唾液腺が腫れておたふくの顔のようにみえることから、「おたふくかぜ」とも呼ばれることがある「流行性耳下腺炎」。「ムンプス」と呼ばれることもあります。流行性耳下腺炎の症状は具体的にはどのようなものなのか、また、流行性耳下腺炎の症状が見られたらどのように対処することができるのか解説いたします。
流行性耳下腺炎の症状
流行性耳下腺炎は、ムンプスウイルスと呼ばれるウイルスに感染することで起こります。2~3週間程度の潜伏期間を経て、次のような症状が見られるようになります。
唾液腺の腫れ
流行性耳下腺炎の初期の症状として、唾液腺の腫れがあります。耳の後ろの唾液腺が大きく膨張するので、おたふくのように顔の輪郭が変わってしまうことになるのです。片方の唾液腺だけが腫れることもありますが、両方の唾液腺が腫れたり、両方の唾液腺が腫れてはいるものの腫れの大きさが左右で異なったりすることもあります。
唾液腺の中でも耳の後ろ部分にある耳下腺だけが腫れて症状が改善することもありますが、顎下腺や舌下腺(いずれも唾液腺に分類される)が腫れて、顎下や舌の裏側が痛くなることもあります。尚、いずれの唾液腺が腫れたとしても、通常は2日以内に症状がピークを迎え、1~2週間で唾液腺の腫れは見られなくなります。
発熱
唾液腺の腫れと同時期に、38度前後の熱が出ることもあります。発熱自体は3日前後で治まりますので、唾液腺の腫れよりも早く見られなくなります。
3人に1人は症状が出ない
ムンプスウイルスに感染したとしても、30~35%は症状が出ません。そのため、流行性耳下腺炎にかかったことに気付かないまま、おたふくかぜの免疫を獲得することもあるのです。
難聴になることもある!
流行性耳下腺炎の合併症の中に、難聴があります。片方の耳だけが難聴になることもありますが、稀に両方の耳が難聴になってしまうこともあります。子供の場合は難聴になったことに長い間気付かないこともありますので、子供がすぐに返事をしなかったり、テレビやオーディオの音量を上げたりするようになったら、すぐに病院に連れて行って検査を受けるようにしてください。
大人の場合も、難聴になると深刻な症状が出てきます。一生、聞こえが悪いままになってしまったり、めまいや吐き気などの症状が頻発したり、耳鳴りが長時間続くこともあったりします。また、ムンプスウイルスに感染して耳下腺の腫れ等の症状が出ない場合でも難聴になることもありますので、聞こえに問題があると感じたときはすぐに病院で検査を受けるようにしましょう。
無菌性髄膜炎
発熱と嘔吐、頭痛の3つの症状が見られると、流行性耳下腺炎の合併症として無菌性髄膜炎にかかった可能性が疑われます。無菌性髄膜炎にかかると、38度以上の高熱が4~5日間続いたり、頭痛(特におでこの部分や目の奥に強い痛みを感じることがある)、腹痛、下痢などの症状が見られたりすることもあります。しかしながら、ほとんどの場合はそのまま自然に快癒しますので、無菌性髄膜炎になったからといって特に心配する必要はありません。なお、無菌性髄膜炎は、流行性耳下腺炎に感染した人の約1割に見られます。
流行性耳下腺炎の症状が見られたときの対処法
流行性耳下腺炎を効果的に治療する医薬品はありません。症状が治まるまで待つか、高熱が続く場合は解熱剤などの対症療法を実施するかしかありません。流行性耳下腺炎と思われる症状が見られたら、安静にし、学校や幼稚園などの人が多い場所には出かけないようにしましょう。
おたふくかぜの予防接種を受けよう!
治療方法がない流行性耳下腺炎。感染しないまま成人になってしまうと、万が一、流行性耳下腺炎にかかったときは、子供が感染するときと比べて重篤な症状が出てしまうことが多いですので注意が必要です。
流行性耳下腺炎の予防には、流行性耳下腺炎の予防接種が有効です。ただし、流行性耳下腺炎の予防接種は無料接種の対象ではありませんので、希望する人は自費で受けるようにしましょう。なお、1歳を過ぎたら誰でも受けられます。数年間の間隔を空けて2回接種することが理想的とされていますので、計画的に受けるようにして下さい。
脱水症状にならないようにこまめな水分補給を!
発熱しない場合でも、耳下腺が熱を持つことで身体の水分が大きく奪われてしまいます。こまめに水分補給をし、脱水症状にならないように注意しましょう。
幼児は特に注意が必要!
流行性耳下腺炎の感染者は、約半数が4歳前後です。保育園や幼稚園で集団生活をすると罹患リスクも高まりますので、予防接種を受けるなどの対策が必要になります。感染しているかなと思われるときは早めに病院で検査を受け、医師の許可が下りるまでは自宅で安静にしているようにしましょう。