豆腐や納豆などのパッケージに「遺伝子組換え大豆は使用しておりません」といった文面を見ることがあります。遺伝子組換えの作物は一体どのような危険性があるのでしょうか。また、豆腐や納豆以外に、どのような食べ物に遺伝子組換え技術が使用されているのでしょうか。
遺伝子組換え作物とは
遺伝子を組み替えることで特定の性質を引き出した作物を、「遺伝子組換え作物」と呼びます。例えば、乾燥に強くなる遺伝子を特定の作物に組み込むことで、乾燥に強い作物を作ることができるようになります。
遺伝子組換えと品種改良の違い
遺伝子組換え技術が発達する前から、異なる性質を持つ品種を掛け合わせることで特定の性質を持った新しい品種を開発する「品種改良」が実施されて来ました。例えば、甘さの強いミカンと果実が大きいミカンの品種を掛け合わせることで、甘くて果実が大きいミカンの品種を作ることが理論上は可能です。
ですが、品種改良は決して容易なことではありません。「甘さ」と「大きさ」という良い特徴だけが新品種に受け継がれれば良いのですが、甘さの強いミカンが持つ「小さい」という欠点と果実が大きいミカンが持つ「酸っぱい」という欠点だけが受け継がれる可能性もありますので、目指す理想の新品種を作り出すまでに何年、何十年もの年月と莫大な開発費が必要になることもあるのです。
一方、遺伝子組換えは、最初から良いと思われる特質をもつ遺伝子を取り出して、その遺伝子だけを既存の品種に組み込みますので、品種改良よりも短期間かつ低予算で理想的な新品種を作ることができるのです。
遺伝子組換え作物は何が問題か?
遺伝子組換えによって短期間かつ低予算で理想的な新品種を作れるのなら、遺伝子組換えの技術は非常に優れた技術だと言うことができます。ですが、手放しで遺伝子組換えの技術を称賛することはできません。遺伝子組換え技術には、次のようなデメリットがあるのです。
安全性における疑問
遺伝子を操作することで、その作物における安全性が疑問視されます。日本で販売されている遺伝子組換え作物はすべて厚生労働省によって安全性が確認されたものですが、遺伝子組換え作物は次々と新しく開発されますので、日本以外の国で日本の基準では安全性が確認されていない遺伝子組換え作物を食べてしまう可能性があります。
また、遺伝子組換え作物が、常に作物として輸入されるとは限りません。食物油や化粧品、医薬品などの形に変えて輸入されることもありますので、「日本で購入できるすべての遺伝子組換え作物は安全性が確認されている」とは断言することはできないのです。
長期的に摂取しても安全性は保証されるのか?
日本で流通されている遺伝子組換え作物は、すべて安全性が確認された作物です。しかしながら、あくまでも短期的に得られた結果に基づいて安全性が確認されているだけですので、10年、20年と言った長期にわたって摂取したときの安全性については調べることが不可能です。つまり、現時点では問題なくても、10年後、また、自分の次の世代に何らかの影響が出ないとは言い切れないのが遺伝子組換え作物なのです。
過剰に農薬を使っている可能性があること
さまざまな遺伝的要素を組み込んだ遺伝子組換え作物がありますが、その中でも菜種や大豆、とうもろこしのように大量に輸入している作物には「特定の枯葉剤に強い」という特徴が組み込まれています。
強力な農薬である枯葉剤に強い耐性があること自体は良いことなのですが、そのような遺伝的特質を組み込まなくてはならないほど大量の枯葉剤を使用しているということでもありますので、遺伝子を組み替えた事実よりも過剰に農薬を使っている可能性と農薬による危険性が案じられます。
遺伝子組換え作物の種類
厚生労働省で安全性が確認され、日本国内で流通している遺伝子組換え作物には、次のものがあります。
遺伝子組換え作物は8種類
安全性が確認されている遺伝子組換え作物は、次の8種類です。ただし、それぞれの作物に複数の品種の安全性が確認されていますので、品種数は169(2012年3月時点)となります。いずれも、オレイン酸などの健康に良い特定の成分を含んでいたり、特定の枯葉剤に対して耐性があったり等の特性があります。
- 大豆
- とうもろこし
- 菜種
- じゃがいも
- コットン
- てんさい
- アルファルファ
- パパイヤ
遺伝子組換え添加物は7種類
食品添加物の中にも、遺伝子組換え技術を使って作られたものが多くあります。厚生労働省によって安全性が確認されている遺伝子組換え食品添加物は次の7種類です。
- α-アミラーゼ
- リパーゼ
- リボフラビン
- プルラナーゼ
- キモシン
- グルコアミラーゼ
- α-グルコシルトランスフェラーゼ
食品表示をしっかりとチェックしよう
安全性が確認されているとはいえ、購入するかどうかは消費者個人にゆだねられています。遺伝子組換え作物を使った食品にはかならず「遺伝子組換え」であることが表示されていますので、しっかりとチェックするようにしましょう。
参考サイト:
遺伝子組換え食品の安全性
遺伝子組換え食品Q&A