文:Safbabyヘルスエキスパート:Dr. レイモンド・シルクマン 編集者:aesmai
呼吸は生活そのものです。ごく自然な生活の一部であるため、大半の人々は呼吸について考えることですらしません。
例えば、あなたは自分のお子さんが鼻呼吸か、それとも、口呼吸なのかご存知ですか? 多くのご両親がその答えを知りませんし、口呼吸が子供の人生に及ぼす多くの影響について理解していません。
もしお子さんが口呼吸をしているのなら、免疫系や姿勢、注意力、精神状態に影響を与える場合があり、顔の構造を変える可能性さえあります。口呼吸は、子供の全身の発育状態や、一生涯の健康状態を変える恐れがあるのです。
バイオロジカル・デンティストで、Safbaby のエキスパートである Dr. レイモンド・シルクマンは、長年にわたって患者を支援し、歯列矯正的手法を解明しながら、口呼吸の子供達に起きている問題の全体像を明らかにしています。彼がそれらの経験から得た専門的知識を共有したいと思います。
正常な呼吸
口呼吸と鼻呼吸では、身体に全く異なる影響を与えます。人間の体は、口から呼吸するように作られていません。口は、音を生み出し (コミュニケーションを取り)、食物を摂取する為のものです。それ以外は、口はリラックスした状態で閉じていなければなりません。
子供が正常に息をしている時、呼吸は静かで、一定のリズムを保ちながら、無意識に行われます。最適な呼吸の順序は以下の通りです; まず、口を閉じた状態で、鼻から空気を吸い込みます。横隔膜が空気を肺の深くまで引き入れて、肺を空気で満たします。次に、体に酸素が送り込まれ、空気を押し出します。十分な酸素が体に供給されると、神経系は副交感神経が優位の状態になります。これは、多くの身体機能の維持に必要な、リラックスした状態です。
正常な呼吸は、子供の顔の特徴や歯が発育する時にみられる、健全な顔面の発育の土台となります。
顔の構造と口呼吸
口呼吸は、不快な症状から人生を変えるような症状まで、広範囲に影響をもたらします。些細な症状には、唇、口、歯の慢性的な乾燥が含まれます (これは虫歯になる可能性を高めます)。しかし多くの場合、口呼吸は歯並びの歪みや、アゴや顔の発育不全に繋がるのです。
呼吸のために口が開いていると、頬の筋肉が張った状態になります。緊張した頬の筋肉は、上アゴと下アゴに外圧を加えて、歯列弓(歯列の曲線)と顔の幅を狭めます。更に、通常は口内の上顎に位置している舌が、口の底部に下がります。これは (側圧の不足が原因で) 上部の歯列弓の幅を狭める可能性があり、顔の中央部は舌からの力が加わらないため、正常に発達しません。
結果として、子供の輪郭が狭まるか、顔の中央部に発育不全を生じる可能性があり、この症状は遺伝や他の要因にも左右されます。
米国矯正歯科学会誌 (American Journal of Orthodontics & Dentofacial Orthopedics) に掲載された、イグル・ハーボルド歯科医師の2つの研究は、この現象を非常に明確に示しています。両研究において、研究者達は幼いサルの鼻をふさぎ、口呼吸を人工的に誘発しました。その結果、口呼吸を行ったすべてのサルに、歯並びの歪みや、アゴと顔面の発育不全(英語のみ)が発生したのです。具体的には、口呼吸は「アゴ先の位置の低下、急な下顎下縁平面角、下顎角の拡大」(英語のみ)を招きました。つまり、顔は細長く変形し、アゴは目立たなくなり、アゴ先と下アゴの位置が後退したのです。
酸素不足の影響
一般的に、口呼吸は通常とは異なり、横隔膜ではなく、胸の上部で呼吸を始めます。この際、体は大量のエネルギーを使って、肋骨を引き離すことで空気を吸引するため、呼吸は大変な作業になります。また、空気は肺の上部のみを満たし、体が必要とする十分な量の酸素が取り込まれません。結果として、胸呼吸を行う人には、より多くの呼吸が必要になるか、あくびを繰り返す癖が生じるかもしれません。これは、大量の空気を取り入れて酸素不足を補おうとする、体の手段です。
多くの場合、この種の呼吸は不規則的で雑音を伴い、交感神経系が優位な状態になります。この「攻撃・逃避反応」の状態では、リラックスした神経系を必要とする、以下の様な生化学的機能や臓器の働きの多くが回復されません; 消化、栄養の分配、睡眠とホルモンのパターン、成長、治癒、環境的なストレスや有害物質の曝露からの回復、知力、気分の調整等。
口呼吸は子供の知性の発育にも大きな影響を与えます。口から呼吸をする子供は十分な酸素を体に取り込まないため、度々睡眠時の休息が不十分になります。そのため、朝の起床時に疲労感を覚えることが多く、集中力や注意力の維持が困難になる可能性があります。
身体構造の変化
異常な呼吸パターンによって生じた発育不全を補うために、姿勢は頭が前に突き出した状態 (頭部前方位姿勢) に変化します。この状態は更に、首、肩、頸部の筋肉に過度の長期的ストレスをかけ、結果として、慢性的な首のこりや、頭と肩の痛みが発生します。同様に、頭の重心のずれを補うために、腰は弓状に曲がり、腰痛や、腰の衰弱を招きます。更に、この身体の調整に伴う不調は、臀部、ひざ、足首、足、加えて(各部位の正常な配置を必要とする) 臓器にまで徐々に広がります。
まとめ
口呼吸は、誰も話題にしないテーマです。子供が鼻詰りを抱えている場合は、特に普通の現象として受け入れられています。しかし、口呼吸は、顔面の発育、身体の配置と機能、知力等、あらゆるものに影響を与えます。次回の記事で、子供の呼吸が口呼吸かどうかの確認方法や、早期対策の重要性について、Dr. シルクマンが語った詳細を示します。