まだまだ実施している医療機関は少ないものの、水中出産を選択する人も増えてきています。水中出産とはどのような出産なのか、また、メリットやデメリットについても見ていきましょう。
水中出産とは
水中出産とは、大人が一人もしくは二人程度入れる小さなプールに入って分娩する方法のことです。実施する医療機関によっても異なりますが、ゴムでできた家庭用の子ども用プール程度の大きさであることが多いです。この小さなプールの中に羊水と同程度の濃度の塩水(体温と同程度の温度)を張り、座って赤ちゃんを出産します。
ただし、体温と同程度のぬるま湯だと言っても、長時間水中で座っているなら産婦さんの体温が奪われてしまいます。1回の入水は1時間程度を限度とし、長引きそうなときは一度外に出て身体を温めてから再度入水します。一般的には陣痛が来てからプールの中に入り、産婦さんにとってもっとも楽な姿勢で出産に臨みます。
水中出産のメリット
水中出産の人気が高まっていると言うことは、お母さんたちをひきつける魅力やメリットが多いということでもあります。
楽な体勢をとることができる
分娩台で出産するときは、お母さんは自由な体勢をとることはできません。ですが、水中なら自由な形で赤ちゃんを産むことができます。また、浮力がありますので、身体が少し軽くなって楽になるというメリットもあります。
お湯に入ってリラックスできる
お風呂に入るときと同様、お湯に身体を沈めることでリラックスすることができます。身体の筋肉も温まって適度にほぐれますので、出産時間が予想よりも短くなることもあります。
出産の痛みが軽減されることもある
筋肉がほぐれますので、痛みも感じにくくなることがあります。思ったよりもスムーズに出産できたという感想を持つ経験者も少なくありません。
赤ちゃんが産道を通りやすくなることもある
水の中での出産ですので、赤ちゃんと産道の摩擦が軽減される可能性もあります。また、産道を通った後も羊水と同じ塩分の水中ですので、赤ちゃんのストレスも少なくなると考えられます。
水中出産のデメリット
水中出産が人気の割にはあまり普及していないということは、何らかのデメリットがあるからと考えられます。水中出産の短所について探っていきましょう。
感染症のリスクがある
プールの中に雑菌があると、水を介して赤ちゃんが感染症に罹患してしまう可能性があります。衛生管理がしっかりとした産院を選ぶようにしましょう。
出産時の出血量が多くなることもある
お母さんの身体がお湯によって温まることで、血行が良くなり、出産時の出血量が増えてしまうこともあります。場合によっては出血がなかなか止まらないこともありますので、お風呂でのぼせてしまいやすい人は注意が必要です。
いきみにくいこともある
浮力で身体が軽くなるのは良いことですが、ふわふわと水中で浮いてしまっていきみにくいと感じる産婦さんも少なくありません。
体力の消耗
出産は非常に体力を消耗する行為ですが、水の中に長時間浸かっていることでさらに体力を消耗してしまいます。出産した後の疲労感も大きくなる可能性があります。
出産施設が少ない
日本では水中出産を実施している機関はそう多くありません。自宅から通える距離に水中出産を実施している産院がない人も多いでしょう。
緊急時の対応が遅れることもある
大規模医院で水中出産を実施しているところはあまりありませんので、水中出産を希望するとなると個人経営の助産院等の小さな施設で出産することが多くなります。出産時に母体や赤ちゃんにトラブルが起こると救急病院等に搬送されることになりますので、院内にICUやNICUがある施設で出産することと比べると対応が遅れてしまうこともあるでしょう。
また、水中にいますので、身体を拭く等、準備に手間取ってしまいます。分娩台で出産するケースと比べると、搬送までの時間が長くかかるかもしれません。
自然分娩と比べると費用が高くなる
自然分娩と比べると、水中出産を実施するための費用が加算されますので、5万円~10万円ほど高くなってしまいます。また、水中出産を実施している産院は多くありませんので、出産間近になったら産院の近隣のホテルで滞在する妊婦さんも少なくありません。予想外に出産が遅れてホテル代が数十万円になってしまうこともあるでしょう。
長所と短所をよく検討してから出産方法を決定しよう
出産は一生の間にそう何度も経験することではありませんので、自分の理想の形を実現させることも大切です。ですが、それ相応のリスクもありますので、長所と短所をしっかりと検討してから出産方法を決定しましょう。また、多胎児や逆子等、水中出産が不可能なケースもあります。医師と相談して、最良の出産方法を選択するようにしてくださいね。