「砂糖」と言う言葉で検索すると、「精神を蝕む」「中毒性があり、百害あって一利なし」等、砂糖の悪影響について語るページが多数ヒットします。砂糖は本当に身体に有害な物質なのでしょうか。また、砂糖を摂りすぎると、身体にどのような影響があるのかについても探っていきましょう。
上白糖に含まれるミネラル分はほぼ0!
一般的に料理に利用される上白糖。砂糖の中でももっとも精製度が高く、甘くて溶けやすい使いやすい調味料の1つです。文部科学省が公開している食品成分データベースによりますと、上白糖100グラムの中に、ビタミン類は0グラム、食物繊維は0グラム、銅は0.01ミリグラム、ナトリウムとカルシウムがそれぞれ1ミリグラム、カリウムが2ミリグラムと、ほとんどと言ってよいほどミネラル分やビタミンが含まれていないことが分かります。
つまり、上白糖だけをエネルギー源として摂取していると、カロリーは足りていても栄養素を摂ることができませんので栄養不足に陥ってしまうということが分かります。当然のことですが、砂糖だけではなく何か別の素材から栄養をしっかりと取らなくてはいけないということが、成分分析からも明らかだと言えるでしょう。
参考:文部科学省・食品成分データベース / 文部科学省・上白糖の食品成分
分解するためには他の栄養素が必要
上白糖にはビタミンやミネラルはほぼ含まれていませんので、体内に吸収され、分解されるときには、他の食品で摂取したビタミンやミネラルを消耗しなくてはなりません。そのため、上白糖を食べると他の栄養素が欠乏すると表現されることもあるのです。上白糖を多めに摂取するときはビタミンやミネラルを充分に摂取している必要がある、とも表現できるでしょう。
また、上白糖を摂取すると、他の栄養素が入っていない分、すぐに糖分が吸収される状態になります。血糖値が急激に上昇し、膵臓から糖を分解するインシュリンが分泌されることにもなりますから、血糖値の急激な上昇を避けたい糖尿病の人には適さない食材と言えるのです。
低血糖症を招くことも
食事を摂ると、糖分解に必要なインシュリンが膵臓から分泌され、血液中の糖濃度はほぼ一定に保たれます。ですが、インシュリン分泌が活発すぎたり、必要のないときにインシュリンが分泌されたりすると、血液は常に糖分が不足する状態に陥ってしまいます。
低血糖症とは、このように過度に血糖値が下がってしまう症状を指しています。高血圧のように特定の数値以上もしくは以下なら病気であると判断するものではありませんので、単に血糖の数値を計るのではなく、通常5時間程度の血糖値の変化を測定することで症状があるかどうかを判断していくのです。
低血糖症になると常に身体は糖分が不足しているように感じますので、頭がぼんやりして思考力が落ちたり、身体がだるくてやる気が起きなかったり、無気力状態がひどくなってうつ症状が見られたりするようになります。「うつ病では?」とか「やる気がないだけでは?」などと思われていた人が、時間をかけて低血糖症の検査を行うことで、実は低血糖症であったことが判明するということも少なくありません。
低血糖症で見られる症状はうつ状態だけではない
低血糖症になるとやる気のなさやうつ病様の状態などが見られるようになりますので、全般的に行動力の低下が顕著になっていきます。ですが、低血糖症の人に見られる症状は、このような一見大人しい症状だけではありません。思考力が低下することで、複雑なことを考えることが難しくなり、論理的に考えるよりも感情的になってしまう人もいます。思考力の低下や感情的な衝動が高まった状態になると、ちょっとしたことですぐキレてしまうことにもなります。そのため、「砂糖をたくさん摂取するとキレやすくなる」と言われることがあるのです。
もちろん、すぐにキレてしまうのは、その人本来が持っている性質や家庭環境、家族や周囲の人との関わり方にも問題があると言えます。ですが、低血糖症のために思考力が落ちてキレてしまうということも少なからずありますので、すぐにイライラする場合や複雑な事柄を考えることが面倒になる場合は、食生活を見直すことも大切なのではないでしょうか。
砂糖との理想的な関わり方
食生活で大切なことはバランスです。身体に良いと言われる成分だけを摂るのではなく、必要な成分をまんべんなく摂取することが健康への近道です。ココアが良いと言えばココアばかりを飲む、バナナが良いと言われればバナナばかりを食べるというのは、本来は健康的な行動ではありません。ビタミンやミネラル、タンパク質、脂質、炭水化物などを、バランスよく多くの食材から摂取することが大切なのです。
ミネラルやビタミンがほとんど含まれていない上白糖は、健康を考えるならオススメすべき成分ではありません。ですが、上白糖ばかり食べるということは通常の生活ではあり得ません。上白糖を過剰摂取しないように注意することはできますが、「絶対に上白糖が入ったものは口にしない」「糖分は果物か黒砂糖、希少糖から摂取する」などと極端に避けるべき食材でもないと言えるでしょう。
上白糖以外の砂糖で甘み補給
大人は多くの食べ物を食べることができますが、幼児はそうではありません。消化できる量も限られていますし、食べられる食材も大人と比べると限られています。小さな子供がいるご家庭では、食べられる量が少ない分、なるべく良い食材を使いたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
そのようなご家庭では、甘みを簡単に摂取できる上白糖ではなく、ミネラル豊富な黒砂糖などを使うということもできるでしょう。黒砂糖は100グラム当たりにカリウム1100ミリグラム、カルシウム240ミリグラムも含まれているだけでなく、銅や亜鉛、鉄分、ヨウ素などのミネラルも豊富に入っていますので、ミネラル摂取を目的とするならば上白糖よりも格段に優れていると言うことができます。
レシピの工夫や旬の果物・野菜を活用することも
また、おやつをなるべく手作りして砂糖の摂取量を減らすことができます。市販のお菓子を食べるときには含まれている砂糖の量はあまり気にならないかもしれませんが、クッキーやケーキなどの洋菓子をレシピ通りに作ると、あまりの砂糖の多さに驚くこともあります。手作りしても大量の砂糖を投入するなら市販のお菓子を食べるのと大きな違いは得られませんので、レシピ通りに作るのではなく、バターや砂糖を適度に減らしてアレンジするようにしてください。
その他にも、旬のフルーツや野菜を積極的に食べることで自然の甘さに親しんだりすることもできます。旬のフルーツは旬以外の時期に食べるものよりも、甘さが強く、味も濃くなっています。そのため、少量を食べるだけでも大きな満足を得られますし、ヨーグルトに入れる等、トッピング的に使用してもおいしく食べられます。年中、いつでも安易に手に入る上白糖だけで糖分を補給するのではなく、旬のフルーツやさつまいも、かぼちゃなどの野菜を利用して、季節ならではの甘みを楽しむことも子どもたちに教えていきたいですね。
適度な砂糖でキレにくい子供に
適度に砂糖を使うことは、美味しさだけでなく満足感も得られますので子供の食生活を豊かにします。ですが、過剰な甘さに慣れてしまうと、どんどん強い甘さを欲するようになり、知らず知らずに摂取する砂糖の量が増えてしまいます。特に上白糖はミネラル分がごくわずかしか入っていませんので、摂取量が増えても身体にとってプラスになることはありません。甘みを控えて食事を楽しむことや甘みをさまざまなフルーツや野菜から摂取すること、そして甘さの補給が上白糖に偏らないようにも注意していきたいですね。