分表示欄に、ソルビン酸という名前を見つけることも多いでしょう。クリームやジャムなどに使われることが多いソルビン酸。本当に安全な添加物なのか探っていきましょう。
世界的に利用されているソルビン酸
ソルビン酸は、日本だけでなく欧米諸国などのさまざまな国々で、保存料として食品に添加されています。ソルビン酸カルシウムやソルビン酸ナトリウムなどの形で添加されていることが多く、いずれも保存料として安全性が確認されています。
ソルビン酸カルシウムとして添加されることが多い
ソルビン酸そのものは、昇華性が高いために食品に添加してもすぐに消失してしまいます。しかし、ソルビン酸の持つ細菌抑制効果を発揮するためには、ソルビン酸を食品中に長く滞在させる必要があります。
一方、ソルビン酸カルシウムは昇華性が低いだけでなく、水溶性や脂溶性も低いため、食品中に長期にわたって存在することができます。そのため、ソルビン酸を保存料として添加する場合、ソルビン酸ではなく安定性の高いソルビン酸カルシウムとして添加することが一般的です。
ソルビン酸の安全性
ソルビン酸(ソルビン酸カルシウムやソルビン酸ナトリウムなどのソルビン酸塩も含む)は、アメリカ合衆国では一般的に安全性が確認された物質である「GRAS物質」に指定されており、適正な量ならば一般の食品に用いても構わないとされています。
国際連合食糧農業機関と世界保健機構による「FAO/WHO合同食品添加物会議(JECFA)」においても、数回にわたってソルビン酸やソルビン酸塩の安全性が協議され、毒性はないものとして承認されています。また、ヨーロッパにおいても、「欧州食品化学委員会(SFC)」でソルビン酸とソルビン酸塩の安全性が確認され、上限量を定めた上で安心して使用できる添加物であると報告されています。
日本においてもソルビン酸の安全性は確認されている
ソルビン酸の安全性が確認されているのは、諸外国だけではありません。日本においても、ソルビン酸やソルビン酸塩の安全性は確認されています。食品安全基準法の規定に基づいた評価では、充分な炭水化物が存在する状況下では最終的に無害な水と二酸化炭素に分解されると予測されること、発がん性は認められないことが報告されています。
ソルビン酸の使用基準
ソルビン酸やソルビン酸塩は、安心して摂取できる添加物として厚生労働省でも承認されています。しかし、無制限に摂取しても良いというわけではありません。摂取しすぎると健康被害を引き起こすこともあるため、重量当たりの添加上限量が定められているのです。
3.0グラム以下 | チーズ |
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2.0グラム以下 | うに、魚肉練り製品、鯨肉食品、食肉食品 |
1.5グラム以下 | たこくん製品、いかくん製品 |
1.0グラム以下 | 魚介乾製品、たくあん漬け、みそ漬けの漬物、醤油漬け、塩漬け、こうじ漬け、かす漬け、各種漬物、つくだ煮、味噌、あん類、ジャム、ニョッキ、シロップ、キャンデッドチェリー、煮豆、フラワーペースト類 |
0.5グラム以下 | ポタージュスープ以外のスープ類、ケチャップ、干しすもも、たれ、つゆ、酢漬けの漬物 |
0.3グラム以下 | 3倍に希釈する甘酒、乳酸菌飲料を原料とする発酵乳 |
0.2グラム以下 | 果実酒、雑酒 |
0.05グラム以下 | 殺菌したものを除く乳酸菌飲料 |
ソルビン酸の摂取許容量
FAO/WHO合同食品添加物会議の評価などを踏まえ、厚生労働省ではソルビン酸の摂取許容量を2,500mg/kg/日と定めています。例えば、体重50kgの人が1日に125グラムを超えてソルビン酸を摂取することは、健康的なことではないとされています。
平均的なソルビン酸摂取量
ソルビン酸の平均摂取量は、調査によっても数値が大きく異なります。厚生労働省が実施した調査でも、マーケットバスケット調査では1日当たりソルビン酸が6.4mg(ソルビン酸カルシウムなどのソルビン酸塩はソルビン酸として重量を換算)と報告されていますが、生産量調査では1日当たり20.7mgと報告されています。
もちろん、いずれのソルビン酸量も健康に害を与えるほどの摂取量ではありませんので、問題視する必要はありません。また、ソルビン酸は天然の食品に入っていることは少なく、すべてのソルビン酸摂取量のうち90%以上が食品添加物として体内に摂取されます。
海外におけるソルビン酸摂取量
海外においてもソルビン酸摂取量を測るさまざまな調査が実施されていますが、1日当たり20mg台であることが一般的です。健康に害を及ぼすほどのソルビン酸量を摂取することは、容易なことではないと言えるでしょう。
ソルビン酸の過剰摂取は難しい
健康に被害を与えるかもしれないソルビン酸の量は、体重50kgの人なら1日に125グラム以上と計算されます。実際に摂取しているソルビン酸の量の5,000倍以上もの数字ですので、ソルビン酸の摂取で健康に害を与える可能性は低いと言えるでしょう。