スーパーなどの肉売り場で“成型肉”と表記された肉を見かけることがあります。一見、通常の肉とは変わりないように見えるものもありますが、何が通常の肉とは異なるのでしょうか。成型肉の定義や健康への影響についても探っていきましょう。
成型肉とは
成型肉とは、その名の通り形を作った肉です。農林水産省の資料などや販売店によっては“成形肉”と表記されることもあります。一般的には、肉を加工する過程で生じる肉の断片や内臓などを結着剤を使って固め、通常の肉に見えるように成型したものを指しています。
サイコロステーキは成型肉?
食べやすいように一口大に切って、サイコロステーキ用の肉として売られているものもあります。しかし、サイコロステーキ用の肉として売られている肉の中には、成型肉でできたものが多いのです。
やわらか加工や霜降り加工は成型肉
外食チェーン店などに行くと、「やわらか加工」や「霜降り加工」と記載された肉料理や肉が売られていることがあります。やわらかく加工された肉や適度に脂身を注入された肉はいずれも肉自体に特別な加工を施した肉ですので、ほぼ間違いなく成型肉と言えるでしょう。
国内外での表示の違い
日本では国産牛肉や国内で加工された肉だけでなく、海外の牛肉や海外で加工された肉類も販売されています。成型肉に関する表示は、加工された場所によって異なります。
加工した国や原産地の表示は義務
国外で加工された肉については、製造された国を“原産国名”として表示しなくてはいけません。例えばオーストラリア産の牛肉をアメリカで加工して日本国内で販売するときは、加工肉の原産国としてアメリカを商品ラベルに表示しなくてはならないのです。
一方、外国から輸入した肉を日本で加工するときは、原産国として輸入元国名を表示しなくてはいけません。例えばオーストラリアの牛肉を日本に輸入して加工してから販売するときは、加工肉の原産国としてオーストラリアを商品ラベルに表示し、加工肉であることも合わせて表示する必要があります。
成型肉の表示義務について
食肉販売事業者や食肉の卸業者は、成型肉を販売するときは「成形肉」や「加工肉」、「脂肪注入肉」と表示しなくてはいけません。しかし、外食店で成型肉を扱うときは表示の義務は定められておらず、かならずしも成形肉であることが分かる表示をしなくてはいけないという決まりはありません。
しかし、何も表示しないことや成型肉のサイコロステーキを単に「サイコロステーキ」とだけ表示することは、加工していない肉をサイコロ状に切るという加工をした肉という風に捉えられ、優良誤認(実際よりも良い商品だという誤解)を生む恐れがあります。消費者に優良誤認を与える行為は景品表示法第4条第1項第1号に該当する行為は違法行為ですので、処罰の対象になることもあるでしょう。
また、脂肪注入によってやわらかくした肉を単に「やわらか肉」と表示することも、通常よりもやわらかい肉であって加工によってやわらかくなった肉ではないと消費者に思わせる可能性があるため、景品表示法に抵触します。販売業者や外食店舗側には、「やわらか肉(加工肉)」や「やわらか肉(脂肪注入肉)」と誤解を生まないような表示が求められるでしょう。
成型肉は危険?何に注意をすべきか
成型肉自体は食品衛生上の基準を守って加工された加工食品です。しかし、絶対に安全かというとそうでもないのです。特に次の2点には注意が必要です。
食品アレルギー
成型・加工するときに、小麦粉や卵、乳製品、ゼラチンといった食品アレルギーを引き起こす成分が使われることがあります。これらの食品アレルギーを持つ人が「牛肉にはアレルギーがないから安心」と思って成型肉を食べると、アレルギー症状が出てしまうこともあるでしょう。かならず成型肉かどうか確認し、成分表示欄もチェックするようにしてください。
特に安定剤として使用されることが多いカゼインナトリウムは、乳製品由来の添加物です。乳あるいは乳製品にアレルギー症状を発症する人は、注意して避けるようにしましょう。
食中毒
O157などの食中毒を引き起こす菌は、通常、肉内部ではなく肉表面に存在します。しかし、肉の表面も内部もすべてまとめて成形される成型肉には、肉内部にO157が混入しやすくなります。そのため、内部までしっかりと火が通るように調理しないと、食中毒を引き起こすこともあるのです。
成型肉の価格の安さには理由がある
成型肉は、通常の肉よりも格段に安い価格で売られていることが多いです。それは、肉の加工段階で捨てる部分や食肉としては味に問題がある内臓部などを混ぜて、“肉”の状態を作っているからに他なりません。
もちろん、安いからといってかならずしも危険なわけではありません。しかし、成型肉が食中毒や食品アレルギーを引き起こすことがないわけでもありません。成型肉を食するときは、かならず添加物や調理法に気をつけるようにしてください。
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