近頃しばしば耳にする「フェアトレード」。一体どのような意味なのでしょうか。フェアトレードの意味とフェアトレードに今注目すべき理由について解説いたします。
フェアトレードとは?
フェアトレードとは、「公正な(fair)取引(trade)」のことです。商品や原材料を海外から購入するときに、公正な値段で買いつけることがフェアトレードの基本です。
公正な値段で購入していないことが多い
国が違えば物価は変わります。日本での100円が、海外では100円以上の価値を持つことや反対に100円以下の価値しか持たないこともあります。しかし、どの国や地域でも、生活を維持していくのに必要なお金の基準があることは同じです。物価が高い国ならその物価に応じた賃金を得られないと生活維持が困難になりますし、物価が安い国でもその安い物価に応じた賃金を得られないと生活は厳しくなってしまいます。
しかし、例えばバナナやコーヒー豆などの開発途上国で栽培されていることが多い農産物の場合、バナナ農園やコーヒー農園の従業員たちは、朝から晩まで働いたとしても生活に必要な賃金を得られないこともあるのです。これは、農園を管理しているオーナーが従業員たちの賃金を搾取している可能性もありますし、農園からバナナやコーヒーを買いつけている業者が賃金を搾取している可能性、また、輸入業者が不当に低い値段で買い取るために従業員に充分な賃金を支払えない可能性も考えられるのです。
充分な賃金が支払われないとどうなる?
商品や農産物の栽培に関わるすべての人たちに充分な賃金が支払われていないと、次のような問題が起こることがあります。
収穫が不安定になる
朝から晩まで働いても、生活を維持できないほどの低額しか得られないのなら、従業員はどのような行動に出るでしょうか。農園で働くのを辞めて、他の職場に移ることも充分に考えられます。また、従業員同士が連携し、ストライキを起こすことも想定されます。いずれにしても農園の作業がストップしてしまいますし、収穫が不安定になってしまうのです。
品質が落ちる
どんなに頑張っても報酬が増えないのなら、そのうち、従業員は「頑張らずに最低限だけの仕事さえしていれば良い」と考えるようになるでしょう。その結果として、商品の品質が落ちていくことも容易に予想されます。
環境を汚染する
人件費を最低限に抑え、作業効率だけを重視する農園主なら、環境を汚染しかねない農薬や殺虫剤をふんだんに利用して作物を育てる可能性があります。農薬や殺虫剤を使うことで一時的に費用対効果が向上することもありますが、長期的に見ると土壌汚染や水質汚染に繋がりますので、金銭以上のものを失うことになります。
児童労働、児童の就学の機会を奪う
人件費を抑えるために、児童や学齢期にある子どもを雇用する農園もあります。児童労働によって、子どもから就学の機会を奪ってしまう可能性が充分に考えられるでしょう。また、無理な体勢を長時間取らせたり、働かせるために子どもの恐怖心をあおったりするならば、成長期の子どもが心身共に正常に成長できなくなってしまうこともあるのです。
フェアトレードに賛同することで環境と暮らしを守る
不当に低い賃金で労働者を働かせることや環境を汚染する農薬等を使用すること、そして、児童労働。いずれも一刻でも早く解消すべき問題です。とはいえ、離れた国に住む人が直接農園に行って、これらの問題ある行動を止めさせることは現実的とは言えません。
そこで登場するのが「フェアトレード」の概念です。フェアトレードの商品、つまり、従業員の賃金を搾取しないで生産された商品を積極的購入することで、フェアトレード以外の商品、つまり、従業員の賃金を搾取し、環境汚染や児童労働などの問題を引き起こしている商品や農園を減らしていくことができるのです。
国際的なフェアトレードの基準
国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International)では、フェアトレードの基準として「社会的基準」と「経済的基準」、そして「環境的基準」の3つを挙げています。それぞれの基準に含まれる要素を以下に列挙します。
<社会的基準>
- 安全な労働環境
- 民主的な運営
- 差別や児童労働の禁止
<経済的基準>
- 最低価格の保障
- 長期的かつ安定した取引の保障
- 必要に応じて前払いをすること
<環境的基準>
- 農薬などの環境に有害な化学生成物の使用を制限すること
- 有機栽培の促進
- 土壌や水質などの環境保全
- 遺伝子組み換え品の不使用
フェアトレードで貧困や病気を減らす
フェアトレード製品を購入すると言うことは、充分に賃金を得られる仕組みを支援するということでもありますので、貧困に悩む人々を少しでも減らすことができるでしょう。また、過剰な農薬使用を制限することも意味しますので、健康被害に遭う人も減らすことができるのです。フェアトレード製品を購入することで、離れた国に住む人たちのための社会貢献をしてみてはいかがでしょうか。
参考サイト:
フェアトレードとは?
国際フェアトレード基準