文:ママモル編集者 teatree8
わたしたち日本人にとって身近な「みそ」が、近年世界的な人気となっています。「Miso」として海外への輸出量も増えており、2014年には47か国へ出荷しています。さて、このみそは、室町時代より重宝されてきた伝統食でもあります。どんな歴史や栄養があり、どんな働きをしているかを確認し、子どもたちにそのおいしさを伝えていきましょう。
みその種類
原料で区分されるみそ
みそのおもな原料は大豆です。大豆に各種の麹菌(こうじきん)を加えて、みそづくりをしています。米麹なら「米みそ」、麦麹は「麦みそ」、大豆のみを原料とするのが「豆みそ」となります。この3種類のどれかをミックスしているのが「調合みそ」ですが、一般的には米麹を混ぜた米みそが家庭に普及しています。
麦みそは、大豆に大麦やはだか麦を発酵させて熟成したもので、おもに九州地方で作られており、鹿児島県の「薩摩みそ」は、全国的にも販売されています。
また、愛知県で人気の八丁みそは、豆みそで大豆のみを発酵させ熟成しています。おもに東海地方で親しまれ、みそカツや、みそおでん、みそ煮込みうどんとして地域の特産品としても知られています。おでんにみそだれをつけて食べたり、カツのソースにみそを混ぜたりは子どもたちにも好まれますのでおすすめです。
このほか、うまみ成分のアミノ酸が豊富なみそは、各地域の名産として人気で、岐阜県、長野県の朴葉みそや、新潟県の南蛮みそなど、各地域の郷土料理としても知られています。また、札幌ラーメンや信州ラーメンもみそラーメンとして知られています。
味や色、産地で区分されるみそ
原料の麹菌によって米みそ・麦みそ・豆みそと分かれるみそですが、味により甘みそ・甘口みそ・辛みそ、さらに色分けで白みそ、淡色みそ、赤みそとも呼ばれています。また、産地により西京みそ、府中みそ、八丁みそなどとさまざまな呼び方もあります。
実は、多様な呼び名があるみそ。原料や味、色、産地によって区分されているのです。
国内で生産のほぼ8割を占める米みその分類については次のようになっています。
米みその区分について
米みそ
甘…白(白みそ・西京みそ・府中みそ・讃岐みそ)赤(江戸みそ)
甘口…淡色(相白みそ)赤(御膳みそ)
辛…淡色(信州みそ)赤(仙台みそ)
歴史とともに育まれてきたみそ
みそ汁を一杯飲めば、三里歩いても疲れないほどの力がつくという意味の「みそ汁一杯は三里の力」ということわざや、「みそ汁は医者いらず」という言葉もあります。そのほかにもみそを使った言葉は数知れず。また、埼玉県深谷市の「重忠みそ」は、鎌倉時代の武将畠山重忠公にちなみ、名づけられたという由来もあります。
鎌倉時代の食事は、1汁1食を基本としていたとされ、発酵食品のみそは重要な栄養源となっていました。日本の伝統食「みそ」は、その長い歴史とともに、わたしたちの各地域の食卓で育まれてきました。
また、今日まで代表的な日本食として親しまれているみそ汁は、世界でも「Miso Soup」として外国の健康志向の強い人からも好まれています。その理由として栄養豊富で発酵食品であるということもあり、長い間の日本食ブームで外国の人にも受け入れられています。
みその栄養成分
みその原料の大豆は、タンパク質の含有率が多く、良質なタンパク質が豊富なので「畑の肉」と言われるほどです。また、タンパク質のほかにもビタミン、ミネラル、生命維持をするうえで大切な必須アミノ酸をバランスよく含んでいます。成長期の子どもにとって大切な栄養です。米を主食としているわたしたちに不足しがちな、リジン・スレオニンなどの必須アミノ酸を補ってくれます。
また、みそは防腐作用もあり、魚や肉などみそづけにも使われる発酵食品。乳酸菌などの微生物の働きにより、腸内環境の改善に役立ったり、発酵の過程で栄養価も高くなり吸収率を高めたりします。
みそを毎日取り入れることで、優れた栄養を摂取してきましょう。
ネギを刻んだものにみそを入れて、熱湯を注いだだけでできるネギみそは民間療法として、かぜをひいたときなどに飲まれています。ネギみそは、砂糖やショウガを加えるなど、各地域でそれぞれの味が親しまれており、子どもたちに、家庭の味、おふくろの味として伝えていける簡単な伝統食でもあります。
このほか、子どもたちが食する栄養価の高いレシピとしては、さばのみそ煮、豚汁、旬の野菜を入れたみそ汁、田楽などたくさん。食卓で喜ばれるみそ料理をみつけてみましょう。
また、みそは、大豆を加水して、加熱し煮豆にしたものをつぶして発酵させ、そこに麹菌をいれてねかしています。造り方は意外と簡単ですので、食育の一環としてみそづくりの経験をおこなう小学校もあり、食を学ぶ貴重な体験となっています。
最後に、みそのさまざまな栄養成分を紹介します。
【みそに含まれるおもな栄養成分】
タンパク質・・・生命維持に不可欠な栄養素。コレステロールをコントロール
サポニン・・・血中コレステロールの低下、有害物質を体外に排出する働き
トリプシインヒビター・・・抗がん作用・糖尿病の予防
イソフラボン・・・乳がん予防
レシチン・・・細胞の細胞膜を構成、脳を活性化し動脈硬化の予防
コリン・・・脂肪肝や老化防止
褐色色素・・・老化防止
食物繊維・・・コレステロールの低下、大腸がんの予防
カルシウム・・・丈夫な骨作り、神経の安定
ビタミンE・・・老化防止
ビタミンB2・・・体内の酸化還元を促進、脂質の代謝をサポート
ビタミンB12・・・造血作用、神経疲労防止
酵素・・・消化をサポート
プロスタグランディンE・・・高血圧の防止
まとめ
生きていくための食材として、みそは、地域によってさまざまな調理法で好まれ、その地方独特の味わい方があります。
日本の基本的な伝統食であるごはんにみそ汁という組み合わせは、栄養豊富な料理でもあります。季節の旬の野菜と組み合わせると、なお身体に良い料理となり、子どもや高齢をはじめとしてわたしたちの身体にとって大切な有効成分を多く含んでいます。
洋食化が進み、日本国内のみそ消費量は、減少傾向ですが、2015年現在も世界へ向けた出荷量は増加し続けています。
今、わたしたちは基本的な和食を見直し、これからも食に取り入れていくことで、子どもたちにそのおいしさを伝え、伝統食を守っていきましょう。家庭でみそを積極的に取り入れ、みその恩恵をこれからもありがたく受けとめて、ユネスコ無形文化遺産としても登録された、和食の文化を継承していきましょう。