豆腐やお菓子などのパッケージに書かれている「遺伝子組み換え作物は使用しておりません」の文字。わざわざ使用していないことが記載されていると、“遺伝子組み換え”に対して特に危機感を持っていない人でも、「遺伝子組み換えって危ないのだろうな」と考えてしまいますよね。遺伝子組み換え作物とは何なのか、また、遺伝子組み換え作物はなぜ危険なのかについてまとめました。
古典的な品種改良方法“掛け合わせ”
より良い特徴がある品種を作るため、古来、“掛け合わせ”による品種改良が行われて来ました。例えば甘みが強いイチゴと赤色が鮮やかなイチゴを掛け合わせ、甘くて鮮やかな赤色のイチゴを作る試みが実施されることもあります。
時間も手間もかかることが難点
しかし、甘いイチゴと赤いイチゴを掛け合わせたところで、甘くて赤いイチゴができるとは限りません。甘いイチゴの白っぽい色と赤いイチゴの酸っぱさが結びついて、酸っぱくて白っぽいイチゴができてしまうこともあるのです。何度も何度も条件を変えて掛け合わせを実施し、ようやく理想通りの甘くて赤いイチゴができることもありますし、どんなに条件を変えて掛け合わせを実施しても理想通りの甘くて赤いイチゴができないこともあるのです。
簡単に長所だけを抽出できる“遺伝子組み換え”
一方、“遺伝子組み換え”による品種改良は、何度も試行錯誤する必要はありません。甘みが強いイチゴの甘さを出す遺伝子と赤色が鮮やかなイチゴの赤さを出す遺伝子を抽出し、両方の遺伝子を持つイチゴを栽培すれば完成です。理想と異なるイチゴができることもありませんし、何度も栽培を繰り返す手間も不要です。
遺伝子組み換え技術が使われることが多い作物・食品
遺伝子組み換え技術を使われることが多い作物としては、次のものを挙げることができます。また、作物以外にも、遺伝子組み換え技術を使って食品添加物が作られることもあります。
遺伝子組み換え技術を用いることが多い作物・食品添加物 | 遺伝子組み換えによって得られた特徴 |
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大豆 |
・特定の除草剤を使用しても枯れない ・オレイン酸などの好ましい成分を多く含む |
じゃがいも |
・害虫がつきにくい ・ウイルス関連の病気に強い |
菜種 | ・特定の除草剤を使用しても枯れない |
とうもろこし | ・害虫がつきにくい ・特定の除草剤を使用しても枯れない |
綿花 | ・害虫がつきにくい ・特定の除草剤を使用しても枯れない |
α-アミラーゼ | ・生産性の向上 |
グルコアミラーゼ | ・生産性の向上 |
遺伝子組み換えの危険性
好ましい作物や食品添加物を容易に作ることができる“遺伝子組み換え技術”。限られた土地や資金、時間の中で効率よく食品を生産するためには、理想的な技術だとも言えるでしょう。しかし、近年、遺伝子組み換え技術を用いることは、決してメリットばかりではないことが明らかになってきました。
混入する遺伝子によってはアレルギーが引き起こる
過去に、大豆にブラジルナッツの遺伝子を組み込んだ食品の開発が検討されたのですが、この食品がアレルギーを引き起こす可能性があることが判明し、開発が中止になったことがあります。しかし、これは遺伝子組み換え技術によってアレルギーが引き起こされたのではなく、元々ブラジルナッツによってアレルギー症状が引き起こされる人がいることが原因であることが分かっています。
このことから、例え別の食品として栽培されたとしても、組み込まれた遺伝子の持つアレルギー成分も引き継ぎますので、食品化するときは注意が必要だと言えるでしょう。
免疫力の低下?
1998年にイギリスで「遺伝子組み換えによって作られたじゃがいもを食べたラットに、免疫力の低下が見られた」という研究内容が報告されました。このじゃがいもはタチナタマメやマツユキソウに含まれるレクチンを産生する遺伝子が組み込まれたものでしたが、レクチンが免疫細胞に対して毒性を示すことから、結果的にじゃがいもを食べたラットの免疫力が低下したと考えられます。
このことから、遺伝子組み換えによって組み込む遺伝子は、毒性を引き起こさないものを選択すべきだということが言えます。なお、研究自体にも手法や経過観察方法に問題があったということが分かっておりますので、結果だけを見て遺伝子組み換え技術の是非を判断することは不適切だと言えるでしょう。
遺伝子組み換え食品を避ける方法はある?
遺伝子組み換え技術自体に問題があるわけではありませんが、組み換えに使われる成分や食品によっては問題が起こることがあるのは事実です。とはいっても、遺伝子組み換えによって組み込まれた成分や元の食品をすべて把握することは難しいですよね?日本では、遺伝子組み換え作物が使われた食品には遺伝子組み換え作物であることを表示することが義務付けられていますので、遺伝子組み換え食品が気になる人は、かならず食品ラベルをチェックするようにしてください。
自分の健康は自分で守ろう
自分の健康を守ることができるのは自分だけです。遺伝子組み換え食品に不安を感じる人は、かならず食品ラベルを細かく確認して下さいね。