文:Safbabyの環境エキスパート マリー・コロダロ
もうすぐ赤ちゃんを家にむかえる方なら誰もが、最高の環境でむかえてあげたいと思うことでしょう。赤ちゃんのために用意した部屋をかわいらしく飾ったり、新しいベッドや家具を揃えたり、なかには赤ちゃんのための部屋を増改築する予定の方もいらっしゃるかもしれません。両親にとっては、とてもワクワクする準備期間ですが、赤ちゃんにとってはどうなのでしょうか。
今回は、有害物質に対してデリケートな赤ちゃんが快適に過ごせる家とはどんな家なのか、考えてみましょう。
赤ちゃんにとって新しい部屋は有害?
EWGが行った研究により、母親が摂取・吸収・吸引するものが直接的に胎児に影響することが明らかになりました。
その際、287種近くの化学物質が発見されましたが、その大半が発ガン性物質で、神経系や発育上の機能に悪影響を与えるものでした。これらのごく少量の化学物質に慢性的にさらされることで生じる影響は、最近ようやく明らかになったことです。
これは妊娠中の母親や新生児が新しく手を加えた部屋に住んでいたり、新しい家具が設置された家に住んでいたりすることによる影響が大きいのです。
有害物質は家の中に存在する
子供の環境医学の著名な専門家で、毒素が発育中の脳に与える影響を世間に広めようとするプロジェクト「Little Things Matter」の共同作成者でもある、ブルース・ランフィア博士は、このように述べています。
「鉛や水銀等の有毒金属やポリ塩化ビフェニル(PCB)等の難分解性毒素、有機リン酸(OP)系農薬や、難燃剤として使用される物質等の他の毒物が極めて少量であっても、それにさらされ続けることで、学習障害や低いIQ値の原因になりうることを示す決定的な証拠が存在する」
また博士は、「30年間の研究によって、これらの微量な物質が重大な意味を持つという避けがたい結論に至った」と結論づけています。
現実的な問題として、これらの化学物質はすでに家の中に存在しています。ですから、改築用の材料や新たな家具を家の中に入れることで、さらに多くの毒素を家の中に持ち込むことになるのです。そうした毒素の中には消えてなくなることのない無臭の化学物質も含まれます。
赤ちゃんのための自宅の改造は時期を考えて!
もし自宅の改造を、もうすぐ赤ちゃんをむかえる「今」行おうとしているなら、ただちに改造を中止してください!そうです、実施しないで欲しいのです。これは、あなたが妊娠中か間もなく妊娠予定、または小さな子供がいる場合には特に重要な提案です。
胎児や新生児、幼い子供は、大人の許容レベルよりはるかに少ない量の有毒化学物質や、他の汚染物質からでも、極度に影響を受けやすいのです。
また、環境に配慮しているとよそおっている可能性のある建築素材から、本物の安全な素材を見定めることは、一般の人には非常に困難です。製品が本当に環境に優しく、大人にとって健康的であったとしても、それが新品の製品であれば、新生児の繊細な身体に大きな負担となる可能性があるのです。
すでにある毒素を取り除くことを優先しましょう
しかし、私が赤ちゃんのために自宅を改造することを考え直すべきと、みなさんにこれほど強く訴えるのには、他にも理由があります。
自宅にすでにある毒素を取り除くことこそ最優先にするべき、というのがそのもう一つの理由です。ほぼ間違いなく、あなたの自宅には赤ちゃんにとって有害な毒物がすでに存在しています。本格的に毒素を取り除く必要があるのです。
自宅に毒物を感じさせる匂いがなく、あなたの体調も良好で、化学物質に対して敏感でない場合でも、自宅を検査してクリーンアップをする必要があるのです。
ですから、部屋の増改築や、子供部屋づくりの代わりに「自宅を真に安全な憩いの場にすること」に資金を費やすことをお勧めします。
赤ちゃんの人生で非常にデリケートなこの時期に、改造につきもののリスクを冒すよりも、しばらく実行を延期して、代わりに自宅にあるものの浄化にエネルギーを注いでください。
真新しく、おそらくは有毒な素材で満ちた可愛らしい子供部屋は、子供の一生の健康状態を危険にさらしてまで手に入れるほどのものではありません。赤ちゃんへの最高の子供部屋は健康的な自宅です。
まずは自宅に既に存在している汚染物質を除去して、子供が正常に発育できる最高の環境を整えましょう。
対処すべき有害な環境要因とその対処方法
対処すべき有害な環境要因は、(屋内に侵入する可能性のある)屋外の汚染、鉛、建築素材に使われているの化学物質、長期間同じ場所に設置されている屋内の備え付け品、清掃用製品、個人用製品、カビ、電磁場、にあります。
下記のポイントを参考にして、有害物質の除去に役立ててください。
有毒な物質を含む製品をすべて無害のものに換える
クリーニング用品を無害な製品で手作りしてみましょう
化学物質を含まない、毒性が最小限の洗濯用・清掃用製品の情報についてはewg.org (英文のみ)をご参照ください。重曹や蒸留ホワイトビネガー等の無害の材料を使用して、あなたオリジナルの安価なクリーニング用品を手作りしてください。インターネット上には家庭で簡単に作れるクリーニングレシピが数多く掲載されています。
可塑剤を使用していないシャワーカーテンを使いましょう
可塑剤と呼ばれるエストロゲン類似物質の吸収を抑えるために、ビニール製のシャワーカーテンや裏地を使用せず、防カビ性のある麻や、フタル酸塩および化学物質を含まないナイロン、ポリエチレン、ポリエステル等の可塑剤なしものに替えましょう。また、シャワーカーテンが抗菌性の化学物質で処理されていないことを確認してください。(注意:可塑剤を100%含まない製品だということを確認して使用しましょう。)
赤ちゃんが口にするものを入れる容器は安全なものを選びましょう
飲食用や保存用の食べ物や飲み物を入れる容器はガラス製のものに替え、赤ちゃん用のスプーンはステンレス鋼かセラミックのものを使用しましょう。また、プラステック製のボトルは、保護用のシリコンスリーブの付いたガラス製ボトルに替えましょう。
合成香料や抗菌化学物質は、天然の物質やアロマオイルで代用しましょう
合成香料や抗菌化学物質を含んだキャンドル・プラグイン・スプレー・ハンド用除菌剤等の全製品は「健康的なもの」と取り替えてください。
健康的なものには、蜜蝋製または遺伝子組み換えでない大豆製のキャンドル、オーガニックのピュア・エッセンシャルオイル製品が含まれます。
また、有害な抗菌化学物質を含むハンドウォッシュやボディウィッシュを使用しないようにしましょう。こうしたものは、肌に自然に発生して病原菌を駆除する「良性バクテリア」まで死滅させます。純粋な石鹸と水で手を洗ってください。
害のある殺虫剤をやめて、化学物質を含まない害虫駆除製品を使用しましょう
屋内および屋外での殺虫剤の使用をやめ、化学物質を含まない害虫駆除製品だけを使用してください。無害の害虫駆除製品に関する詳しい情報は I.R.C. (Bio-Integral Resource Center), PAN North America (Pesticide Action Network) , Beyond Pesticides(英文のみ)をご参照ください。
取り替えるだけでなく、取り除く!
有害な製品を家から出しましょう
有害な製品の全てを家の外に出してください。有害な清掃用品、個人用品、メンテナンス用品、害虫駆除剤、その他家庭用製品を「使用していないから」という理由だけでパッケージに入れたまま家の中に放置しないでください。パッケージに入っていても置いてある食器棚や戸棚から微量の毒素が出ており、家を汚染し続けているのです。
有害な製品を処分するときには各地域の規定の処理方法に従いましょう
また、有害な従来のパーソナルケア製品や清掃用製品の多くは非常に強烈な毒素を含んでおり、ゴミ箱や流しに捨てることができません。ですから、これらの製品や、毒性のある家庭用メンテナンス製品、害虫駆除剤を処分する際には、地域の有害物処理施設に持って行ってください。
とっておく必要のある有害な製品は、居住スペースから離れた場所に保管しましょう
タッチアップペイントなど、取っておく必要がある製品は、ガレージに保管してください。ただし、ガレージが居住スペースや洗濯部屋、遊び場として使用されていない場合に限ります。これが無理であれば、そうしたものを離れの小屋に保管してください。
ホコリをコントロールして無臭の有害化学物質や微粒子を減らす
決してなくならない準揮発性有機化合物(SVOC)
家の空気には、現代の建築素材や屋内の備え付け品、そして消費者製品から発生する有機リン酸系難燃剤、殺虫剤、フタル酸塩と呼ばれるエストロゲン類似物質など、毒性が高く無臭の様々な化学物質が含まれます。
準揮発性有機化合物(SVOC)と呼ばれるこれらの化学物質は決してなくなることがなく、空気によって運ばれるホコリに付着し、あなたや子供たちが吸引し、摂取してしまうことになります。小さな子供やペットは、ホコリが積もり、SVOCの濃度がさらに高い床の近くで生活していることを忘れないでください。
ホコリのたまりやすい場所を頻繁に掃除しましょう
HEPAフィルター内臓の掃除機で床と布張りの家具を頻繁に掃除してください。しかし、全てのHEPA掃除機が優れたものとは限りません。自分でリサーチをして、購入するHEAP掃除機がホコリを逃さない完全な真空構造または密閉構造になっていることを確かめてください。全機種ではありませんが、Miele・Nilfisk ・Electrolux社のキャ二スター型の中には真空構造を持つものがあります。
カビや湿気の発生源をチェックする
カビは有毒です。妊娠中や授乳中は自分で除去しないこと!
カビに対してアレルギー反応があるかどうかに関係なく、カビは有毒です。発育中の胎児や新生児は特に影響を受けやすい存在です。
湿気やカビの防止に関する初歩的情報はEPAのページ(英文のみ)をご参照ください。
カビの存在を疑う場合や、その匂いを感じた場合、カビの調査を受けてください。たとえ表面的なものでも、自分でその除去を試みないでください。あなたが妊娠している、あるいは授乳中である場合は特に避けましょう。
なお、カビを取り除くために専門の企業を雇う場合は、除去のために化学物質を一切使用しないように強く要求してください。
EMR(電磁放射線)の発生源をチェックする
「エレクトロ汚染」から、あなたと子供たち守りましょう
有害なEMR(電磁放射線)は、あなたの周囲のいたるところに存在します。目には見えないものですが、これは「エレクトロ汚染」と呼ばれ、汚染状態が測定可能な実際に存在する汚染源なのです。多くの臨床検査や汚染研究がワイヤレスおよび有線機器から生じるEMRを、ガンなどの深刻な健康問題と関連付けています。
ある最近の研究は携帯電話の電磁波にさらされた妊娠中のマウスの子孫に行動上の問題が発生することを発見しました。妊娠中の女性や子供は高レベルのEMRと接しないようにすることが極めて重要です。マリー・コルダロのサイト内の「Reducing Electromagnetic Radiation from Wireless Sources(ワイヤレス機器からの電磁波を減少させる)」 (英文のみ)副題 Cell Phones, Cell Antennas, Baby Monitors, Cordless Phones, Wi-Fi and Tablets(携帯電話・基地局・ベビーモニター・コードレスフォン・Wi-Fi・タブレット)にEMRにさらされる機会を減らす方法を掲載しています。
重要なアドバイスとしては以下の通りです。
・携帯電話の使用を緊急時のみに制限し、身体に触れる形で携帯電話を持ちはこばないようにしましょう。
・自宅にいる際は、携帯電話にかかってきた電話をコード付きの固定電話に転送し、携帯やタブレットを機内モードにするか、電源を切りましょう。固定電話がない場合は、携帯電話をあなたや子供たちから最低15フィート(約4.6メートル)遠ざけましょう。有害なEMFはスタンバイモードのスマートフォンやタブレットから15フィートの位置にまで広がっています!
・コードレスの固定電話をコード付きのものに変えましょう。
・Wi-Fiを切り、替りにイーサネットケーブルをノートパソコンやデスクトップパソコン用に使用しましょう。やむをえず使用する場合でも、少なくとも就寝中はWi-Fiの電源を完全にオフにしましょう。
暖房器具のフィルターの交換
フィルターは定期的に交換しましょう
空気循環型の暖房器具やエアコンのフィルターをチェックし、それらを1年に最低2回、または必要となった時に交換してください。グラスファイバーを使用していない暖房用フィルターを購入するようにしてください。
イエダニをコントロールする
マットレスや寝具を安全なイエダニ用バリアカバーで覆いましょう
イエダニ由来のアレルギー物質は肌や肺を刺激する可能性があります。あなたや子供たちがイエダニに対してアレルギーでなくとも、ダニの糞を減少させることは健康的なベッドルームをつくるための大きなステップとなります。
中綿がダウン・ポリエステル・ポリウレタンフォーム・ダクロン・オーガニックコットン製のマットレスや寝具を、フタル酸塩を使用しておらず、抗菌性化学物質や銀、その他の処理物質で加工されていないイエダニ用バリアカバーで覆ってください(オーガニックコットンの中綿がオーガニックウールの層で包まれている場合は除きます)。
家族の誰かがイエダニアレルギーの場合は特に、週に一回以上のペースでシーツをお湯で洗いましょう。
赤ちゃんを迎える準備をおこなう際にすべきことは山ほどありますが、まずはこうした事に取り組んでください。装飾用のペンキや布を選ぶことほど楽しいものではないかもしれませんが、赤ちゃんの安全や健康を守り、幸福にするために、はるかに役立つ行為です。今回お話しした事柄に着実に取り組み、あなた達の「ネスト」(住みか)を「ベスト」なものにするために、出来ることは全て実行してください。
編集者のコメント
有害な物質を含んだ製品、ホコリやダニ、カビが体に悪影響があることはある程度想像できますが、「エレクトロ汚染」という、日本では聞きなれない言葉も出てきました。私たち大人が普段気にならないことが、デリケートな赤ちゃんや子供にとっては、大きな負担となる場合があるということがよく分かる記事でした。ぜひこの記事を参考に、できることから取り入れて、新しくむかえる赤ちゃんにとって安全で快適な環境を整えてあげてください。