子供の成長に必要な栄養素というと、「カルシウム」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。確かに子供は骨も歯も日々成長していきますから、骨組みを構成するカルシウムをしっかりと摂取することは大切です。しかし、近年、子供の成長に必要な栄養素として「ビタミンD」が注目を浴びています。ビタミンDはなぜ子供の成長に欠かせないのか、また、どのように摂取できるのかについてまとめました。
ビタミンDが子供の成長に必要な理由
子供の成長に欠かせないカルシウムですが、吸収率が悪く、なかなか必要な量が摂取できないという問題があります。しかし、ビタミンDにはカルシウムの吸収を促進する働きがありますので、一緒に摂取すると効率よくカルシウムを吸収できるようになるのです。
つまり、カルシウムを摂取したいなら、ビタミンDは忘れてはならない成分です。丈夫な骨や歯を作るためにも、ビタミンDを積極的に摂取していきましょう。
リンの吸収も促進する
ビタミンDには、リンの吸収を促進する働きもあります。リンはカルシウムと同様、骨や歯を作る成分ですので、成長期にある子供には欠かせない栄養素の1つです。リンも吸収率が良い成分ではないため、ビタミンDと一緒に摂取して吸収率を高めることが望ましいです。
また、リンには脳や筋肉、神経などの各組織にも運ばれ、エネルギーを生み出す役割も果たします。ごく微量で体の機能を正常に保つ働きがある成分ですので、しっかりと吸収するためにも、ビタミンDを積極的に摂取しなくてはならないのです。
加工食品を摂りすぎる人はリンの過剰摂取に注意
自然の食品だけを食べているのなら、リンを過剰摂取してしまうことはほぼありません。しかしながら、リンは添加物に多く含まれる成分ですので、添加物を多量に使用した加工食品や保存食品を日常的に食べている人は過剰摂取してしまう可能性があります。
リンを過剰摂取すると、ホルモンバランスが崩れ、のぼせや異常な発汗、ふらつきなどの不快な症状が起こりやすくなります。また、腎臓病を悪化させる恐れもありますので、適度にリンを摂取するためにも、添加物が多く含まれる食品は日常的に食べない方が好ましいでしょう。
ビタミンD欠乏症が増えている
ビタミンDが不足すると、子供の成長に欠かせないカルシウムを効率よく摂取できなくなってしまいます。また、身体の各機能を正常にするためのリンの吸収率も低下してしまいます。
しかし、ビタミンDは「他の栄養素の吸収を高める」という補助的な役割だけを持つ成分ではありません。ビタミンDが不足すると、ビタミンD欠乏症になり、日常生活に支障をきたしてしまうのです。近年、ビタミンD欠乏症と診断される子供が増えています。
ビタミンD欠乏症になるとカルシウムが十分に吸収できないために、骨が発育不良になります。また、背中や脚が湾曲する「くる病」を引き起こすこともあります。子供におけるビタミンD欠乏症の増加は、特に2000年代に入ってから顕著になっていますが、急激に増えている原因として次の2点が考えられます。
充分に日光に当たっていないから
ビタミンDは食べ物からも摂取できるビタミンですが、体内で合成することもできるビタミンです。ビタミンDを体内で合成するためには、紫外線を浴びることが必要になります。
近年、日焼けによる老化や皮膚がんなどの紫外線による害ばかり強調されているため、紫外線に当たることは良くないことだと決めつけ、充分な日光を浴びていない子供が増えています。また、充分な日光を浴びていても、日焼け止めをしっかりと塗っているため、皮膚に直接紫外線が当たっていない子供も少なくありません。極端に紫外線を避けて暮らしていると、ビタミンDが体内で合成できず、ビタミン欠乏症を招いてしまうのです。
母乳育児の増加
厚生労働省が実施した乳幼児栄養調査によりますと、2005年は1ヶ月児も3ヶ月児も母乳育児よりも混合育児の方が多かったのですが、2015年には逆転し、1ヶ月児も3ヶ月児も母乳育児の割合が過半数を超えました。もちろん、母乳育児にもメリットは多いのですが、「ビタミンDが充分に含まれているか」という点だけで見ると、母乳育児は混合育児より劣ります。
現に母乳育児が増えるにつれ、ビタミンD欠乏症の子供が増えています。同様の結果は海外でも見られています。例えばカナダの調査では、くる病の発生率は100,000人に2.9人でしたが、くる病患者のほぼ全員が母乳育児を受けていたことが分かっています。
参考:
厚生労働省「平成27年度乳幼児栄養調査」
厚生労働省「総合医療発信サイト 海外の情報 ビタミンD」
ビタミンDが含まれている食品
ビタミンD欠乏症を防ぐためにも、適度に紫外線に当たることは重要です。しかし、紫外線から合成されるビタミンDの量には限界がありますので、食べ物からもしっかりとビタミンDを摂取することが大切です。
ビタミンDは1日当たり、1~2歳は2.0㎍、3~5歳は2.5㎍、6~7歳は3.0㎍、8~9歳は3.5㎍、10歳以上は4.5~6.0㎍を目安に摂取することが望ましいとされています。ビタミンDが豊富に含まれている食べ物をいくつか紹介します。
魚
ビタミンDは魚類に多く含まれています。例えばしらす干しなら、わずか10グラムで4.5~4.6㎍のビタミンDが摂取できます。もちろん、食べたからといって100%吸収されるわけではありませんから、他の食品からもビタミンDを摂取することは望ましいです。しかし、少量でたくさんのビタミンDが摂取できるという点では、しらす干しは優れた食品と言えるでしょう。
しらす干し以外にも、例えばサケなら100グラム中に20~25㎍のビタミンDが含まれています。子供にとっては、100グラムのサケを1切れまるごと食べることは難しいかもしれません。しかしながら、わずか20グラムほどで一日に必要なビタミンDの最低量を摂取できるのですから、減塩のサケを選び、お弁当や朝食などにも使っていきたいものです。
乾燥キノコ
乾燥したキノコ類、例えば乾燥キクラゲや干しシイタケには、ビタミンDが豊富に含まれています。乾燥キクラゲは2グラムでビタミンDを8~9㎍摂取できますし、干しシイタケも2グラム(小さめの干しシイタケ1枚分)でビタミンDを0.3㎍摂取できます。塩分が多くなりすぎないように注意して、毎日の生活に乾燥キノコを取り入れていきましょう。
卵黄
卵1個分の卵黄に、ビタミンDは約1㎍含まれています。ビタミンDが含まれている食品というのは実はあまり多くなく、魚類か魚介類、キノコ類の一部、そして卵黄くらいしかありません。多様な食品からビタミンDを摂取するためにも、卵黄を食事に加えていきましょう。なお、卵の白身部分にはほとんどビタミンDは含まれていません。そのため、卵黄だけを食べても全卵を食べても、体内に摂取されるビタミンDの量は同じです。
ビタミンDをサプリメントでも摂取しよう
ビタミンDが含まれている食品はあまり多くはありません。また、紫外線を浴びることで体内でビタミンDを合成できますが、合成できる量には限りがありますので、紫外線を浴びてもビタミンD量が不足することもあります。
ビタミンDが充分に取れないときは、サプリメントを活用することをおすすめします。赤ちゃんも服用できるサプリメントもありますので、医師と相談しながら、ビタミンD欠乏症を予防しましょう。