人間が生きていく上で欠かせない栄養素の1つであるタンパク質。最近、その優れた特性に再度注目が集まっています。タンパク質がなぜ重要なのか、特に子供に重要な理由、タンパク質を効率よく摂取できる食品についてまとめました。
タンパク質とは
人の体は約60%は水分でできていますが、残りの約半分はタンパク質でできています。つまり、水を除けば、タンパク質は、人間の体を構成する物質の中でもっとも多い成分なのです。タンパク質は、20種類のアミノ酸がさまざまな形で結合してできています。
アミノ酸とは
人の体を構成するのに欠かせないタンパク質。タンパク質を構成するのに欠かせないアミノ酸。このことからも、アミノ酸は、生きていく上で不可欠の物質だということが分かるのではないでしょうか。
アミノ酸の種類は20あります。そのうち11種類は体内で作り出すことができますが、残りの9種類は体内で合成できないため食べ物から摂取します。この9種類を「必須アミノ酸」と呼びますが、充分に食事から摂取できていないときは、健康を損なうことにもなるのです。
タンパク質は体を構成する栄養素
臓器や髪、爪、骨、筋肉、そして血液など、すべての細胞はタンパク質から作られています。また、身体を整えるホルモンも、代謝に欠かせない酵素も、いずれもタンパク質から作られています。
つまり、タンパク質が充分に摂取されていないと、髪が抜けやすくなったり、筋肉や骨が脆くなったりといった問題が生じるだけでなく、代謝などの生命維持に欠かせない活動がスムーズに行われなくなるのです。体を維持し、生命を維持していくためには、タンパク質は不可欠な成分だと言えるでしょう。
タンパク質が不足するとどうなる?
タンパク質は、体重1㎏あたり1.0~1.2g摂取することが推奨されています。例えば体重が50㎏の人なら、1日に50~60gのタンパク質を摂取するように心がけましょう。
タンパク質の摂取量が不足すると、身体を構成する臓器や血液、必要なホルモンなどが充分に作られなくなるため、身体に不調が起こりやすくなります。また、代謝がスムーズに行われませんので、身体が冷えやすくなったり、疲れやすくなったりします。
タンパク質不足は分かりにくい
ビタミン不足は、比較的気づきやすいという特徴があります。例えばビタミンAが不足すると、視力が低下したり、肌が乾燥しやすくなります。また、ビタミンB1が不足すると、食欲不振や消化不良などが見られるようになります。
しかし、タンパク質は、摂取することで明らかな効果がある栄養素ではありませんので、不足しても気づきにくいという側面があります。時間をかけて臓器や血液、骨、筋肉が蝕まれ、身体の機能が低下していくのです。
タンパク質摂取を意識してもタンパク質不足になることがある
ちゃんとタンパク質を摂取しようと食事を意識していても、タンパク質不足になってしまうことがあります。例えば、体調不良や高齢のために栄養吸収機能が衰えてくると、今までと同じような食事ではタンパク質不足になることがあります。また、ダイエットなどで食事の量を減らしたとき、嗜好の変化で肉を好まないようになったときなど、いつの間にかタンパク質不足になることがあるのです。
動物性タンパク質と植物性タンパク質の違い
タンパク質には、動物性由来のタンパク質と植物性由来のタンパク質があります。動物性由来のタンパク質は、肉や魚、卵、牛乳、乳製品などに含まれ、植物性由来のタンパク質は大豆などの豆類や米などの穀類、野菜に多く含まれています。
食べ物によってアミノ酸の構成が異なる
タンパク質さえ摂取すれば良いというわけではありません。食品によって含まれているタンパク質の種類が異なりますし、タンパク質の種類が異なると、タンパク質を構成するアミノ酸の種類や割合が異なるのです。
アミノ酸には体内で合成できない必須アミノ酸も、すべてのタンパク質に含まれているわけではありません。つまり、偏った食品からタンパク質を摂取していると、必須アミノ酸が不足することにもなりかねないのです。例えば精白したお米には、リジンという必須アミノ酸の量が不足しています。そのため、1日に必要なアミノ酸をすべて精白米から補おうとすると、必須アミノ酸の摂取量が減ってしまい、身体の機能が低下してしまいます。
必須アミノ酸のバランスが良い動物性タンパク質
動物性タンパク質は、植物性タンパク質と比較すると必須アミノ酸のバランスが優れていることが多いです。乳製品や肉などから得られる動物性タンパク質には、必須アミノ酸9つがすべて配合され、しっかり摂取するとタンパク質不足になることがありません。
しかし、動物性タンパク質が多く含まれる食べ物は、脂肪も多く含まれていることが多いため、動物性タンパク質を大量に摂取しようとすると、脂肪過多になってしまうことがあるというデメリットがあります。何かの食品に偏るのではなく、さまざまな食品からタンパク質を摂取していきたいですね。
タンパク質を摂りすぎるとどうなる?
身体を維持するために不可欠なタンパク質ですが、摂取量が多すぎるのも問題があります。タンパク質を過剰摂取すると、使わなかったタンパク質は分解されて窒素になります。窒素が体外に排出されるためには、肝臓と腎臓で不要な窒素を尿にする必要がありますが、窒素の量が過剰なときは大量の尿を生成しなくてはいけなくなり、肝臓と腎臓に大きな負担がかかってしまうのです。
何事も極端なことは体のためにはなりません。タンパク質も、適度に摂取するようにしてください。
タンパク質が豊富に含まれている食品
必須アミノ酸がバランスよく含まれている食品を紹介します。育ち盛りのお子さまには、特に意識して食べさせるようにしてください。
牛肉(赤身)
赤身の牛肉は、約20%がタンパク質で構成されています。タンパク質の割合が高く、比較的脂肪量が少ないですので、食が細い子供でも効率よくタンパク質を摂取できます。
鶏卵
卵黄の16%程度、卵白の11%程度は、タンパク質で構成されています。鶏卵は調理にも使いやすい素材ですので、子供の食事にも簡単に取り入れることができますね。
牛乳
牛乳は必須アミノ酸をバランスよく含む食品ですので、子供にもおすすめです。タンパク質だけでなく、カルシウムやビタミンA、ビタミンB1なども豊富に含まれているという特徴もあります。
しかし、タンパク質の量は、牛乳の重量のわずか3%だけです。1日のすべてのタンパク質を牛乳から摂取しようとするのではなく、補助的に牛乳を食生活に加えるようにしてください。
バランスのとれた食事が大切
タンパク質は、確かに体を作る基礎でもあります。しかし、過剰に摂取すると腎臓・肝臓に負担をかけてしまいますし、タンパク質と一緒に脂肪分を過剰摂取する可能性もあります。タンパク質の摂取を意識するのは大切なことですが、豊富な食材からバランスよく栄養素を摂取することも大切なことだと言えるでしょう。