頻繁に耳にする「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」。いずれも「脂肪」という文字が入った言葉ですので、なんとなく身体に悪そうなイメージを持っている人も多いでしょう。しかし、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は必ずしも身体に良くないものではありません。飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とは何なのか、コレステロールとどのような関係があるのかについて解説します。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
脂肪酸とは、脂質を作る成分の1つです。構造内に炭素の二重結合や三重結合を含まない脂肪酸を「飽和脂肪酸」と呼び、炭素の二重結合や三重結合を1つ以上含むものを「不飽和脂肪酸」と呼びます。尚、二重結合が1つだけ含む不飽和脂肪酸を「一価不飽和脂肪酸」、二重結合を複数含む不飽和脂肪酸を「多価不飽和脂肪酸」と分けることもあります。
飽和脂肪酸の性質
飽和脂肪酸には炭素の二重結合がありませんので、構造上安定しており、酸化されにくいという特徴があります。また、常温では固体であることが多いことも、飽和脂肪酸の特徴と言えます。
飽和脂肪酸を多く含むもの
飽和脂肪酸には、ラウリン酸やステアリン酸、パルチミン酸などの種類があります。飽和脂肪酸を豊富に含む食品としては、ココナッツオイルやバター、ラード、パームオイルを挙げることができます。
不飽和脂肪酸の性質
不飽和脂肪酸には炭素の二重結合がありますので、構造上不安定なことが多く、酸化されやすいという特徴があります。また、飽和脂肪酸とは異なり、常温では液体であることが多いことも不飽和脂肪酸の特徴です。
不飽和脂肪酸を多く含むもの
不飽和脂肪酸には、リノール酸やα-リノレン酸、オレイン酸、アラキドン酸などの種類があります。また、青魚に含まれることで知られるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)も不飽和脂肪酸の一種です。不飽和脂肪酸を豊富に含む食品としては、オリーブオイルや菜種油、ベニバナ油、ピーナッツオイル、コーンオイル、グレープシードオイル、えごま油、アマニオイル、青魚を挙げることができます。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の健康への影響
化学的構造だけでなく多く含まれる食材も異なる飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸。当然のことながら、健康への影響も異なります。
飽和脂肪酸は摂りすぎに注意!
安定した構造の飽和脂肪酸。安定しすぎているために、一度体内に入ると代謝されにくいというデメリットもあります。そのため、多く摂取しすぎると肥満や糖尿病などの生活習慣病に罹患するリスクを高めてしまいます。
では、飽和脂肪酸は摂取しない方が良いのかというと、そうでもありません。飽和脂肪酸の摂取量が少なすぎても、生活習慣病に罹患するリスクを高めてしまうのです。とはいえ、現代の食事は脂肪分が多いことが多く、少しでも油断すると飽和脂肪酸を過剰摂取してしまいますので、脂肪分を断った食事をしている人でない限り、「飽和脂肪酸が不足するかも…」と不安になる必要はまずありません。
不飽和脂肪酸は積極的に摂取したいが…
一方、不安定な構造の不飽和脂肪酸。人間の体内で合成できない必須脂肪酸も多く含まれていますので、積極的に摂取することが望まれます。しかし、摂取しすぎるとアレルギー反応を生むこともありますので、豊富な食材から適度に摂取するようにしたいものです。
尚、不飽和脂肪酸は酸化しやすいため、すぐに劣化してしまうという特徴もあります。日光が当たる場所で保管したり、開封後長期間放置しておいたりすることは、品質を劣化させる原因となりますので、暗く低温の場所で保管し、開封後は早めに使用するようにしましょう。
トランス脂肪酸とコレステロール
不飽和脂肪酸の中でも、二重結合の炭素の同じ方向に水素ついているものを「シス脂肪酸」、二重結合の周りに水素が対角線上に配置されているものを「トランス脂肪酸」と呼んで区別しています。自然界のほとんどの不飽和脂肪酸はシス脂肪酸なのですが、一部の脂肪酸はトランス脂肪酸として存在します。また、人工的に生成される油脂中の不飽和脂肪酸には、トランス脂肪酸が自然界の油脂よりも多く含まれます。
トランス脂肪酸は極力避けるべき脂肪酸
先程も述べましたように、不飽和脂肪酸自体は身体に良い脂肪酸です。しかし、トランス脂肪酸は、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やし、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やすという特性がありますので、極力避けるべき脂肪酸です。トランス脂肪酸は人工的に生成される油脂(マーガリンなど)に含まれることが多いですので、コレステロール値が気になる人は積極的に避けることが望ましいです。
トランス脂肪酸に注意しよう!
不飽和脂肪酸は身体に良い特質がありますが、不飽和脂肪酸の中でもトランス脂肪酸は血液中の悪玉コレステロールを増やしてしまう決して良いとは言えない成分です。血液中の悪玉コレステロール値が高くなると、生活習慣病のリスクも高まりますので、トランス脂肪酸が含まれている食品には注意が必要だと言えるでしょう。
参考サイト: