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微生物学が専門の医学博士が説明する腸内細菌の重要性

 腸内細菌は、腸管感染症、炎症性腸疾患、大腸がん、肥満、アレルギー疾患などに関与しています。また、わたしたちが利用することのできない炭水化物に対する利用能に多様性があり、ヒトのエネルギーバランスの調節因子としても作用しています。

 特に肥満患者と健常人の腸内フローラの構成には大きな違いがあり、肥満患者ではFirmicutes(ファーミキューテス)というグループが増加し、Bacteroidetes(バクテロイデーテス)が減少しています。そして、増加したFirmicutesは肝がんを併発させるといわれています。

腸内細菌によるバリア効果

 腸管内常在菌にとってヒトの腸管に長く定着するには腸管粘液層に特異的に付着する能力が必要になってきます。

 ヒト腸管粘液層は腸ムチンを主成分に構成されています。水分子を多く含む構造の粘性タンパク質であるムチンは、非常に多くの糖と結合しており、細菌やウイルスの菌体分子を認識・結合して、病原因子を排除する生体防御機構の一役を担っています。

 大腸において粘膜に存在する杯細胞が産生、分泌する粘液の主成分でもあり、腸粘膜を覆い保護しています。これが不足すると各種腸疾患の発症につながります。

 杯細胞はムチンの産生に特化した細胞であり、小胞体で糖が結合し、完成形に至ります。その過程で障害が生じると不良品ムチン前駆体が蓄積し、ムチンの産生能が低下します。つまり杯細胞に対してムチンの産生効率を阻害せず、促進することが重要です。

腸内細菌叢が利用する食物繊維の役割

 杯細胞でのムチン産生を促進するものとして、不溶性食物繊維が知られています。不溶性食物繊維とはセルロースやリグリンなどを指し、根菜類やキノコ類に含まれる成分であり、これらの摂取が分泌量に影響を与えるという報告もあります。

 また食物繊維は腸管粘膜に対する作用だけではなく、腸内細菌のエネルギー源でもあります。良好な腸内環境を保つためにも、様々な食品からの食物繊維の摂取を意識してみましょう。

乳児における腸内細菌叢の悪化と疾患

 腸内細菌叢の発達を考える上で、最も大切なのは保有する菌種に多様性があることです。つまり、常在菌の菌種が豊富であることです。

 特に乳児期においては腸管での生体防御機能が未熟であるため、微生物感染に起因する疾患を予防するためには、抗生物質を産生する微生物や有機酸を代謝する菌株が定着している必要があります。

 乳児の腸内細菌叢は母親に由来し、特定の保健機能を有するプロバイオティクス製品を利用することで定着を期待することも有効です。

 乳児の微生物感染症というとウイルスや大腸菌による嘔吐や下痢を予測しますが、乳児のしつこい夜泣きも微生物が原因であると考えられています。

 赤ちゃんは言葉を発することができないので、主訴を聞いた上での原因の断定ができません。そこで夜泣きの可能性として挙げられるものに、まず痛みに対するアピールがあります。

 痛みを生じるものには乳児疝痛や副鼻腔炎があり、微生物の感染に起因します。乳児疝痛は赤ちゃんの胃腸に感じる激しい痛みのことです。乳児疝痛は夜泣きの原因であると言われており、26%の赤ちゃんが乳児疝痛を感じていると考えられています。

 乳児疝痛を有する乳児は健康児に比べて腸管に生息するラクトバシラスの数が少ないことが確認されています。つまり、乳児疝痛による腹痛は生後から2年間の腸内フローラの定着の過程で、常在菌と有用菌よりも大腸菌のような病原菌の腸管への刺激が優位な状態が原因です。

腸内細菌叢の生理活性が大切

 乳児の腸内フローラの構成にロイテリンのようなバクテリオシンを産生し、有機酸の代謝能と耐酸・定着能が高い菌株を単一または複数の商品で加えることが大切です。安定した定着には1回だけ1日だけの摂取では不十分です。体調の変化を観察ながら長期での摂取を心がけましょう。

著者情報

ママモル編集部

子供の健康を守る米国のサイト『Safbaby』が運営するウェブマガジン『ママモル』の編集部です。

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