倫理的と訳されることが多い“エシカル”。近年、エシカルなものや概念への注目が高まっています。“エシカルな生産”とは何かを考えることから、企業が求められるものやサービスの方向性を探っていきましょう。
エシカルな生産とは?
エシカルな消費を実践する消費者は少なくありません。フェアトレードの商品や有機栽培の野菜や果物、リサイクルやリユース可能な製品を意識的に購入し、劣悪な労働環境で働く労働者の根絶や地球環境の保持と改善、環境破壊への抵抗を支持します。
倫理的な商品への動きは、消費者においてのみ見られるわけではありません。生産者側にも、エシカルな意識が高まっています。労働者が正当な賃金を得、心身ともに健康を保てる環境で働いている工場や農場で生産したものを仕入れ、廃棄物や有毒ガスが出にくい商品を生み出す動きが見られています。倫理的な商品を扱うことや生産することを、“エシカルな生産”と呼び、今後の企業の在り方として注目されるようになってきました。
エシカルな企業とは?
エシカルな企業とは、エシカルな消費を生み出す企業のことです。具体的には次のような共通点があります。
労働条件において透明性がある商品を扱う
価格の安さは、商品を選ぶ上で魅力的な要素の1つです。しかし、その安さは、労働者の不当に低い賃金や劣悪な労働環境が犠牲になって生み出されているものならどうでしょうか。消費者が安い商品を購入することで、労働者を搾取することによって安い商品を製造する企業を支持することにもなるのです。
エシカルな企業は、労働者が搾取されている工場や農場とは契約しません。労働条件や労働環境に透明性があり、労働者が正当な賃金や環境で働いて生み出した製品や作物を取り扱います。
環境保全につながる商品を扱う
商品を生み出すことで、二酸化炭素や有毒ガスが発生することもあります。二酸化炭素の過剰な排出は地球温暖化につながりますし、有毒ガスの発生も大気汚染や地球温暖化とは切っても切れない関係にあります。エシカルな企業は、環境保護につながる商品を扱いますので、生産過程において二酸化炭素や有毒ガスを生み出す商品は極力避けます。
また、生産過程で、産業廃棄物や汚染水が発生する商品もエシカルな商品とは言えません。エシカルな意識を持つ企業ならば、環境の悪化につながる商品は製造せず、自然環境や生態系を維持・改善できる商品を作り出します。
消費と生産のサイクルを意識する
生産には消費が伴います。消費される不足分を生産し、過剰に生産しすぎないことで、使われないまま廃棄される製品・作物を減らすことができます。エシカルな企業は、人々のニーズに合わせて生産量を調整します。過剰な生産を控えることで、廃棄物を極力減少させるのです。
また、製品自体の寿命が尽き、廃棄しなくてはいけなくなった後についても考慮します。自然に還すことができる素材や廃棄するときに二酸化炭素や有毒ガスを発生しない製品、また、自社でリサイクルシステムを構築し、不用品や廃棄物を回収するのも良いでしょう。いずれにしても、「売れるからたくさん生産する」といった一方的な考え方ではなく、「消費できる分だけ、環境を破壊せずに廃棄できる分だけを生産する」という消費と生産の双方向の考え方が必要とされているのです。
エシカルな生産を実践するメリット
企業がエシカルな生産を実施することは、倫理的に優れた行動をすることだけを意味しているのではありません。企業にとっては、倫理とそれ以上の意味合いもあるのです。
エシカルな選択が企業の魅力の1つになる
労働者の生活や環境保護を意識したエシカルな商品を支持する消費者は増えています。また、エシカルな商品を支持することで、間接的にエシカルな商品を扱う企業を支持する人も増えています。つまり、エシカルな視点を表に出すことで、消費者の支持、ひいては、企業イメージや商品に対するニーズ、購買数の上昇が期待できるのです。
類似企業との差別化を図る
インターネットや輸送手段の発達により、世界中のものを世界中で購入できる時代になりました。消費者側にとっては便利な世の中と言えますが、生産者側にとっては近隣の企業だけでなく世界中の企業と比較されてしまうため、ライバル企業が増加したことを意味します。
ライバル企業が増えた今、エシカルな商品を扱うことが、他の類似企業との差別化にもつながります。フェアトレードの商品や動物実験をせずに作られた製品、リサイクル・リユースのシステムが構築された商品を扱うことで、商品自体に大きな違いはなくても消費者の支持を集めることができるのです。
エシカルな消費と生産が世界を大きく変える
少しでも安いものを追い求める時代は、徐々に過去のものとなりつつあります。エシカルな理念で作られた商品をエシカルな理念を持った企業が取り扱い、エシカルな意識を持つ消費者が購入するサイクルが生まれてきています。商品を選ぶ時、ぜひ、商品の背景にあるものや消費後に予想される事柄にも思いを巡らせてみてください。
参考サイト:
一般社団法人エシカル協会 消費行動の変化